2014年4月9日水曜日

『 俳人 吉田類の句を読む 』 ~三品 吏紀~




http://www.kadokawa.co.jp/product/301310001086/
酒場詩人・吉田類の旅と酒場俳句
・・・おっと?
またまた出現、私りっきー。

いつもはイベント後に高校生達の様子をちょくちょく報告してましたが、今回はちょっと別件で登場です。
先日、私りっきーの住む街に吉田類さんという方が、講演会を行うためにいらっしゃいました。ご存知ですか?類さん。

吉田類さんはBS-TBSで放映してる「吉田類の酒場放浪記」という番組に出演されてるライター・イラストレーターで、老若男女関係なく大人気の方です。
ふらりふらりと色んな街の酒場に現れては、ただただ飲み・食い・地元の方々と交流する。そして見事に酔っ払うという(笑)素敵な番組です。
ハンチング帽をかぶった独特の風貌なので、街中を歩いていると直ぐに「類さーん!!」と囲まれてしまうそうです(笑)それほど人気のあるお方。

そしてこの類さん、もう一つの顔があります。そう、俳人としての顔。
番組の最後にいつも一句詠んで酒場を去る類さんですが、それがきっかけでワタクシも俳句に興味を持つようになったわけです。
いつもは番組見ながら晩酌して一緒に「エヘヘ☆」とか酔っ払いながら読んでた類さんの俳句ですが、今回はちょっと腰をすえて、「俳人 吉田類」の句を読んでみようかなと思い立ったわけです。


 浸蝕の荒々しきが牡蠣の味

・牡蠣は幼生から食用の大きさになるまで数年の時間を必要とする。ホタテの貝殻に付着してそこから全く動かずに成長していくのだが、海の中では豊潤な恵みと、時には荒々しく怒りの様な波のうねりもその身に受ける牡蠣。イワガキの殻なんか見ると、まさしく岩が海に浸蝕されたようなゴツゴツとした触感だ。
だがその身を口に入れた時、海の全てを凝縮したかのような生命の味が、舌一杯に広がる。焼き牡蠣、牡蠣酢、カキフライ…
海の生命力溢れる荒々しい味こそが、牡蠣の真骨頂というのだろう。

 おすすめは花わさび侘寂利す

・花わさびに侘寂とは、これは半分は洒落ということなのだろうか(笑)
花わさびは軽く塩もみをして放置すると、余分な灰汁がにじみ出てくる。それを洗い流してから茹でるなり醤油漬けにするなりなど、わさび特有のツーンとした爽やかな辛さを楽しむことができる。
きっと類さんもこう言いたかったのだろう。旬の物はあれこれ手を加えず、質素にあしらうことが本当の味を楽しめるのだ。まさに侘寂だと。

 竜天に登りて松の鱗かな

・竜というのは、西洋と東洋ではその存在がまるで正反対に位置されている。
ヨーロッパ諸国の神話で竜は邪悪な存在、神や英雄の仇とされてることが多く、変わってアジア諸国では竜は神として崇められてる事が多い。身近な所でいくと水神様なんかが竜の姿をとって崇められていると思う。
天に向かってそびえる一本の松、下五の「松の鱗」がより竜を想起させる。竜鱗が脈を打つような、そんな姿を想像してしまう措辞である。
天に登った竜は下界に何をもたらすのか?恵みの雨かそれとも試練の日照りか。天に登るというところで神性を強調しているように思う。


・・・今回は番組で詠まれた句を三句だけランダムに選んで読んでみましたが、類さんの句から感じた印象として、「自由」という言葉がまず浮かびました。
旅人としての気質、若い頃からの放浪癖がある故なのか、現代俳句・伝統俳句、そういうものに囚われずに己が儘自由に詠む。自由に言葉で遊ぶ、そんな印象を受けました。
そして自由だからこそ、俳句を一切知らない人でも何か心に響くような、そんな言葉を紡ぐ事ができるのではないかと。
最近では「旅と酒場俳句」というご自身の作品を集めた本も発売されたとか。類さんの俳句観を知る上でかなり参考になりそうな本みたいですね。残念ながら私はまだ入手しておりませんが、手に入った際にはよりディープに類さんの俳句ワールドに触れてみたいと思います。

ではまたの機会に。


☆三品吏紀(みしな・りき 俳句集団【itak】幹事 北舟句会)

 

2014年4月7日月曜日

「ファンファーレ」   大原こみち


 


小さいキャラクターが「おまめさん」
【itak】幹事・大原です。日々暖かくなり、春の気配が少しずつ感じられるようになってきましたね。
自宅で意外な出来事があったので報告させていただきます。
冬のある日、仕事を終え、帰ってきた日のこと。小4(今月から小5)の長女が、ややはにかみながら、1枚の紙を差し出してきました。娘によると、国語辞典の後ろに季語の一覧表を見つけ、急に俳句を作りたくなったとのこと。自分で考えたキャラクター「おまめさん」についての句が大半でしたが、20分で36句、すべて季語入りで詠んだそうです。
子どもってすごい。父が句会に行っていることは知っていても、句を見せたことはありません。思わぬ「親孝行」に頬が緩んでしまいました。


