2013年11月1日金曜日

青山酔鳴「厨」十句(『群青』)を読む ~五十嵐秀彦~


 
青山酔鳴「厨」十句(『群青』)を読む
 
 
五十嵐秀彦

 

結成されたばかりの同人誌『群青』、その創刊号をいただいた。
この俳誌の柱となっているのは櫂未知子と佐藤郁良の二人らしい。
佐藤郁良は開成高校の教師として、俳句甲子園の常勝校を育て上げた人物で、櫂未知子と同じ「銀化」の主要同人のひとりである。
『群青』に作品を発表している俳人には開成高校OBの名もあれば、仲寒蝉、興梠隆の名もあり、構成メンバーを見ても興味深い同人誌の誕生だと思う。
 

薄いがその青色に気迫を感じる表紙を開くと、同人作品の最初のページに、いきなり青山酔鳴の名前が!
酔鳴といってもピンとこないかもしれないが、皆様ご存知の人である。
俳句集団【itak】会場でいつも受付や裏方など獅子奮迅の活躍をしている早川純子の俳号なのだ。
これはしっかりと読ませていただこう。
 

青山酔鳴 「厨」十句より
 

削ぎ落とす木耳といふ森の耳

 
キクラゲという名の茸はクラゲなのやら耳なのやら。もともと茸と書くぐらいなので、まあ耳なのだろう。それを削ぎ落とすというのだ。
思わずゴッホとゴーギャンの関係などを思い出しもする展開。
木の痛みが伝わってくるようだ。
座に「森の耳」と書いたのだから、「木耳」ではなく「キクラゲ」と書く手もあったかもしれない。
いずれにせよ上5の「削ぎ落とす」のインパクトが全体を支配していて気になる句となっている。


骨しやぶる犬にメロンは与へない

 
もともと犬にメロンなどやる気はないのだ。
犬は骨をしゃぶっている。古典的である。アメリカのコミックのようでもある。
そんな犬がかわいいのである。
そして、そんな犬をかわいいと思っている自分に、ご褒美のメロンを与えるのである。
 
 
割礼の花ズツキーニ揚げにけり

 
ズッキーニって季語なのかね?
南瓜の一種なので、同じように花は夏の、実は秋とするのか。
で、これは花なのか、実なのか。
揚げるのだから実なのだろう。ズッキーニの天ぷらが美味しいという話を聞いたことがあるし。
じゃあ「割礼の花」とは何か。
という具合につぎつぎと疑問が湧いてくる句だ。
その意味で、成功しているのかどうか、もやもやする句ではあるが、わからないなりに全体の調子が意外と良いのである。
不思議な「言い切り」感が小気味良いのだ。


玉葱刻む亭主膾にしたるあと


今回の「厨」10句中、一番の句だと思う。
「膾にする」は、料理の膾ではなく「めった打ちにする」ことなのだろう。
なんとまあ。しかし辞書にそう書いてあるのだからしようが無い。
原因は何か知らないし、知りたくもないが、ご愁傷様なことである。
「玉葱刻む」こちらは本来の膾であろう。
居間では亭主がKOされてのびている。
やれやれ・・・。


厨には浄土あるいはかき氷

 
そんなわけで(どんなわけだ?)、作者にとって厨(キッチン)は聖地(解放区?それともアジール?)なのだ。
そこには様々な食材とともに、色とりどりの物語が点在している。
「浄土」なのである。「彼岸」なのである。
そして「かき氷」なのである?
この強引かつ奇天烈な転換が作者の持ち味であり、現在なのであろう。

10句中半分の5句に触れてみた。
他の句も非常に個性的である。個性的な発想、着想をまだ少々ナマのままに句としているようにも見える。
この後、まだまだ変化し、化け続けそうな作家であろう。
化けるためには多作と多読。
すでに作者はそれを始めているのに違いない。 



同誌には、やはりitakでおなじみの栗山麻衣の作品も載っている。
機会をみてそちらにも触れさせていただきたい。


(以上)

 

☆五十嵐秀彦(いがらし・ひでひこ 俳句集団【itak】代表 雪華同人 藍生同人)

 

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