2015年1月29日木曜日

『やぶくすしハッシーが読む』 ~第17回の句会から~ (最終回)


『 やぶくすしハッシーが読む 』 (最終回)
 
 ~第17回の句会から~
 
橋本 喜夫
 
 
 冬薔薇幸薄さうな女優かな    木村 杏香


面白い素材。女優のことなんてふつうは詠まないが、幸薄そうな女優となると、だれだろう、なんていろいろ想像して面白い。確かに絶対幸せになりそうな美人と、不幸が似合う美人ているよな。冬薔薇もりんとしていて悪くないと思う、女優に着きすぎと思う人は取らないだろうね。

 みかん剥く南極点より指を入れ  酒井おかわり

果物、とくに蜜柑を剥く時に極点を考慮するのは過去にあるかもしれぬ。しかしふつう蔕の方を北極とすると臍の方に指入れて剥くひとが多いからなかなかよくできた句だと思う。テレビで見たことがあるが、実はいろいろな剥き方があるようだ。「指を入れ」がこの句を救っている。

 ブロンズの指はまつすぐ冬うらら 中西 亮太

クラーク像など想像すればいいのかしら。冬青空の下指さすのは未来なのか、地獄なのか。受験シーズンでもあり、なかなか励まされる句だと思う。「まっすぐ」がいいですね。

 雪晴れや小言を言ひし洗濯機   福本東希子

ひとり者になって洗濯機を自分で操作するようになり、はじめて感じたこと。洗濯機が声をだして生意気に指図してくること。心のありようによっては小言にも聞こえる。雪晴れであるから、そんなに深刻な心持ではないことが窺える。

 歯朶飾るつめたき壁のキリル文字 五十嵐秀彦


キリル文字に壁のつめたさを感じたのはわかる。キリル文字でロシア語のような、飾り文字みたいな、とっても言語機能があるように見えない、装飾のような文字だよね。温みが感じられない感じわかります。歯朶飾るの季語の斡旋もわるくないと思う。



以上です。いつにもまして薄味の文章でごめんなさい。心臓食で食塩制限をしているもので。やばい30分で終わった。あまり無理できないのでこれで勘弁してください。次回のチャンスがあればもう少し真面目にやりますね。それではさよなら。



(了)



※諸事情により、第16回・第17回の句会評は『読む』企画にかえさせていただきます。
 みなさまのコメントもお待ちしております。 事務局(J)

 

2015年1月27日火曜日

『やぶくすしハッシーが読む』 ~第17回の句会から~ (その3)



『 やぶくすしハッシーが読む 』 (その3)


 ~第17回の句会から~

橋本 喜夫 

 朗らかに墓のことなどお元日    高畠 葉子

正月から縁起でもないと思われるかもしれないが、めったに集まらない親族家族があつまる正月だからこそ出る、出やすい話題である。共感は得られるだろう句。

 裸木やありのままなるひと美しき  戸田幸四郎

美しき とまで言わない方がよい句になりやすというが、この場合は成功していると思う。取らない人はそういう理由だろう。取った人は私と同じ理由だろう。この成功は危うきところで成功していると思う。

 心臓と乳房てのひら雪しんしん   井上 康秋

深いところから表層へと、クローズアップ手法が使われて、掌に伝わる鼓動、乳房のあたたかさ、そして 雪しんしん と繋がるようにできている。構成的にはかなり計算されたつくりである。私は最近この動作を行うことが多いので、共感した。

 チョコレートかじりセンター試験かな 山田 航

実感がある句である。試験の休み時間や待ってる時間でもいい。センター試験の直前勉強でもいいが、脳みそにすぐ栄養が行くように甘いチョコレートをかじる。おそらくそんな学生を写生した句と思われるが、もしかした作者自身の経験による句かもしれない。


 
(最終回につづく)

 
 

2015年1月25日日曜日

『やぶくすしハッシーが読む』 ~第17回の句会から~ (その2)



『 やぶくすしハッシーが読む 』 (その2)


 ~第17回の句会から~

橋本 喜夫 


 道後の湯入れて橙なる初湯     木村 杏香

道後温泉の入浴剤であろうか。ありふれた家風呂でも初湯にせめて道後温泉の元を入れて、湯に浸かっている。気持ち良さとのどかさも出ている。橙色になった湯の色と匂いがとても想像がつく。
 
 年明けて其の人の訃を知らされり  江崎 幸枝
 
そのままうけっとったとしても、実はいろいろなパターンも考えられる。正月から縁起が悪いわけであるが、仕方のないことである。其の人の がさりげなくうまいと思う。

 透明な水飲んでゐる雪だるま    中西 亮太

とけると透明な水になるわけなので、はらわたが透明だとか、溶けて透明になるなどの把握はよくあるが、透明な水を飲んでいるから透明な水になって溶けて行く という発想は少し珍しいと思う。

