俳句集団【itak】第24回イベントを終えて
『 届け”反骨”の風! 』
~岡大介。彼のスタンスは、俳句だ。~
五十嵐秀彦
そう思わず叫びたくなるほどでした。
彼のスタンスは、俳句だ。
そうおっちょこちょいな飛躍もしたくなるほどのパフォーマンスを、カンカラ三線の岡大介さんは演じてくれました。
俳句集団【itak】第24回イベントの第1部はカンカラ三線・演歌師 岡大介さんの「届け演歌の風! 岡大介カンカラ三線ライブ」。この回をもって私たち【itak】の活動は丸4年となりました。
特に4周年企画とうたうわけではありませんでしたが、やはり神様は【itak】に微笑んでくれたのです。ここに来て縁が縁を呼び、スペシャルゲストが来道してくれました。
カンカラ三線ってなんだ?平成の演歌師ってなんだ?北島三郎とか氷川きよしみたいなものか?そう思った人だって少なくなかったと思うのですが、おっかなびっくり蓋を開けてみれば77名という、昨年の夏井いつきさん特別企画を別にすれば過去最多の来場者数となったのです。
もちろん数が重要なのではなく、彼が【itak】のイベントで唄うというところに意味があったのですが、でもひとりでも多くの人に聴いてもらいたい、聴いてもらわなければならないほど意味がある、という思いでおりました。
ちょっと個人的なことを書きますが、私は10年ほど前から大衆芸能と俳句との関係に注目してきました。そのきっかけは色々あって、中でも直接的なきっかけとなったのは一遍上人に興味をもち調べているときに出会った網野善彦氏の諸作にありました。
中世の階級社会からはじき出された人々が「無縁」の存在となって芸能に生きた。彼らの存在なくして日本の日本と呼ばれるべき文化は創出されなかったという歴史の事実を知ったこと、そして俳諧師と呼ばれた一群の職業俳人たちのほとんどがそうした無縁の世界に「聖別」されていたということ、それらに気づいたとき芭蕉の旅の意味も、一茶が故郷に定住するために示した驚くべき執着の意味も、読み解けると感じたのです。
俳諧も華道も茶道も能や歌舞伎も、瞽女歌も津軽三味線も、みんな名も無き下層民によって担われてきたことを、「お上(おかみ)」の歴史は無視し続けてきました。
演歌も明治大正期の民衆の反骨精神の表れであったことを忘れ商業主義に陥ってしまっている現代社会で、ひとり岡大介さんが本当の演歌を復活させているのです。
それは政治的イデオロギーという枠の中に納まるものではありません。岡さんはこの日も「ぼくは左翼でも右翼でもない。ただ唄いたいだけです」とおっしゃっていました。
名も無き民衆の辛さや悲しさは、今日においても100年前と本質的にはなにも変わっていません。彼が唄う添田啞蟬坊の数々の詞は今も色あせていないどころか、どんどんあの時代に戻っているのではないか、そう思わせるものがありました。
辛さ悲しさをいかにもそのように唄うのではなく、一見明るくシャレのめして、堂々と唄う。そこには100年どころか1000年2000年にわたるこの国の大衆の歌があります。
私たちの選んだ俳句という文芸も、万葉の時代から連歌・俳諧とつなぎ、近代以降現代の俳句となっているのであり、それは「お上」のでっちあげたきれいごと芸術ではなく、どこまでいっても無名の庶民の文芸であること、それは岡大介さんの歌の精神となんら変わらないということを、ひとりでも多くの人に知っていただきたかったのです。
その目的が達成できたかどうかは分かりません。
でも、この日集まった77人の人々は、彼の歌に間違いなく心を揺さぶられたはずです。
そして道新文化部記者であり【itak】幹事である大原智也さんが作成した演歌と啞蟬坊に関するスライドも実に分かりやすかったのではないでしょうか。
岡さんがあこがれる啞蟬坊は演歌師であると同時に俳人でもありました。
スライドでその句が紹介されたのもわが意を得るものでありました。
河豚食うて北を枕に寝たりけり 啞蟬坊
これは芭蕉の「あら何ともなきやきのふは過ぎてふくと汁」に通じる俳諧味あふれる句です。詳しくは、今後このホームページで抄録の形になると思いますので、そちらがUPされたときにお読みいただきたいと思います。
ただ抄録では岡さんの歌声までは伝わりません。彼は3枚のCDをリリースしています。
岡大介・小林寛明「かんからそんぐ 添田啞蟬坊・知道をうたう」
http://www.amazon.co.jp/dp/B0011ZOJ4Q
岡大介・小林寛明「かんからそんぐⅡ 詩人・有馬敲をうたう」
http://www.amazon.co.jp/dp/B0041RI1MC
岡大介「かんからそんぐⅢ 籠の鳥・鳥取春陽をうたう」
http://www.amazon.co.jp/dp/B00ZA6ZEMS
ぜひお買い求めの上、耳を傾けてください。
今回は第1部の岡大介ライブに77名、第2部の句会も69名という盛況ぶりでした。
ご参加くださった皆様にあらためてお礼申し上げます。ありがとうございました。
句会終了後の懇親会でも岡さんの熱唱が続き、今回も忘れられないイベントとなりました。
次回第25回イベントは5月14日(土)の午後1時から、いつもとかわらず道立文学館講堂で開催予定です。
企画は、北海道アオサギ研究会代表・松長克利さんの『めくるめくアオサギの世界』という講演です。
俳人としては聞き逃せないテーマではないでしょうか。
どうぞご期待ください。
北海道アオサギ研究会 http://www.greyheron.org/
0 件のコメント:
コメントを投稿