2014年3月4日火曜日

『 高校生俳句と【itak】 』  ~五十嵐 秀彦~



『 高校生俳句と【itak】 』
 

~五十嵐 秀彦~
 
2014.03.04
 
 
1、北海道の高校生俳句

 

2月の【itak】ブログで高校生の作品を連続アップしました。
まとめると次の内容です。
 

札幌琴似工業高校文芸部




 
 


 
 

旭川東高校文芸部







 

2、俳句甲子園地方大会

 

高校生の俳句を語ろうとすると、俳句甲子園を避けてとおるわけにはいきません。
そして、私たち俳句集団【itak】は俳句甲子園と浅からぬ縁をもっています。

また、それゆえに、俳句甲子園のことはみんなが知っていると思いがちなのですが、冷静に見渡せば必ずしもそんなことはなく、特に北海道ではまだまだその内容を知らない人たちが多いことに気づくのです。

 

俳句甲子園は、昨年で第16回を数えました。16年という歳月は、私のような中年男にはどうってことない十年一日の月日ながら、思えば当時18歳だった生徒も現在34歳になってしまっているという時間の流れです。

 

北海道では旭川東高が’03年から出場していて、最初の一回は単独で地方大会無しの出場、その翌年から地方大会が開かれるようになりました。
旭川東高は連続出場11回の記録を作っています。

私は10年前から地方大会の審査を担当し続けてきました。
きっかけは何だったのかおぼえていないぐらいです。おそらく、松山で俳句甲子園発足時から支えているメンバーの中に友人がいたことや、現代俳句評論賞を受賞した直後だったことなどが、おそらく声のかかった理由だったのでしょう。

 

以来、私は北海道の地から俳句甲子園を見つめ続けてきました。

その間、旭川東高以外では、旭川東栄高校、札幌国際情報高校、函館西高校など断続的に出場校が入れ替わる状況が続きましたが、一昨年からは札幌の琴似工業高校が参戦するようになりました。

今年がどうなるかはわかりませんが、過去2回の地方大会は強豪校と新規参入高の対決の構図となり、高校生俳句というものの現状がよくわかる興味深い大会になっていると思います。

 

 

3、俳句甲子園松山本選

 

特に昨年は、松山本選のやり方に変更があり、そのせいで私も本選の審査を担当する経験ができました。

8月の暑い盛りに、俳都松山で開催された第16回俳句甲子園本選は、高校生がどうこうと言う以前に俳句関係のイベントでこれほど規模の大きなものはないだろうと驚くものがありました。

1日目の予選リーグの会場は街の中心にある大きなアーケード街「大街道」に12会場が設営され、各会場に審査員が5名配置されたので、審査に当たった俳人の数、なんと60名となりました。

結社、団体を超え、60名の俳人が高校生の俳句大会のために全国から集まってくるというのは、他にないスケールです。

もちろん主役の高校生の数はそんなもので終わりません。

 
全国24都道府県32校36チームの参加、1チーム5名で構成されるので、合計180名の高校生俳人が四国松山の地に集結したのです。

 

松山の中心街は俳人だらけとなり、その中を、車体に大きく俳句甲子園と書かれた路面電車が走ります。

運営ボランティアの方たちも合わせると、地方都市で開かれる文芸イベントで、まぎれもなく最大級のものと言えるでしょう。

また第2日目の決勝リーグの審査員の顔ぶれも豪華なものでした。

稲畑汀子さん、中原道夫さん、仁平勝さん、高野ムツオさん、小澤實さん、正木ゆう子さん、などなど。

 

このようにとんでもなくパワフルな俳句大会が、既存の団体・結社の協力をもらいつつも、独立系のNPO法人の力で開催されているということは、大変頼もしく、短詩型文芸の将来を語るときに、とうてい無視できないものであることはあきらかです。

そして、俳句甲子園出身者が既に有望若手俳人として全国的にも注目されながら活躍をしています。

参加校も毎回増えていて、高校に俳人たちがコーチとなって入っている例も多くなってきました。

 

 

4、俳句集団【itak】の目指していること

 

現在、俳句甲子園は上記のような活況を呈し、また、成果も上げつつあります。

しかし、視点を変えてみると、やや意外な現実にぶつかるのです。

それはつまり、北海道俳壇、自分たちで「俳壇」と呼んでいる人々、彼らの眼中に、いまなお俳句甲子園が入っていないということです。

知らない人もいるのかもしれませんが、知っていてもとりあえず無視。旭川東高が松山本選に11年連続出場していることも話題に取り上げられません。

 

なぜでしょうか?

そこには、松山で俳句甲子園が旗揚げされたとき問題となったことに似ている状況があるように見えます。

結社を中心とした「俳壇」とは無縁のところで実行されたことから、結社側からの、おそらく無自覚ながらも反発のようなものがあり、とりあえず無視している、そんな状況がありそうです。

私はこの現実にぶつかると、強い疑問を感じるのです。

「結社の世代交代ができない。少子高齢化で先細っている。若い人は俳句に興味をもたない」

「俳壇」と呼ばれる世界にいる人たちは、みな異口同音にいつもそんなことを言っています。

その一方で、毎年毎年高校生が15名~20名、北海道で俳句甲子園に参加し、その中から5名が松山に行っています。

若者が俳句に興味を持っていないと言っている人たちはこれをいったいどう思って見ているのでしょうか。

なぜ注目しないのでしょう?

 

私たちが俳句集団【itak】を旗揚げした年、第一回イベントの終了後に俳句甲子園の地方大会が開催されました。

私はいつものように審査に参加し、そして久保田哲子さん、内平あとりさんが審査員、さらに運営ボランティアとしてもitakの仲間が手伝いました。

それが縁になって、琴似工業高校文芸部が学校公認の部活としてitakの句会に参加するようになったのです。

itakは高校生をメンバーに入れればそれでいいとは思っていません。

高校生から大学生、社会人へと俳句を続けられる場を作っていきたいのです。

そして、そこに各結社や団体の人たちも参加して、出会いの場としてほしいのです。

この活動は、俳句集団【itak】単独で完結させるものではなく、北海道の俳句界を、結社も含めて活性化させることを目的としています。

そのことを道内結社の人たちには、ぜひよく見ていただきたいのです。

 

今回、itakは高校生俳句の特集をしました。
俳誌はもちろん、web上の企画としても道内初のことと思います。

どうか、この俳句を読んでほしい。
うまいへたではなく、彼らの熱意を感じとってほしい。

 

今、求められているものはなんでしょう。
内向きの求心的な俳句探求なのでしょうか。
もちろんそれも必要なことです。

しかし、結社による俳壇が、ある種の膠着状態になっている今、求められているのは変化です。
そして、不完全ながら走り出す勢いです。

 
俳句甲子園という運動は、そうした変化を呼び起こす人材を世に出すための運動ではないでしょうか。

結社にこだわらない多様性、そしてそこから新たな状況を作り出し、それが循環して結社に新しい血を流す。
そんな状況の変化が、ようやく始まりかけています。
 

俳句集団【itak】はこれからも北海道の地で変化の旗をかかげます。
俳諧自由と書かれた、孤独だけれど大きな旗を、北海道文芸の曠野に目印としてかかげます。

どうかみなさん、その旗を見つけてください。
そして、itakという事件の、目撃者になり、当事者になってください。
お待ちしております。

 
次回イベントはこちらです。

 
 
 
 
☆五十嵐 秀彦(いがらし・ひでひこ 俳句集団【itak】代表 藍生・雪華)
 
 

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