2015年10月14日水曜日

『ゆっきーが読む』~第21回の句会から~ (その1)


『 ゆっきーが読む 』 (その1)
 
~第21回の句会から~

安 藤 由 起
 

日一日と昼が短くなる秋は、なんだか「暗い句」が多いなぁ~。投句一覧を眺めているうちに、そんな感想を持ちました。陰気な句が好きな安藤が気になる10句を選びました。
 
 
 古書店の奥に河童の棲むところ   ふじもりよしと
 

河童ってどこにいるのだろう。かっぱ寿司の地下厨房と定山渓温泉(※カッパがシンボル)には絶対いるとして、街中なら古本屋が断然ピッタリくる。河童と古本屋。やたらと親和性を感じてしまうのは、世間から隔絶されてひっそり棲息する様が似ているからか、それともカッパ似の店主が多いからか。



 右の目が痙攣していた菊人形   福井たんぽぽ

ホラー小説家・倉阪鬼一郎の「怖い俳句」(幻冬舎新書)を読んだ。「貌が棲む芒の中の捨て鏡」(中村苑子)など、芭蕉から現代に至るまで、さまざまな「怖い句」を拾い集めた力作だが、掲句もそれに匹敵するレベルだろう。エッジの効いたシュールな句を得意とする作者。脳内で映像化された菊人形の顔がまことに怖い。


 もつれずに風わたらせる秋桜    大槻 独舟

コスモスの茎はよくできている。細い割に丈夫で、しなやか。素手ではうまく手折れない。太いのにすぐヘタるガーベラの茎とは真逆だ。そんなコスモスの群生が風に吹かれる様を「もつれずに」と詠んだ。簡単そうな表現に見えるけど、普通には決して出ない。繊細な観察眼をお手本にしたい。

 
 
(その2につづく)

 

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