句集『無量』の一句鑑賞
久才 秀樹
こな雪、つぶ雪、わた雪、ざらめ雪、みず雪、かた雪、
掲句は「牡丹雪」。 雪の落ちる速度を秒針に例えただけと言えばそれまでだが、この句に惹かれた理由は、秀彦氏が、数ある雪の中から、 この「牡丹雪」を選んだからだ。
この句の秒針は、流れるように回る秒針(スイープ運針)よりも、 「カチカチ」という1秒ごとに刻むもの(ステップ運針)に感じられた。 その秒針には、温かく湿った「牡丹雪」がぴったりだ。 秒を刻むように降る牡丹雪は、北国の人々にとって待ちわびる春への、 まさにカウントダウンともいえる。
雪国に住む俳人だからこそ、この取り合わせが生まれたのだと思う。 『無量』は雪を意識してまとめられた句集ではないだろうが、私には「冬」、 特に「雪」を題材とした句に惹かれるものが多かった。『無量』には、 秀彦氏の師であり、「雪の雄大」と呼ばれる深谷雄大氏(旭川)も跋文を寄せている。
この句の秒針は、流れるように回る秒針(スイープ運針)よりも、
雪国に住む俳人だからこそ、この取り合わせが生まれたのだと思う。
☆久才秀樹(きゅうさい・ひでき 俳句集団【itak】幹事 北舟句会)
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