『 おヨネが読む 』 (最終回)
~第12回の句会から~
栗山 麻衣
春泥をひらりと飛んでピアスの子
これは俳句的。極めて俳句的だと思いマス。ピアスを描写することで、デートへ出かけるルンルン気分(死語)の女の子の姿が浮かんでくる。焦点を絞り、他を省略する御手本のような句だと思いました。勉強になるワ―。以前にテレビ番組「俳句王国」で、福岡県の福永青水さんという俳人が「光りたる春泥またぎこす逢瀬」という句を出していらっしゃったことを思い出しました。すてきな句だなあと思っていたのですが、掲句はその姉妹編って感じ。尊敬しマス。
桜守受継ぐ爪のやや四角
こちらも小さな部分に焦点を当てたことで、そこにはらんだドラマを感じさせる句。先祖代々桜守という家系なのでしょうか。ワタクシの頭の中には主演・高倉健。ジブン、不器用なもんで…っつう桜守の風情、その背景で見事に咲き誇っている桜、彼を待つちょっと訳ありの恋人(←それは読み過ぎ)の絵が浮かんでいます。
朝刊に跳ねる文字あり花ミモザ
何かいいニュースでもあったかな。こぼれるようなミモザの花と、目に飛び込んでくる文字のぽろぽろ感(うまく言えんっ←逆切れ)がオーバーラップします。なんだかキナ臭いことが多い世の中ですが、こんなふうに朝を迎えられたらいいなあ。
ものの芽の先つぽ明日を疑はず
芽吹きの春。草や木の新芽は「明日を疑っていないのだ」と擬人化することで、その生命力をずばりと捉えています。ものの芽ということで、植物の先端を浮かべるので「先つぽ」という言葉が必要かどうかは判断が分かれるところかもしれません。
ふう。というわけで十六句。勝手な解釈と稚拙な文章で、かさねがさね申し訳ありませぬ。どれがどなたの句かはこれから拝見させていただきマス。お付き合いいただき、どうもありがとうございました!
(了)
『おヨネが読む』をご高覧頂きありがとうございました。
文中掲句について一覧をまとめましたのでご覧くださいませ。
(その1)
種々の箱にみな蓋雛納む 松王 かをり
雛納む息の通へる和紙一枚 半田 稜
流氷来港酒場やロシア帽 藤原 文珍
カフスボタンあるいは寒きくすりゆび 瀬戸 優理子
(その2)
流氷来港酒場やロシア帽 藤原 文珍
カフスボタンあるいは寒きくすりゆび 瀬戸 優理子
バス停の風の手ざはり水温む 五十嵐 秀彦
恋の猫尾といふ旗を振り立てて 松王 かをり
Y字路にならぶ子猫のよい姿勢 後藤 グミ
歯応えを確かめてゆく木の芽和え 辻 一郎
(その3)
空は濡れ樹幹をのぼる春の水 古川 かず江
かたくりの花おそらくは人嫌ひ 内平 あとり
ユーラシアプレートの上つばくらめ 橋本 喜夫
歓声の消えてアリーナ冴返る 月岡 道晴
(最終回)
春泥をひらりと飛んでピアスの子 草刈 勢以子空は濡れ樹幹をのぼる春の水 古川 かず江
かたくりの花おそらくは人嫌ひ 内平 あとり
ユーラシアプレートの上つばくらめ 橋本 喜夫
歓声の消えてアリーナ冴返る 月岡 道晴
(最終回)
桜守受継ぐ爪のやや四角 山田 美和子
朝刊に跳ねる文字あり花ミモザ 高畠 葉子
ものの芽の先つぽ明日を疑はず 小笠原かほる
朝刊に跳ねる文字あり花ミモザ 高畠 葉子
ものの芽の先つぽ明日を疑はず 小笠原かほる
ご高覧ありがとうございました。コメントなどご遠慮なくお寄せください。
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