2016年1月20日水曜日

俳句集団【itak】第23回句会評② (橋本喜夫)


俳句集団【itak】第23回句会評②

  2016年1月9日
 
橋本喜夫(雪華、銀化)
 
 
 はつもうで木箱の中でうなる金      木内望月

これも笑ってしまう内容。内容はたしかに俳句というより川柳に近いかもしれない。しかしこの句の可笑しさは「うなる金」である。賽銭箱の金をうなると表現したつつましさが可笑しくて庶民の哀れさが表現できている。賽銭箱というとあとのフレーズの「金」と被るのでわざわざ「木の箱」としたのも気が利いている。


 鯛焼のはらわた透けてかぶりつく    高橋なつみ

鯛焼きの句を歳時記で調べて頂けばわかると思うが、鯛焼き=かぶりつく というベタな表現している句はほぼ皆無。ここがまず逆に面白い。はらわた=餡を比喩するのはよくあるパターンであるがここは「透ける」が佳い。透けるほどたくさん詰まった餡が見えてくるようだ。俳句的にかっこよく納めようとしていないのが佳い。


 君は神か否定したまへ冬将軍      高畠霊人

この句も人で頂いた。句会の評でも述べたが最近は「神対応」など「神」を本来の意味でなく、「とっさのときの気転の効いた対応や大人の対応」として使っている。この句の神もそのような軽い意味で使っているのであろう。あたかもすこし高飛車な彼女に対してその娘に惚れているすこし草食系の男子が「君は神なのか?否定しなさいよ」と言いよっているようにも思えて面白い。そこに冬を擬人化した「冬将軍」をつけたのも面白い。北海道にどっかと居座っている冬将軍に「お前か神なのか、帝なのかどっちなのか?」と毒づいているようにも思えてさらに面白い。


 歯みがきを終へてもの喰ふお正月   田口三千代

作者の正月の過ごし方が見えるようで可笑しい。お正月でなくてもあり得るリアルな日常であるからこそ、非日常のおめでたいお正月がよく似合う。わかりやすくて共感を得られやすい句だ。「もの喰ふ」が古典的な格調があり、うまい。


(つづく)

 

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