うぐいすにのってみたいなひらひらと
花ふぶきファンファーレがね始まるよ

                大原こみち
 
 
 





 
 
 
 
☆大原こみち 道内在住小学生
  父・トミーを驚かせようと国語辞典の後ろの季語一覧から即興で有季句を作る。
  「おまめさん」は自作のキャラクター。掲載句は2月の末に作ったもの。

2014年4月5日土曜日

俳句集団【itak】第13回 パネラー紹介





五十嵐秀彦(いがらし・ひでひこ)

昭和31年生。「藍生」会員、「雪華」同人。メール句会「迅雷」世話人。中北海道現代俳句協会副会長兼事務局長。俳句甲子園北海道大会審査委員長。俳句集団【itak】代表。平成15年第23回現代俳句評論賞受賞。平成25年北海道文化奨励賞受賞。平成25年北海道新聞俳句賞佳作受賞。句集『無量』(書肆アルス)。







山田 航 (やまだ・わたる)

昭和58年生。歌誌「かばん」所属。俳句集団【itak】幹事。平成21年、角川短歌賞および現代短歌評論賞受賞。平成25年第4回早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞。『世界中が夕焼け 穂村弘の短歌の秘密』(穂村弘 共著、新潮社)、歌集『さよならバグ・チルドレン』(ふらんす堂)。



第一部 トークショー

読(詠)まずに死ねるか!~短詩系文芸の可能性~

むことがむことであり、むことがむことである。
の文芸としての俳句や短歌は、異物共有するところにその面白さの真骨頂がある。
時に偶然 が、コトバという呪物を生むこともあるかもしれない。
はたしてこの二人で盛り上がれるのか 大・き・な・疑・問(笑)を孕みながら、十嵐が、ひとの作品を肴にして縦横無尽勝手放題に、俳句を語る短歌を語る。
【itak】 でしか実現しない顔ぶれによる、奇っ怪 なトークショー!



<第13回俳句集団【itak】イベントご案内>

*と き  平成26年5月10日(土)午後1時~4時50分
*ところ  北海道立文学館(札幌市中央区中島公園1番4号)
*参加料 一般500円、高校生以下は無料

●第1部  俳人 五十嵐秀彦と歌人 山田航によるトークショー
        読(詠)まずに死ねるか!~短詩系文芸の可能性~ 

●第2部  句会(当季雑詠2句出句)
●懇親会のお申し込みもお受けしております
 詳細お問い合わせはEメール(itakhaiku@gmail.com)へ。


※今回も休憩時間などに、某有名俳人から【itak】に寄贈された約170余冊の文芸書を無料でお分けします。お互いに譲り合いつつ、ご遠慮なくお持ちください。


2014年4月3日木曜日

第13回俳句集団【itak】イベントのご案内


第13回俳句集団【itak】イベントのご案内です。


俳句集団【itak】事務局です。
もうすぐ節分、季寄せ、歳時記の上では春となります。
第12回講演会・句会には64名のご参加をいただきました。
遠方からも多くのご参加を頂き、ありがとうございます。

下記内容にて【itak】の第13回 トークショー・句会を開催いたします。
どなたでもご参加いただけます。
今回は俳句集団【itak】旗揚2周年を記念して、代表・五十嵐秀彦と幹事・山田航による抱腹絶倒()トークショーを行います。
多くの方々のご参加をお待ちしております。
第一部のみ、句会の見学のみなどのご参加も歓迎です。
また、実費にて懇親会もご用意しております。お気軽にご参加ください。

◆日時:平成26年5月10日(土)13時00分~16時50分


◆場所:「北海道立文学館」 講堂
     札幌市中央区中島公園1番4号
     TEL:011-511-7655


■プログラム■

 第一部 トークショー 『読(詠)まずに死ねるか!~短詩系文芸の可能性~』
 俳人・五十嵐秀彦VS歌人・山田航

 第二部 句会(当季雑詠2句出句)
 <参加料>
 一   般  500円
 高校生以下  無  料(但し引率の大人の方は500円を頂きます)


※出来る限り、釣り銭の無いようにお願い致します。
※イベント後、懇親会を行います(実費別途)。
 会場手配の都合上、懇親会は事前のお申し込みが必要になります。
 会場および会費など、詳細は下記詳細をご覧ください。


※今回も休憩時間などに、某有名俳人から【itak】に寄贈された約170余冊の文芸書を無料でお分けします。お互いに譲り合いつつ、ご遠慮なくお持ちください。

 




 
■イベント参加についてのお願い■

会場準備の都合上、なるべく事前の参加申込みをお願いします。
イベントお申込みの締切は5月7日とさせて頂きますが、締切後に参加を決めてくださった方もどうぞ遠慮なくこちらのメールにお申込み下さい。
なお文学館は会場に余裕がございますので当日の受付も行います。
申し込みをしていないご友人などもお連れいただけますのでどなたさまもご遠慮なくお越しくださいませ。
参加希望の方は下記メールに「第13回イベント参加希望」のタイトルでお申込み下さい。
お申し込みには下記のいずれかを明記してくださいませ。
①講演会・句会ともに参加
②第一部講演会のみ参加
③第二部句会のみ参加(前日までにメール・FAXなどで投句して頂きます。)
特にお申し出のない場合には①イベント・句会の通し参加と判断させて頂きます。

