2017年2月14日火曜日

俳句集団【itak】第29回句会評⑤ (橋本喜夫)


俳句集団【itak】第29回句会評⑤

  2017年1月14日
 
橋本喜夫(雪華、銀化)
 
 
 
 青年団員みな孫ありて出初式    青山酔鳴

笑ってしまった。その通りであるし、「出初式」の句としてでき過ぎ感があり。とても雄弁な句であるのでやはり上八の字余りが気になってくる。これをどうするか。青年団とすれば出初式にでているひとたちと完璧に説明可能かどうか。問題がないのであればやはり青年団にした方がいいのか、  自分の句でないのだが、悩むところだ。
 
 
 マイルスのジャズ雷管に冬銀河    吉田 類

私は秀彦さんと違いジャズは全く知らない。ただしマイルス・デイビズの名前だけは知っていた。どうやらジャズの帝王と言われていたらしい。この句は「マイルスのジャズ」でスリットが入り「雷管に冬銀河」の二物衝撃の句である。彼のジャズを知っているひとは 雷管の爆発性 危険性と爆発力、アルミ的な金属製、そして冬銀河の冷たい巨大なものとの取り合わせに何かを感じとることができるのであろう。まったくジャズを知らない私でさえ「雷管・冬銀河」との取り合わせに魅かれたので 音調としても共鳴しているのかもしれない。「万有引力あり馬鈴薯にくぼみあり」と同じように・・・。
 
 
 雪催目抜き通りで躓いて        山崎佳音

中七の「目抜き通り」が良い。なかなか言葉のセンスがよいのだ。そして中七以下の措辞も俳句になっている。あとは季語との取り合わせ、なのであろう。低く雲が垂れ込め今にも雪が降りだしそうな季語の「雪催」と、町の中でもっとも繁盛している「繁華街で躓いてしまった」作者の気恥ずかしさや、ばつの悪さという感覚が、共鳴しているかどうかがキーポイントである。そこが可もなく不可もなく、と言ったところではなかろうか。


 おでん食う入れ歯や母と大暴れ    福井たんぽぽ

一読 何があったの?と聞きたくなるような不穏さもある。おそらく年老いた母がおでんを食うときに入れ歯がはずれたとか~で、すったもんだがあったのだと推測する。そうなるとやはりその顛末を俳句にしようとすると、「大暴れ」が余計なのだと思う。川柳ならば必要だと思う。作者の意図に沿ってないかもしれないが、たとえば「おでん食う母の入れ歯や旅に出る」とか座五を「いまいづこ」だとか「鍋に入る」とか、入れ歯がどうなったかを具体的に示した方がいいと思う。
 
 メルカトール図法でひらく初夢     太田量波


メルカトール図法などと懐かしい言葉がでてきた。経線と緯線が直角になる見慣れた地図の方法で、二点間の距離、角度が正確なので?航海図として使われる。「初夢」という三次元あるいは四次元のものを二次元で開くにはメルカトール図法で開けるのでは、という句意である。面白い発想だと思うし、破調感も気にならないが、やはり「初夢」と四音で終止するので韻文としては違和感が残るかもしれない。



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