2014年3月11日火曜日

俳句集団【itak】第12回イベントを終えて

 
 
「なんと!古文はコスプレだったのか!」
 
俳句集団【itak】第12回イベントを終えて
 
五十嵐 秀彦
 



 
 
当日の朝、私は昨年の3月イベントのことを思い出していました。
佐々木美智子さんが伊豆大島から来てくださって、60年代~70年代の新宿ゴールデン街についてお話してくれた回のことです。
 
あの時、北海道は猛吹雪になって、はたしてみんな会場までたどり着けるのだろうかと不安でした。
今年もイベント予定日の前々日あたりから天候が荒れ気味で、あ~今年もか、と思ったのですが、幸い天気は持ち直してくれました。
 
今回は予約の段階から出足が好調で、60名に迫る勢い。やはりふたを開けてみると講演会64名、句会58名という会場のキャパ、運営スタッフのキャパ、双方めいっぱいという盛会となりました。
 
第1部は、國學院大學北海道短期大学部准教授で歌人の月岡道晴さんの講演会『短詩型における「文語」と「口語」~信仰としての二分類~』。
さすが日頃教壇に立っている人らしく、よどみなくそして説得力のある論理の展開で、聴くものを深く納得させてくれました。
私も以前から疑問に感じていたことのいくつかを月岡さんの講演から解決できたような気がしました。
 
俳句という伝統短詩は、伝統詩ゆえにあたかも宿命のように詩型に関するこだわりをひきずるものです。
 
特に、現代かなと旧かな、口語と文語、現代文と古文、この三つの対照的な表現方式はしばしば混同され、それでいて人によってはあたかも絶対的規範となってしまい、そこから「誤用」という指摘が導きだされる事態が起きがちです。
 
上記の三つの対立をさらに整理すると、かな遣いと文法の問題となるわけですが、かな遣いは、比較的問題が少ないように思います。
これは単純に表記のルールであり、それに従えばよいからです。ただ、そこにも落とし穴はあって、江戸時代の人が旧かな遣いを今の俳人ほど厳密に守っていたかといえば、それは否定的な事例を多数あげることができるでしょう。
そして、文法にいたってはことは一層深刻な混乱を呈しています。
 
だからこそ、月岡さんの、「正しい文語での詠作など存在しない」という指摘には眼を覚まさせられるものがありました。
 
私たちが古文文法に従っていると思っているものは、「古文のコスプレ」(偽古文)と言うべきものだということ。
 
それを認識するところから、実作者としては自分が詠んでいるものを「正しい古文」だと思わず、偽古文であることを知った上で、それを選択すべきなのだろうと、今回の講演を聴いて考えるのでした。
 
つぎからつぎへとこれまで心に引っ掛かっていた謎が解けていくようで、大変面白い講演だったと思います。
近いうちに、本ブログ上に抄録が掲載されるだろうから、ぜひそれを読んでください。
 
 
第1部と第2部の間の休憩時間に、今回は文芸書の無料頒布会を実施しました。
 



 
これは某有名俳人(少々差し障りがあるので実名は明かしません)のご厚意で【itak】にお送りいただいた300冊以上の文芸書のうち170冊を、第1回として無料で参加者のみなさまにお配りする企画。
大変好評で、その大半は捌けました。
次回5月イベントでもほぼ同数あるいはそれ以上のものを無料で配る予定です。
500円の参加費だけで、内容の濃い講演が聴けて、本もタダで手に入るという、こんなお得なイベントもありませんね!
 
第2部の句会も58名の大句会。
 
もちろん限られた時間で選句の講評までするわけだから、多少句会としては薄い内容になるのは避けられないところはあるものの、それでも若い世代からベテランまで、伝統系から現俳系まで、実に多様な句に出会えて楽しい内容でした。
高校生たちの若々しい俳句のみならず、小学生の俳句まで登場するところは、【itak】の面目躍如です。
また、【itak】に参加している高校生が卒業し、進学や就職という新生活を歩み出そうとしていて、今回はそんな卒業生がスーツを着て参加してくれるという、なんともうれしくなる光景も見ることができました。
社会人になっても【itak】に参加してくれるとのこと、今後に繋がる頼もしい動きと感じた。大いに期待したいものです。 
 
懇親会にも多数参加してくれて、句会には間に合わなかったものの、ホトトギスの方々の懇親会合流もあり、交流の場がさらに広がりました。
 



 
今後も変わらず、誰もがワンコインで自由に参加できる俳句イベントを続けていこうと思います。今回参加できなかった方々も次回にはぜひご参加を。お待ちしております。
 
 
 
※次回は5月10日(土)13:00から、北海道立文学館・地下講堂にて開催の予定となっております。第一部は読(詠)まずに死ねるか!~短詩型文芸の可能性~題して、当会幹事・五十嵐秀彦&山田航による【itak】旗揚二周年記念トークショーを予定しております。俳人のみならず詩人・歌人のみなさんも、そうでないみなさんも、どうぞお誘い合わせのうえ、イベント・句会にご参加ください。


懇親会は原則としてイベント参加者の交流のためにご用意しております。どうぞ当日のご感想、俳句のことなどをたくさんお聞かせくださいませ(事務局)。




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