■懇親会詳細と参加についてのお願い■

 会場:銀の蔵
    札幌市中央区南7条西3 (煉瓦造一軒家)

 時刻:17:30~19:30
 会費:3500円(飲み放題つき)

※イベント受付時にご精算をお済ませください。
※当日のキャンセルは後日会費を申し受けます。

準備の都合上、こちらは必ず事前のお申し込みをお願いします。
懇親会申し込みの締切は5月5日とさせて頂きます。
以降はキャンセル待ちとなりますがお問い合わせください。
参加希望の方はイベントお申し込みのメールに ④懇親会参加 とお書き添えください。

   
itakhaiku@gmail.com

ちょっとでも俳句に興味ある方、今まで句会などに行ったことのない方も、大歓迎です!
軽~い気持ちで、ぜひご参加ください♪
句会ご見学のみのお申込みもお受けします(参加料は頂戴します)。

北海道立文学館へのアクセス
※地下鉄南北線「中島公園」駅(出口3番)下車徒歩6分
※北海道立文学館最寄の「中島公園」駅3番出口をご利用の際には
①真駒内駅方面行き電車にお乗りの方は進行方向先頭部の車両
②麻生駅方面行き電車にお 乗りの方は進行方向最後尾の車両に
お乗りいただくと便利です。




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2014年4月1日火曜日

『おヨネが読む』 ~第12回の句会から~ (最終回・掲句一覧)


『 おヨネが読む 』 (最終回)

 ~第12回の句会から~

栗山 麻衣



 春泥をひらりと飛んでピアスの子


 

 これは俳句的。極めて俳句的だと思いマス。ピアスを描写することで、デートへ出かけるルンルン気分(死語)の女の子の姿が浮かんでくる。焦点を絞り、他を省略する御手本のような句だと思いました。勉強になるワ―。以前にテレビ番組「俳句王国」で、福岡県の福永青水さんという俳人が「光りたる春泥またぎこす逢瀬」という句を出していらっしゃったことを思い出しました。すてきな句だなあと思っていたのですが、掲句はその姉妹編って感じ。尊敬しマス。


 桜守受継ぐ爪のやや四角

 
 こちらも小さな部分に焦点を当てたことで、そこにはらんだドラマを感じさせる句。先祖代々桜守という家系なのでしょうか。ワタクシの頭の中には主演・高倉健。ジブン、不器用なもんで…っつう桜守の風情、その背景で見事に咲き誇っている桜、彼を待つちょっと訳ありの恋人(←それは読み過ぎ)の絵が浮かんでいます。


 朝刊に跳ねる文字あり花ミモザ

 
 何かいいニュースでもあったかな。こぼれるようなミモザの花と、目に飛び込んでくる文字のぽろぽろ感(うまく言えんっ←逆切れ)がオーバーラップします。なんだかキナ臭いことが多い世の中ですが、こんなふうに朝を迎えられたらいいなあ。


 ものの芽の先つぽ明日を疑はず

 
 芽吹きの春。草や木の新芽は「明日を疑っていないのだ」と擬人化することで、その生命力をずばりと捉えています。ものの芽ということで、植物の先端を浮かべるので「先つぽ」という言葉が必要かどうかは判断が分かれるところかもしれません。

 

 ふう。というわけで十六句。勝手な解釈と稚拙な文章で、かさねがさね申し訳ありませぬ。どれがどなたの句かはこれから拝見させていただきマス。お付き合いいただき、どうもありがとうございました!


  (了)

 
『おヨネが読む』をご高覧頂きありがとうございました。
文中掲句について一覧をまとめましたのでご覧くださいませ。


(その1)


種々の箱にみな蓋雛納む        松王 かをり
雛納む息の通へる和紙一枚       半田   稜
流氷来港酒場やロシア帽        藤原  文珍
カフスボタンあるいは寒きくすりゆび  瀬戸 優理子
 
(その2)

バス停の風の手ざはり水温む      五十嵐 秀彦
恋の猫尾といふ旗を振り立てて     松王 かをり
Y字路にならぶ子猫のよい姿勢     後藤  グミ
歯応えを確かめてゆく木の芽和え    辻   一郎
  
(その3)

空は濡れ樹幹をのぼる春の水      古川 かず江
かたくりの花おそらくは人嫌ひ     内平 あとり
ユーラシアプレートの上つばくらめ   橋本  喜夫
歓声の消えてアリーナ冴返る      月岡  道晴
 
(最終回)
春泥をひらりと飛んでピアスの子    草刈 勢以子
桜守受継ぐ爪のやや四角        山田 美和子
朝刊に跳ねる文字あり花ミモザ     高畠  葉子
ものの芽の先つぽ明日を疑はず     小笠原かほる


 
ご高覧ありがとうございました。コメントなどご遠慮なくお寄せください。