2014年3月20日木曜日

「厳寒焼肉」体験と、北 光星さんの句 ~久才 透子~

 

「厳寒焼肉」体験と、北光星さんの句

~久才透子~
 

皆様、こんにちは。
俳句集団【itak】幹事の久才透子です。
今日は、立春はすぎたものの、まだまだ寒い北海道から、北見市の「厳寒焼肉」体験と、北 光星さんの句について触れたいと思います。


北光星さん(1923~2001年)は、北海道北見市出身の俳人。
「氷源帯」に入会後、「道」の主宰として活躍されました。


私は、三年前に北見市に引っ越してきました。

市内の公園にある句碑を見て、始めて北光星さんの存在を知りました。


 
 凍裂の樹が凍裂の叫び聴く   北 光星
 


北見市  野付牛公園に句碑があります。
この句がきっかけで、「凍裂」が冬の季語になりました。
凍裂というのは、気温が下がり木の中の水分が凍って、木が縦に裂ける現象をいいます。厳寒の地では、木が裂けるほど寒い日があるのです。
それほど気温が下がるオホーツク地方。
そんな中、北見市では、「厳寒焼肉というイベントを毎年二月に開催しています。今年は二月七日夜に開かれました。
北見市は、日本で最も寒いと言われる陸別町のほぼ隣に位置しています。そんな街で、マイナス20度近い冬の夜に、屋外で焼肉をするのです!
一年のうちの何ヶ月間もが雪に閉ざされる土地で、寒さを逆手にとって、面白がってやろうじゃないか!という気概を感じます(気概か?)。
といっても、その寒さはハンパじゃなく、口に入れるまでの短い間に、焼かれた肉は冷え、タレはシャーベット状 に。全くもって、酔狂なイベントです。
そこで、私の一句。



 焼肉や皆着ぶくれて星の下   透子


本心は、


 厳寒に外で焼肉なんて馬鹿   透子


すみません・・・。駄句も駄句ですね。


地元のご老人は、「昔は電線のスズメが凍ってポタポタ落ちてきたもんだあ~」 とおしゃってましたが、そんな大袈裟な話も本当かも・・・と思える、 涙や鼻水も凍るような厳寒焼肉体験でした。
北光星さんの句の中では、北海道の寒さを詠んだ句も多く見られます。


 氷まづ削られ板が削らるる

 鉋屑燃やせば歪む寒日輪

 


北さんが大工職人の頃の句です。
板を削るには、先に氷を削らなければならない。厳しい寒さの中での作業(ああ、厳寒焼肉の句を消去しようか迷っております)。私は、北さんの大工職人の頃の俳句に、とても魅力を感じます。



 鳥帰る渡り大工のわが上を   (沼田町に句碑)

 丁々と釿のひびき春が来る

 釘こぼす春日へうつかり口あけて


北国では、心底待ち遠しい春。
その気持ちが響きます。
働く喜びや誇りを感じ、こちらまで気持ちが晴れ晴れするのです。



 雪やまぬ夜は村人丸く寝る

 共に出て雪したたかな母の背よ


村人の大自然に逆らわず生きていく姿。その忍従の日々。
そして、同じ雪道を歩いていても、丸くかがんだ母の背に、雪は容赦なく積もるのです。


 


 打てば鳴る凍れ魚となりにけり

 巡礼に風も薄刃の二月かな


せっかく厳寒の地に引っ越してきても、私はなかなかその厳しさを俳句にできません。
そして、過去の北海道民の苛酷な生活を思う時、彼らにとって文学が、どれほど生きる力となっていたのだろうと思われます。 




 開拓や斧よ言霊よ遠郭公

 


厳寒焼肉に参加したくらいで、厳寒体験をした・・・とは大きな声では言えませぬ。ですが、降ってくるような星空の下、雪と夜空のくっきりとしたコントラストを見ていると、 俳句という短い詩型があってよかったと、つくづく思えたのでした。
北さんの句集を読んで、そして美しい冬の夜に、それをまっすぐに感じたのです。




☆久才透子(きゅうさい・とうこ 俳句集団【itak】幹事 北舟)

 

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