 年賀状この子の名前なんと読む   中村 幸二

元旦のちょっとして日常の切り取り。確かに子供の名前に懲りすぎて失敗するケースがなんと多いことか。親の自己満足でしかないのだが、すこしニヒルな切り口。

 刃のふれる砥石の音や寒に入る  遠藤ゆうゆう

砥石の包丁の擦れる音、金属音に近い、歯軋りのような音と寒に入るの取り合わせ。よくある取り合わせではあるが、共感しやすい句ではある。
 
 
 

(その3につづく)
 
 

2015年1月23日金曜日

『やぶくすしハッシーが読む』 ~第17回の句会から~ (その1)



『 やぶくすしハッシーが読む 』 (その1)


 ~第17回の句会から~

橋本 喜夫 


ごぶさたしてます。次回は生きて皆様にお会いできると思います。さっそく、第17回イタック句会選句してゆきます。参加していないので、句会の熱も伝わらず、場の共同性もないので、気楽に好きなように選句できていいですね。
 
 

 水平線ふくらんでおり凍てており   亀松 澄江
 

水平線のふくらみを、逆転の発想で凍てに結びつけたのは手柄でしょう。ただもっとすっきり詠めると思うな。二句一章的に詠んだのはいいと思う。うまいひとなら一番良い句になったと思うな。


 雪だるまの前で合掌する子ども    平田 莉々

わざとに散文的なつくりをして、見逃してしまいがちな句内容に詩的違和感をもたらしている。読み終ったあと、?マークが3つくらい並ぶような景。どんな景なんだろうかと想像してしまう。信心深い子供はいるのだろうか、それとも昔の景か、などなど。恐らく大した意味はないのだが、作者の罠にはまってしまった。

 木製のマグに替へたり寒の内     小笠原かほる

木製のマグの素材の温み、ホットミルクなどを呑んでいる景。寒の内という季語には着きすぎ感もあるが、けっして気持ちの悪くない順接さである。

 指きりの果ては凩吹くばかり     室谷安早子

吹きにけり 吹いてをり なら取らないかもしれない。この場合の吹くばかりという投げ出したような、読み手に預けたような詠みが奏功している。ずーと凩が吹き続ける感じが出てゐて、約束の指切りも果たされていないことが言外にわかる。


(その2につづく)
 
 

『やぶくすしハッシーが読む』がはじまります!


俳句集団【itak】事務局です。


ご好評の『読む』シリーズです。
今回はおヨネが読む』に続きまして
『やぶくすしハッシーが読む』をスタートします。

第17回俳句集団【itak】の句会には今回108句が投句されました。
その中から当会幹事・『やぶくすしハッシー』こと橋本喜夫が
毎回心の赴くままに選んだ句を読んで参ります。

前回同様、ネット掲載の許可を頂いたもののみを対象といたします。
掲載句に対して、あるいは評に対してのコメントもお待ちしております。
公開は本日1月23日(金)18時からです。ご高覧下さい。

☆橋本喜夫(はしもと・よしを 俳句集団【tak】幹事 雪華、銀化同人)

2015年1月19日月曜日

第17回句会 投句選句一覧④


※作者・投句一覧が空欄のものは 掲載の許可がなかったものです






 
 
#投句・選句一覧
 
 

第17回句会 投句選句一覧③


※作者・投句一覧が空欄のものは 掲載の許可がなかったものです






 
 
#投句・選句一覧
 
 

第17回句会 投句選句一覧②


※作者・投句一覧が空欄のものは 掲載の許可がなかったものです





 
 
#投句・選句一覧
 
 

第17回句会 投句選句一覧①


※作者・投句一覧が空欄のものは 掲載の許可がなかったものです




#投句・選句一覧

【第17回人気五句披講】


俳句集団【itak】です。
 
いつもご高覧頂きありがとうございます。
先日公開しました第17回句会【人気五句】の披講をいたします。
三句選で、天=3点、地=2点、人=1点の配点方式、( )内は配点です。
横書きにてご容赦くださいませ。

みかん剥く南極点より指を入れ            酒井おかわり (40)
反骨の万年筆の賀状かな                戸田幸四郎 (18)
透明な水飲んでゐる雪だるま              中西 亮太 (17)
冬銀河一人前の米を研ぐ                小張 久美 (11)
融点を行ったり来たり頬の雪               久才秀樹 (10)
 

以上です。ご鑑賞ありがとうございました。



なお、同点3位2句中1句は掲載不可でした

当日の参加者数は54名、108句の出句、55名の選句となりました。
引き続き投句選句一覧をご報告します。
ご高覧下さいませ。


 

2015年1月15日木曜日

俳句集団【itak】第17回イベントを終えて

 
俳句集団【itak】第17回イベントを終えて
 
「事件はいつも【itak】から起こる」
 
五十嵐秀彦


 

数日前の暴風雪の影響が心配されたのですが、当日の札幌は好天で安心しました。
今回も57名という大変多くの方々のご参加をいただき、スタッフおおわらわながらも、うれしいイベントとなりました。


北は下川、名寄、旭川から、東は十勝から、南は函館からと各地から遠路かけつけてくれた人々、そして世代も高校生、大学生、院生や十代の社会人などの若手から、超ベテランまで、大ざっぱに所属でみても、現代俳句協会、俳人協会、伝統俳句協会、もちろん無所属、さらに初心者まで、実に多彩で多様な俳句愛好者が集い、会場であるいつもの道立文学館講堂は始まる前から熱気に満ちておりました。

