『 おヨネが読む 』 (その2)
~第12回の句会から~
栗山 麻衣
バス停の風の手ざはり水温む
何気ないけれども技ありの一句。地味といえば地味ですが、ワタクシ、こういう句、好きだワ―。春めくとともに冬とは違ってきた風の感触をとらえた感受性、風が暖かくなったと言わずに「水温む」という季語を取り合わせたことで、逆に読み手に深い現場感覚をもたらす表現力。難しい言葉はないし、さりげないけれども、ありふれているようでありふれていない素敵な作品でありマス。
恋の猫尾といふ旗を振り立てて
そっかー。猫さまたちがお尻にぴっと立ててるアレは、戦に向かう時の旗だったのでありマスね。恋猫の凄まじい声や態度を以前間近で見た個人的な感覚から言うと、ちょっとかわいらしすぎる気もしましたが、ランボーを五行とびこす恋猫(@寺山修司)もいるぐらいですから、とらえ方は人それぞれなのかもしれません。情景がよく浮かびます。
Y字路にならぶ子猫のよい姿勢
子猫のよい姿勢という表現のかわいらしさにもうメロメロ。なぜY字路なのかとか、なぜ並んでいるのかとか、並ぶって何匹ぐらいなのかとかとか疑問もあることにはありますが、まあいいや。勝手に段ボール入りの2、3匹を想像いたしました。これからどこに拾われていくのか、運命の岐路に立たされている子猫たち。そのイメージを象徴しているのがY字路なのでしょうか。
歯応えを確かめてゆく木の芽和え
しみじみとした喜びにあふれている素直な作品。ひねりは無いかもしれませんが、俳句を人生の伴侶としている作者の誠実な姿勢を感じます。確かめているのは、木の芽和えだけではなく、これまでの人生やこれからへかける思いでもあるのでしょう。こんなふうに生きていきたいものだなあと思わせられました。
(つづく)
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