『 やぶくすしハッシーが読む 』 (その1)
~第24回の句会から~
橋 本 喜 夫
ろう梅のひとつふたつはイミテーション 鍛冶 美波
季語そのままじゃん と言うなかれ。蝋梅の嘘くさい光沢、蝋細工のような質感、ひとつふたつは の中七がうまいですぞ。「イミテーション」なんか昭和の匂いがする言葉。蝋梅の句を一応チェックしてみたが、ここまでどストライクにこの質感を言いとめた句はないようだ。
三月の木さてと翼を開こうか 信藤 詔子
「三月の木」というもってきかたが、坪内稔典チックではあるが。「さてと」が利いている。蕾の膨らみ、蕾の開花を翼として隠喩にしたのも良好と思う。
春一番ガソリン臭き路地に着く 五十嵐秀彦
春の明るい気分、すこし華やいだ気分をガソリン臭さに転じたのは、好き嫌いがあると思うが私は捻れた感覚が大好きです。風の季語なので、「吹く」と安易にいかないで「着く」としたのも良好と思う。
こぼれ餌に針先ほどの芽のひかり 草刈勢以子
中七までいっぱいに使って「木の芽のひかり」を比喩している。釣をしたひとならわかるが、餌がこぼれたあとの、すこしだけ覗く針先を比喩に用いたのはなかなか写生的でもある。
これによって「ひかり=針先」の予定調和感を薄める効果が出ている。
(その2に続く)
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