2014年2月17日月曜日

句集『無量』の一句鑑賞 ~栗山 麻衣~


句集『無量』の一句鑑賞

栗山 麻衣

 
 
 無頼派と生活人の万華鏡        五十嵐秀彦



いやあ遅くなってすんまそん。五十嵐秀彦さんの第一句集「無量」面白く読ませていただきました。イタック内部であんまり褒め合うのもどうなのかなーと思いつつ、やっぱ素晴らしかったです。いやあ勉強になった。


 一読しての印象は、どこか哀しみをたたえたアングラ芝居を見た時のような感じと申しましょうか。あまり俳句では見ないような言葉、非日常世界へ連れていかれるような表現に驚かされ、その独特の凄みに圧倒されました。「一代の咎あれば言へ沙羅の花」「蝶有罪あるいは不在雨あがる」「月光の告訴満ちゐる口の中」とかね。


 しかし、みんなよく見て! ワタクシは当初見落としておりましたが、地味だけど情景が浮かんだり、ユーモアが漂ったり、しみじみしたりする句も意外に(←失礼)あるのですよ。役者が楽屋でふと漏らした言葉のようなやつ。「新涼や夕餉に外す腕時計」「氷下魚裂くつまらぬ顔は生まれつき」「窓ぬぐふ人惜しみ年惜しむとき」とかとか。
 というわけで、結論。この句集の魅力はずばり、作者の心の中に住む絢爛たる無頼派と堅実な生活人の織りなす万華鏡的輝きなのだ。ちなみに、その世界観が融合したような作品もありマス。「茄子漬の昨日に染まる箸の先」「靴底の雪剥がし黙剝がしけり」(←これが一番好き)「数珠持つて来いと言はれし花見かな」とかとか。日常を詠んでいるにもかかわらず、味わっているうちに異世界へと足を踏み出してしまう。



☆栗山麻衣(くりやま・まい 俳句集団【itak】幹事 銀化)


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