今回、参加者がみなさん楽しみにしていた企画が、「爆笑! 【itak】俳句甲子園!」です。
参加校は琴似工業高校と旭川東高という本家俳句甲子園の常連校二校による、いうなればエキシビジョン・マッチ。


高校生たちだけにやってもらうのでは芸がないので、OB枠で北大院生の今井心さんと道教育大函館校の中西亮太さんにも参加してもらいました。

司会・行事役は、琴似工業OBの田中枢君。

直前に琴似工業に欠員が一人出たため、そこを埋めるのにあの話題の歌人・山田航さんにも入ってもらうという、これぞ【itak】という顔ぶれの2チームとなったのです。


内容は本家俳句甲子園とほぼ同じルールで3回戦。
勝敗は二の次で、俳句甲子園は聞いたことはあるけれど見たことがないという人々に高校生たちがどんな取組みをしているのか体験してもらおうということと、高校生たちにとっては対外練習試合の機会を作ってあげようというのが目的でしたので、審査に関しては会場のみなさんの挙手で決めるというゆるいルールでやってみました。


さて、その内容につきましては、後日ブログにアップする抄録を待ってもらうこととして、結論をいえばかなりいい勝負となり、高校生やOBの活発で機知に富んだディベートも展開され、これは面白いじゃないか!、という印象を参加者全員に与えたものと思います。
また、高校生たちの俳句のレベルの高さも注目されたようです。

まさに百聞は一見にしかず、この日イベントに参加した60名弱の人たちは瞬時に俳句甲子園のなんたるかを理解したことでしょう。


第2部の句会は54名(他、見学3名)で実施。
実にさまざまの俳句を一度に見るという、うれしいような戸惑うような句会をみなさんの協力で楽しく行うことができました。


【itak】の句会は句を深く掘り下げる場ではありません。
俳句と出会う、人と出会う、出会いの機会としての場です。

垣根なく自由に出会うために邪魔になるようなことは全て排除するのが【itak】のやり方です。
そのためには、組織とはならずに、常に運動体であり続けることを幹事一同心に決めて今後も取り組んでまいります。



句会終了後は懇親会。
これもまた貴重な出会いの場です。


今回はイベント会場と同じ中島公園内の音楽堂キタラ1階のレストラン(リーズナブルな料金で高級感のある食事が楽しめます)で、こちらにも32名の方が参加するという、イベントの熱気をそのまま持ってきた雰囲気となり、それぞれが垣根を越えて楽しく語らったのでした。

今年初めての【itak】イベントも大成功でした。

次回3月には、当会幹事、新聞社記者で俳人の栗山麻衣さんの講演『震災と俳句』が予定されています。3・11以降、震災は俳句文芸にも大きな影響を与えました。麻衣さんがどのような切り口でお話ししてくれるのか今からとても楽しみです。


また、その次の5月には、【itak】3周年記念としてビックイベントの企画が今進んでいます。楽しみにしてください。これを見逃したら後悔しますよ、とだけ今は申し上げておきます。

事件はいつも【itak】から起こる。

あなたも事件の目撃者となり、そして当事者になりませんか!





2015年1月12日月曜日

第17回俳句集団【itak】イベントは無事終了しました。



土曜日は俳句集団【itak】の第17回イベントにお越しいただきまして誠にありがとうございました。
若い世代の【itak】参加者有志による『爆笑!【itak】俳句甲子園』はいかがでしたでしょうか。どうぞご感想などをお寄せ下さいませ。
今回も57名のみなさんにご参加いただき、大盛会となりました。
新年会を兼ねた懇親会にも多数のご参加をいただき、ありがとうございました。
毎回若干ずつバージョンアップする句会の運営にもみなさま快くご協力いただき、幹事一同深く感謝いたします。

第一部の抄録については改めてこのブログにてご報告させていただきたいと思います。
また、「句会評」「人気五句」「読む」企画などを随時アップの予定です。只今皆さんの原稿を鋭意募集中です(ごめんなさい、原稿料はありません)。 

itak】のブログは参加されたみなさんの発表の場でもあります。記事についてのコメントやツイッター等での評を頂けますと大変に励みになります。また、みなさまの作品もお寄せください。既発表作でも構いません。エッセイ、回文、短歌、どんなジャンルでも結構です。どうぞよろしくお願いします。

次回は3月14日(土)13:00から、北海道立文学館・地下講堂にて開催の予定となっております。
第一部は【itak】幹事・俳人の栗山麻衣さんによる講演『震災と俳句』を予定しております。みなさまお誘いあわせのうえ、イベント・句会にご参加くださいませ。

詳細は改めてご案内いたします。
以下のメールアドレスに随時お問合せくださいませ。 


本日のところは取り急ぎの御礼まで。
今後とも俳句集団【itak】をどうぞよろしくお願いいたします。


俳句集団【itak】幹事一同