2015年10月18日日曜日

『ゆっきーが読む』~第21回の句会から~ (最終回)


『 ゆっきーが読む 』 (最終回)
 
~第21回の句会から~

安 藤 由 起
 
 
 キャタピラの跡八月の濡れた砂    藤原 文珍

句をつくるとき、「説明しない」ように気を付けている。説明の句ほどつまらないものはない。が、気を抜くとついやってしまう。一切の説明を排したことで生まれる、無機質さの中の生々しい気配に心惹かれる。


 影のないおとこ四五人風の秋     信藤 詔子

影のない男とは、故人のことだろうか。そして、秋の風ではなく、風の秋。風の吹きすさぶ中で、男たちは何をしているというのか。句意は正直よく掴めないが、俳句という短い詩形ゆえの広がりが、読み手の想像力をかきたてる。
 
 
 唸り出すロボット掃除機日短か    遠藤ゆき子

使ったことはないが、決まった時間になると勝手に掃除を始め、終わると自分で定位置に戻っていくらしい。健気に働く姿がかわいいと人気だ。日も傾きかけた頃、突如として開始された掃除に驚く様子が伝わってくる。


 パンストのパンより秋の深まりぬ   青山 酔鳴
 
「〇〇から△△が始まる」系の類想・類句は多そうだが、「パン」はおそらく初めてじゃないだろうか。生身の人間の生態を句に落とし込む、独特のウィットが見事。今年も「パン」から秋が深まってきた。
 
 
(了)

 

0 件のコメント:

コメントを投稿