『 やぶくすしハッシーが読む 』 (その4)
~第24回の句会から~
橋 本 喜 夫
牡丹雪唇向けて避けられて 綾
けっこう悲しくておかしい句。上五で切れて読めば牡丹雪のふるなか、時は卒業シーズンであろうか、あこがれの先輩に唇を出してなにかをせがんだかもしれない。そこで避けられる。もちろん牡丹雪はサイズが大きいうえに、ひらひらとどこに落ちるかわからないので唇を突き出して牡丹雪に触れようとしたが、避けられるようにすり抜けていったのである。
かげろふや音叉身の透く音のして 遠藤ゆき子
音叉の振動が体を震わせて、身が透く感覚。すぐれた身体感覚だと思う。これが、かげろうのゆらゆらした身体感覚とアナロジーを感じたのであろう。十分に理解できる感覚だ。やはり「音」のダブりがこの句の瑕瑾であろう。「かげろうや音叉この身を透けゆくも」とかなんとか工夫してダブりは避けて欲しかった。
あめせんの水あめ舐る弥生かな 小笠原かほる
水は雪解け感覚として 弥生が佳いのではと思う。最近コンビニであめせん(塩せんべいに水飴を挟んだもの)が売っているのは私は嬉しくてときどき買っている。採れない人は「弥生」がどうか??と思ったのであろう。ベストではないがベターかと思う。
蟻穴を出でてキッチン爆走す 大友 包
「爆走す」がおおげさでとてもよくできている。キッチンも状況設定がうまい。蟻にとっては九秒台で走っているのであろうが、キッチンの端までたどり着くまでにつかまってしまうだろうな。私だったら 蟻が出たら殺します。
(最終回に続く)
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