2014年12月13日土曜日

『おヨネが読む』 ~第16回の句会から~ (その3)



『 おヨネが読む 』 (その3)


 ~第16回の句会から~

栗山 麻衣

垂直の高きプライド鵙の贄        藤原 文珍

 垂直の高きという措辞が斬新。この言葉はプライドにも鵙の贄にもかかっていますが、寂しさ、孤独を感じさせます。速贄の状態をよく観察し、そこから受ける印象をさらに研ぎ澄ませた言葉にしたことで、読者にイメージを喚起させる作品になったんですね。なんちゃって俳人の名を欲しいままにしておりますワタクシ、鵙の速贄を実際に見たことが無く、実にお恥ずかしいのですが、ドラマ「MOZU」は欠かさず見ておりました。西島秀俊ナイス。と書いてたら、結婚しちゃったよ。ちっ。おめでとう。
 
 
新米を貰い大福五個返礼        柏田 末子
 
 
 ふくふくと豊かな気持ちにさせてくれる作品。返礼がなぜ大福なのか、なぜ五個なのかとか、まあ固いこと言わず。この際どうでもよろしい。きっと手元にあったのであろう。そして新米をくれた人が五人家族なのであろう。つうわけで、新米も大福も大地の恵み、大福という名前もいかにも徳のある感じ。楽しい物々交換のひとコマを切り取りました。
 
 
相席はムンクのモナリザ雪が降る   信藤 詔子
 
 
 爆笑。いやー、これ、好きだワ―。「ムンクのモナリザ」。何言ってるか分かんないよーと思ったヒト、正解。でも、いいの。ワタクシはルーブル美術館におわします彼女がムンクの叫びのように表情を変えている超現実の世界を思い浮かべました。

舞台は大衆食堂。「相席よろしいですか―」というおばちゃんの問いかけに浪人生である作者はうなずき、一人で来ていた年齢不詳の髪の長い女性の前に坐ります。よく見るとモナリザ。げ。ルーブル美術館にいるはずの二次元の彼女がなぜここに…と思う間もなく鍋焼きうどんが運ばれてきます。以下略。

業界的には読み過ぎてはいけないと言われますし、ぶっ飛びすぎると、俳句ではなく三題話のお題みたいになってしまう危険もありますが、俳句にはこうして頭を柔らかくしてくれる効用もあるのですね。
 
 
とりどりの葉色ふるはせ今朝の秋   松田 ナツ
 
 
 こりゃまた美しい句。今朝の冬って、なかなか雅やかな季語ですね。うっとり。立冬の空気の変わる一瞬をとらえています。色とりどりの葉を震わせるのではなく、震えているのは葉の色であるととらえたところが出色! さりげなくて一見地味ですが、色々と練られた御作品とお見受けいたしました。
 
 
(最終回へ続く)

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