2016年4月3日日曜日

『やぶくすしハッシーが読む』 ~第24回の句会から~ (最終回)



『 やぶくすしハッシーが読む 』 (最終回)

 
~第24回の句会から~

橋 本 喜 夫
  
 啓蟄の思はぬ足の速さかな        籬   朱子

前述の「蟻穴を出る」の句と相似形の内容を詠んでいるが より余白を拡げた作り。啓蟄のころ出てくる虫たちの思わぬ足の速さに驚いているととっても良いし、この時期の季節の足早さを詠んでいるかもしれないし、前を歩く人間たちの歩く足の速さかもしれない。二月が飛ぶように過ぎてすでに啓蟄という、多忙な日常に生きてゐる人間の「取り残された感覚」が可笑しくてすこし悲しい。


 ジッパーをジュッと上げれば春の雷         綾

ジッパーのオノマトペとして「ジュッと」が気にいったこと。とりあわせの季語が春の月とか桃の花とかエロい系を選択せずに、春雷を選択したことが二つ目の美点。音を立てるということ以外にアナロジーはないが、「ジュッと=春の雷」とはるか遠くて響き合っている感じが好きである。


 ひげ摘まれもやしかがやく日永かな   遠藤ゆき子

食用のもやし、おそらく(わからないが)豆類を光を当てずに芽が出るように水で栽培して育てるのかな。そして収穫時にはひげはおいしくないので、ひげを摘んで出荷するのであろう。光を当てないで光合成させないで育てたもやしを「かがやく」「日永」と光を当てた力技の俳句。素材として大変珍しいいので私には新鮮に映ったが、実際の句会で人気があったかどうかは不明。


 硝子雛しまふ日溜りよりはづし      松田 ナツ

硝子細工の雛人形で小さいものであろう。それを窓辺に置いて、雛祭りがおわれば仕舞う。硝子の冷たさがなくてむしろ、作者は日の温みを感じたのであろう。ひなまつりの、あたたかい質感・肌感覚が伝わる句である。



以上たいへん薄味で、申し訳ないがめまいの薬が効いているうちに終了する。次回は仕事が被る予定でしたが、1週間ずれましたの出席できそうですぞ。それではまた。


※俳句界には眩暈の方が割合多くいらっしゃいます。皆さんもどうぞご自愛ください。
喜夫さん、次回は句会報をよろしくおねがいします。(事務局J)。

0 件のコメント:

コメントを投稿