2015年4月3日金曜日

『やぶくすしハッシーが読む』 ~第18回の句会から~ (その4)



『 やぶくすしハッシーが読む 』 (その4)


 ~第18回の句会から~

橋本 喜夫 



 靴底の砂利また増える弥生かな    大原 智也

陰暦三月、北海道は雪もとけてアスファルトや土が久しぶりに見えて、冬靴のゴム底にちいさな砂利がはまりこむことはよくある。とてもいいところを詠んでいると思うが、きっとたくさんの点は集まらなかったのではないか。「また増える」に一工夫が必要と思う。
  
 消しゴムを折りし断面から春へ   五十嵐秀彦

消しゴムを素材にする俳句はよくあるが、おおげさに「断面」という措辞を採用しとところ、座五にすなおに五文字の季語を持ってこずに、「から春へ」としたところ。この2点の思い切りの良さと、俳句馴れしてないところが佳い。

 クロッカス祈る形に現るる      高畠 葉子

日本一花、植物が苦手な俳人である私でも知っているクロッカス、春と言えばやはりこれでしょう。俳人になる前は「かおるちゃん遅くなってごめんね」のイメージしかなかった。
確かに地に近くあらわれたときは手を合わせて祈るかたちに見える。祈る形で比喩する俳句は多いのであまり点は集まらないかもしれないが、あえてクロッカスで使用したのは成功であるし、「現るる」が微妙にうまい。


 木瓜の花昔遊びを忘れけり     深澤 春代

「ぼけ→忘れ」がすこし常套ではあるが、「昔遊び」を忘れたというのが佳い。たしかに缶けり、石蹴り、陣取り、ぱっち、ゴムとび、綾取り、おはじき などみな忘れられている。子供の遊びが様変わりしたことも述べているが、自分自身が童心を失ってしまったことも嘆いているのかもしれない。
  

(その5につづく)
 
 

0 件のコメント:

コメントを投稿