2019年2月14日木曜日

第41回イベント抄録 『アート・クラフトから見た俳句』




 第41回イベント『アート・クラフトからみた俳句』が1月19日に開かれ、箒職人の吉田慎司さん(34)に講演をしていただきました。
 吉田さんは1984年、東京都練馬区出身。武蔵野美術大学彫刻学科卒。札幌市中央区南1西15にある〈ほうきのアトリエと本の店 がたんごとん〉にアトリエを構える。
 大学4年のとき、箒の展示会で明治から昭和初期にかけて神奈川県北部の中津村(現愛川町)で生産された中津箒に出会い、その実用性と美しさにひかれました。

 2003年に愛川町に設立された中津箒の会社〈まちづくり山上〉に入社し、職人に弟子入り。箒職人として腕を磨く一方、銀座のエルメスや青山の無印良品、安曇野の美術館などで展示をされ、中津箒の魅力を伝えて来られました。

 2016年秋、2人の子どもを北海道で育てようと、妻の故郷札幌に移住され、2017年11月に〈がたんごとん〉ができました。
 講演会で、吉田さんは「(原料となる草の)栽培からやっている箒屋です」と自己紹介。「『箒木』という夏の季語もあり、高浜虚子の『箒木に影といふものありにけり』という句もある。箒木は学名コキアといって丸くて赤く紅葉する。でも東京の箒屋が使っているのはホウキモロコシという高さ2メートルぐらいになる草です」と説明しました。
 「箒は草が良いかどうかが大事。悪い米をどんなに頑張って炊いても美味しくならないのと同じです」と原料の大切さを強調しました。

 


「現代アートが好き」だという吉田さん。なぜ箒職人の道に進んだかについて、「アートは世界を豊かにし、人を幸せにする。でもアート好きがアートを見に来る人のために回す狭い畑より、普通の暮らしや生き方に還元されてこそ本当のアートだと思って道具がいいなとなった」と話しました。
それからフランス生まれの美術家マルセル・デュシャンがレディメイド(既製品)の小便器に署名をしただけの作品「泉」(1917年)から始まる現代アート史を解説し、日本では大正時代に「民芸運動」が出てきたと紹介。「民芸運動は『民衆の生活の中に美しいものがあるんじゃないか』と柳宗悦や河井寛次郎らが取り組んだ。もっとカジュアルに普通の人の日常に近づけようということでクラフトというカテゴリーができた」と一連の流れを説明しました。
 「今は大量消費の時代で、ものがこれまでで一番捨てられている時代だが、言葉も一番捨てられている。質より量になっている」と批判。その上で、「手作りの道具など素朴なものの中にこそ、豊かさや季節感、美しさがあり、詩情が厚みを増す。いかに質を高め、結晶化していくか。そのために俳句や短歌や詩の本を置いたお店を始めた」と話しました。



◆ほうきのアトリエと本の店 がたんごとん
札幌市中央区南1西15の1の319 シャトールレェーヴ605号
http://gatan-goton-shop.com/ (←こちらをクリックするとお店のHPにジャンプします)

2019年2月13日水曜日

北海道立文学館特別展                              「北海道の俳句~どこから来て、どこへ行くのか」について



北海道立文学館特別展
 
「北海道の俳句~どこから来て、どこへ行くのか」について
 
五十嵐秀彦



さる2月2日、札幌市中島公園内の北海道立文学館で特別展「北海道の俳句~どこから来て、どこへ行くのか~」のオープニングセレモニーが開催されました。
この特別展は、北海道の俳句の歴史を江戸時代から現代までを、文学館収蔵品やこの展示のために地方から貸し出してもらった資料などの展示によって辿る文学展です。
 
私は今回の特別展の企画に参加いたしましたが、この展示を通して、開拓期からこの北方の地で苦難の月日を送った人々の心の支えとして俳句があったということを、ご来館の皆さまにぜひ知っていただきたい、感じ取っていただきたいと願っています。
 

入植者の人たちの俳句、政治弾圧から逃れて来た人たちの俳句、アイヌ民族の人たちの俳句、樺太から引き揚げて来た人たちの俳句、炭鉱労働組合の俳句。
北海道の歴史の節々で俳句は人々を支えました。
それは言い換えれば、時代に翻弄された民衆のつぶやきの記録であるのかもしれません。
そうした北海道独自の歴史の上に、現在の北海道俳句があります。

わたしは、北海道の俳句というものに日本の他の地域の俳句とは異質な性格を感じております。
いわゆる近畿地方を中心として涵養されてきた俳句文芸の、ある意味でラテン的な花鳥諷詠に対して、北海道俳句には内省や抽象性を内包した北方詩の性格があるのではないかと思っています。

現代のコーナーでは、今の北海道で活躍している俳人たちの作品も展示されています。北方詩としての視点で北海道俳句を見直すことも意義あることではないでしょうか。
また、この特別展は、ただ過去の展示だけで終わらせるものではありません。
「どこから来て、どこへ行くのか」がテーマなのです。
しかし未来は展示できません。

その中で未来を展望する際のひとつの手がかりとしてAI俳句の展示も行っています。北大大学院の山下准教授の全面的な協力をいただき、「AI一茶くん」という名のAIシステムが会場に設置されています。モニターから観客がインタラクティブに参加できるシステムです。
これもひとつの目玉となっておりますので、お見逃しないように。

未来の展望については、展示会場を飛び出します。
文学館地下講堂を会場として下記イベントを予定しています。

◆俳句展記念・大学生による公開歌会・句会
 「俳句vs短歌 異種格闘技戦」

  2月24日(日)14:00~
  定員60名、当日先着順(所要約1時間半)
  コメンテーター 山田航(歌人)、五十嵐秀彦(中北海道現代俳句協会会長)

