2014年4月9日水曜日

『 俳人 吉田類の句を読む 』 ~三品 吏紀~




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酒場詩人・吉田類の旅と酒場俳句
・・・おっと?
またまた出現、私りっきー。

いつもはイベント後に高校生達の様子をちょくちょく報告してましたが、今回はちょっと別件で登場です。
先日、私りっきーの住む街に吉田類さんという方が、講演会を行うためにいらっしゃいました。ご存知ですか?類さん。

吉田類さんはBS-TBSで放映してる「吉田類の酒場放浪記」という番組に出演されてるライター・イラストレーターで、老若男女関係なく大人気の方です。
ふらりふらりと色んな街の酒場に現れては、ただただ飲み・食い・地元の方々と交流する。そして見事に酔っ払うという(笑)素敵な番組です。
ハンチング帽をかぶった独特の風貌なので、街中を歩いていると直ぐに「類さーん!!」と囲まれてしまうそうです(笑)それほど人気のあるお方。

そしてこの類さん、もう一つの顔があります。そう、俳人としての顔。
番組の最後にいつも一句詠んで酒場を去る類さんですが、それがきっかけでワタクシも俳句に興味を持つようになったわけです。
いつもは番組見ながら晩酌して一緒に「エヘヘ☆」とか酔っ払いながら読んでた類さんの俳句ですが、今回はちょっと腰をすえて、「俳人 吉田類」の句を読んでみようかなと思い立ったわけです。


 浸蝕の荒々しきが牡蠣の味

・牡蠣は幼生から食用の大きさになるまで数年の時間を必要とする。ホタテの貝殻に付着してそこから全く動かずに成長していくのだが、海の中では豊潤な恵みと、時には荒々しく怒りの様な波のうねりもその身に受ける牡蠣。イワガキの殻なんか見ると、まさしく岩が海に浸蝕されたようなゴツゴツとした触感だ。
だがその身を口に入れた時、海の全てを凝縮したかのような生命の味が、舌一杯に広がる。焼き牡蠣、牡蠣酢、カキフライ…
海の生命力溢れる荒々しい味こそが、牡蠣の真骨頂というのだろう。

 おすすめは花わさび侘寂利す

・花わさびに侘寂とは、これは半分は洒落ということなのだろうか(笑)
花わさびは軽く塩もみをして放置すると、余分な灰汁がにじみ出てくる。それを洗い流してから茹でるなり醤油漬けにするなりなど、わさび特有のツーンとした爽やかな辛さを楽しむことができる。
きっと類さんもこう言いたかったのだろう。旬の物はあれこれ手を加えず、質素にあしらうことが本当の味を楽しめるのだ。まさに侘寂だと。

 竜天に登りて松の鱗かな

・竜というのは、西洋と東洋ではその存在がまるで正反対に位置されている。
ヨーロッパ諸国の神話で竜は邪悪な存在、神や英雄の仇とされてることが多く、変わってアジア諸国では竜は神として崇められてる事が多い。身近な所でいくと水神様なんかが竜の姿をとって崇められていると思う。
天に向かってそびえる一本の松、下五の「松の鱗」がより竜を想起させる。竜鱗が脈を打つような、そんな姿を想像してしまう措辞である。
天に登った竜は下界に何をもたらすのか?恵みの雨かそれとも試練の日照りか。天に登るというところで神性を強調しているように思う。


・・・今回は番組で詠まれた句を三句だけランダムに選んで読んでみましたが、類さんの句から感じた印象として、「自由」という言葉がまず浮かびました。
旅人としての気質、若い頃からの放浪癖がある故なのか、現代俳句・伝統俳句、そういうものに囚われずに己が儘自由に詠む。自由に言葉で遊ぶ、そんな印象を受けました。
そして自由だからこそ、俳句を一切知らない人でも何か心に響くような、そんな言葉を紡ぐ事ができるのではないかと。
最近では「旅と酒場俳句」というご自身の作品を集めた本も発売されたとか。類さんの俳句観を知る上でかなり参考になりそうな本みたいですね。残念ながら私はまだ入手しておりませんが、手に入った際にはよりディープに類さんの俳句ワールドに触れてみたいと思います。

ではまたの機会に。


☆三品吏紀(みしな・りき 俳句集団【itak】幹事 北舟句会)

 

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