『きっこりんが読む』
(その3)
(その3)
~第3回の俳句から~
3回目は、純粋に気になった句を選んでみました。
朝顔の紺に夜明けの染み出しぬ
セミほどではないけれど、朝顔にもどこか儚さが漂います。
サナギから蝶が脱皮する時のように、朝顔から夜明けが染み出る瞬間は、まるで生命の絶頂期のよう。その鮮やかに目を凝らし、息をのみそうです。生命感だけでなく、色彩感にもあふれています。
木歩忌や家の奧より日向見て
偶然にも木歩のことが気になり、句集や文集を読んでいた折でもあったので、「木歩忌」とあり驚きました。心が折れるであろう凄絶な、短い生涯のなかで、俳句だけが彼のよりどころでした。下半身が不自由で動くこともままならなかった彼の境遇を、「家の奧から日向を見る」という何気ない行為の中に見る・・・単純なようでいて、とても深みを感じました。
秋の空より蒼でした蒙古斑
「蒙古斑」といえば、櫂未知子さんの第二句集のタイトルにもなった「いとしきは枯野に残る蒙古斑」を思い起こします。ぼく自身には多分、もともと蒙古斑はなかったと思うのですが、子どものうちに自然と消えてしまうようです。秋の空より蒼かった蒙古斑は、お子さんの、なのでしょうか。消えたので、過去形なのでしょう。でも、きっと、いつまでも忘れられない「蒼」。
アーケード野良猫だけの良夜かな
アーケード、好きです。昔は賑わったであろう街並みが、今はちょっと鄙びた感じが、古いもの好きの心をくすぐるのです。酔っ払いが往来したり、ギターを抱えた若者が自己主張するのを終えたころからが、野良猫くんたちだけの時間。誰にも邪魔されず、雨にぬれることもなく、徘徊するもよし、眠るもよし。
いつまでも、アーケードがありますように。
☆恵本俊文(えもと・としふみ 俳人 北舟句会・迅雷句会 木古内町在住)
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俳句集団【itak】事務局です。
『きっこりんが読む』はこれにて終了となります。
ご高覧頂きありがとうござました。
次回更新ではお待ちかねのトークショー抄録
『俳句って、面白い!』を、パネラーごとに公開いたします。
お楽しみに!
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