2016年6月7日火曜日

俳句集団【itak】第25回句会評① (橋本喜夫)


俳句集団【itak】第25回句会評①

  2016年5月14日
 
橋本喜夫(雪華、銀化)
 
 
 ついに本会も5年目突入。50人以上があつまり盛会であった。私の好きな植歌さんが転勤でいなくなったのが少し寂しいですが、元気に続けてゆきましょう。イベントでの松長さんの青鷺の話。とてもよかったし、その情熱が静かな口調であるだけによけいに伝わった。個人的に「野鳥の会」はこころよく思っていなかったが、野鳥を見に行くひとには優しく接しようと思った。さてさて早く終わらせて楽になりたい。


 めまとひや水無川にゐる獣       藤原文珍

まず「めまとひ」の季語の選択の良さがある。それと中七以下の謎がある。ひとつは素直に受け止めて水無川という固有名詞の川に獣がゐると捉えると、どんな獣なのか?という読者への謎がある。水無川をみなしがわと同じと理解すれば天の川のことであるから、遠くの星に棲む獣を詠んだともとれる。いま作者の目の前をとぶちっぽけな生き物(めまとい)と得体のしれない獣との取り合わせともとれる。ただみずなしがわと読ませてしまっているので、せっかくの大きな読みがやりずらい。水無川をみなしがわと読ませて一音助詞を入れてもいいのでは。たとえば 水無川にもゐる獣 とか そうするとダブルミーニングになってもっと面白い句になると思うのだが。


 たんぽぽといますいろいろありました      酒井おかわり

この手の話し言葉とくにキャッチーな措辞「いろいろありました」があると句会では人気がでる。しかしそれだけでは からすべり に終わる危険もある。この句の秀逸なのは2点。ひとつは なのはな とか あじさい ではなくて たんぽぽ を選択したこと。もうひとつは います という普通なら嫌われる擬人的措辞。この2点がうまく相補しあって読者にはそれぞれ想像する余白が生まれたように思う。とりつくしまのない余白はこまるのだが、たんぽぽ(この句会ではこんな名の人もいます)という措辞も読者にミスリードを誘うあざといつくりになっている。


 アナログの溝の深さや青嵐          頑黒和尚

まずはアナログレコードも溝を思わせ、アナログ派、デジタル派との間の溝を思わせ、重層的な読みができるつくりになっている。垂直方向のベクトルである深さ(溝)と対比して水平方向のベクトルの青嵐を取り合わせたのもベストではないかもしれないがベターな選択であると思う。


 黄金週間町内を一巡り       古川かず江

ゴールデンウイークをものうく、つまらなく過ごしたという句はたくさんあるが、この句は決してネガテイブではなく、笑い飛ばす感じで一巡りしたのだ。あたかも1週間かけて町内を一回りしたともとれ、世界一周なみにゴージャスな黄金週間ではないかとミスリードさせる面白さがある。


(つづく)


 

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