2015年12月2日水曜日

俳句集団【itak】第22回句会評⑤ (橋本喜夫)


俳句集団【itak】第22回句会評

  
2015年11月14日


橋本喜夫(雪華、銀化)
 
 
 マシュマロに歯並び刺さる雪夜かな   今井  心

 わたしも最後まで選句候補に残った句だが、最後に落とした。なぜか?「マシュマロに歯並び刺さる」までとても面白い。真白いやわらかいマシュマロに歯茎が刺さった景がありありと想像できてシュールである。最後の「雪夜かな」の落とし込みが、なんとなく白だけのアナロジーで予定調和かなと思ったから。どうせシュールで面白い句なのだから、「マシュマロに歯並びささる雪をんな」と完全に虚構に走るという手もあるだろう。


 割りきれぬ数字の憂さや青蜜柑     瀬戸優理子

 家族3人なら3で割り切れぬ数の果物があり、それを家族で不均等に分配する。そんなときは作者は日常でほんのすこしだけ憂鬱を感じたというのだ。どうでもいいことを「憂さ」と言ったことで句になった。食べ物を切り分けるとき「数が合わない」とか「割り切れぬ数がある」という句は他にもあるが、この句のコアは「憂さ」とまで言い切ったことである。
 「青蜜柑」の青が「憂さ」と共鳴している。この「憂さ」という感情や精神状態をあらわに表現しない方が俳句は上質と教える結社もあるが、そんな方にとってはこの「憂さ」が邪魔に感じられるかもしれないね。


 クリスマスツリーへ斧をふりかぶる    村上 海斗

 この句は佳い。「十三日の金曜日」のような景だ。きらきらした倖せともいえる、クリスマスツリーを凝視して、振り返れば「斧をふりかぶるジェイソン」がいるのだ。怖い句になってゆく。そんなつもりで作ったわけでないかもしれないが、「斧をふりかぶる」という非日常性がとてもリアルである。


 梟のひと鳴き星を巡らせて         栗山 麻衣

 この句も大きい。星を詠うのは大きすぎて空疎になりがちというのは、前にも述べたが、この句は梟の鳴き声が地球を一回りするという句意。これもさっきのおかわり氏のときに述べた後者のパターンに属する。地球や星という巨大なものとの取り合わせという観点でいうと、「ふくろう」の選択は新しい。梟のひと鳴き でかるく切れて、そのつぎの「星を巡らせて」の措辞がとても秀逸で詩的。天文上回るという大きさもあるが、年月が巡るという時間のひろがりもある。


(つづく)


 

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