  短歌実作  岐阜亮司・宮川漣・山口在果(北大短歌会)
  俳句実作  音無早矢(道教大札幌)、村上海斗(北海学園大)、角田萌(道教大旭川)

◆~山下倫央北大大学院准教授によるAI俳句講座~
 「 A I が 俳 句 を 作 る ま で 」(仮題)

  3月9日(土)13:30~
  定員80名、2月23日から電話受付(所要約3時間)
  講師 山下倫央(北海道大学大学院准教授)他※脚注


◆道内俳人による座談会
  「北海道の俳句~どこへ行くのか~」

  3月16日 14:00~
  定員80名、3月2日から電話受付(所要約1時間半)

  講師 安田豆作、瀬戸優理子、鈴木牛後、松王かをり (俳人)司会 五十嵐秀彦

◆俳人・佐藤文香講演会
  「佐藤文香の俳句サーカス~言葉で俳句を作ろう」

  3月17日 14:00~
  定員80名、現在電話受付中(所要約1時間半)
  俳句募集テーマは「生物」締切2月末日

展示会という静的な表現に対し、イベントという動的な表現を併行して開催することで、北海道の俳句の姿を立体的に捉えようという企画となっております。
この特別展は3月24日まで開催されています。一人でも多くの方に文学館にご来場いただき、さまざまな体験をしていただきたく、よろしくお願いいたします。


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2月2日のオープニングセレモニーに際しては、開館50年記念北海道文学館俳句賞受賞式も行われました。
大賞(最優秀賞)は天塩町の井口寿美子さん、優秀賞は旭太郎さんと籬朱子さん、未来賞は
三品吏紀さん、道下いずみさん、柳元佑太さんがそれぞれ受賞されました。

籬朱子さんと三品吏紀さんは私たち俳句集団【itak】の幹事メンバー。
また、これまでに【itak】に参加されたみなさんが、多数入選されました。
力作ぞろい、ほんとうにうれしい授賞式となりました。おめでとうございます。

※注1 3/9(土)の企画は俳句集団【itak】イベントとの共催となります。
この回については【itak】でもお申込みをお受けしております。


北海道立文学館 特別展 「北海道の俳句~どこから来て、どこへ行くのか」
http://www.h-bungaku.or.jp/exhibition/special.html
【お問い合わせ】 公益財団法人北海道文学館
TEL 011-511-7655
FAX 011-511-3266
 http://www.h-bungaku.or.jp/

2019年2月7日木曜日

第42回 俳句集団【itak】イベントのご案内


俳句集団【itak】第42回イベント(北海道立文学館共催企画)
講演会・句会ライブ(俳句対局形式)


昨夏の【itak】イベントの前日、「AI の MIRAI、俳句の未来 - 俳句対局 in 北海道大学 - 」が開催されました。第42回イベントは北海道大学大学院情報科学研究科・調和系工学研究室 准教授、山下倫央氏のご協力を得て、講演会と俳句対局形式の句会ライブを行う予定。正式タイトル及び詳細についてはただいま鋭意調整中です。AIも参加する句会ライブは参加のみなさんが審査員です。票集計は日本野鳥の会方式です。どうぞお楽しみに。
なお、この回については北海道立文学館「特別展・北海道の俳句~どこから来て、どこへ行くのか」会期中の無料講座と共催の形になりますので参加無料となります。また、通常の句会については行いませんので、初心者の方や俳句以外のお知り合いの方も、広くお誘いくださいませ。

*と き  2019年3月9日(土)午後1時30分~4時30分
*ところ  北海道立文学館地下講堂(札幌市中央区中島公園1-4)
*参加料 共催のため、今回限り全年齢無料
*定 員   80名・先着順
(満席の場合は当日参加をお受けできません。ご了承ください)
 ※受付開始12時半。今回みなさんの投句はお受けしません。

◆第1部 講演会 AIが俳句を作るまで(仮題)
       講 演 山下倫央(北海道大学大学院准教授)
◆第2部 句会ライブ 北大&【itak】オリジナルメンバー
◆懇親会(レストランkitara)のお申し込みも承っております。二次会もございます。

以下は道立文学館特別展企画のご案内です。
俳句三昧の2ヶ月間をご堪能ください。
会場ではレアな資料を取り揃えて展示しております。

北海道立文学館 特別展
『北海道の俳句 -どこから来て、どこへ行くのか』

会期:2019年2月2日(土)~3月24日(日)

<関連事業・北海道立文学館講堂にて開催・申込み、問合せは文学館011-511-7655>

① 文芸講演会「人と俳句」2/2(土)10時半~12時半(←終了しました)
  講師 辻脇系一(中北海道現代俳句協会前会長)

② 俳句展記念「大学生による公開歌会・句会」2/24(日)14時~15時半
  コメンテーター 山田航(歌人)、五十嵐秀彦(中北海道現代俳句協会会長)他

③ 講座「AIが俳句を作るまで」(仮題)3/9(土)13時半~16時半
  講師 山下倫央(北海道大学大学院准教授)他

④ 座談会「北海道の俳句~どこへ行くのか~」3/16(土)14時~15時半
  講師 安田豆作、瀬戸優理子、鈴木牛後、松王かをり (俳人)司会 五十嵐秀彦

⑤ 北海道文学館俳句賞記念講演会「佐藤文香の俳句サーカス~言葉で俳句を作ろう」
  3/17(土)14時~15時半 俳句募集テーマは「生物」締切2月末日
  講師 佐藤文香(俳人)

2019年1月27日日曜日

俳句集団【itak】第37回イベント抄録 『ベトナム季節感から生まれる季語』

俳句集団【itak】第37回イベント 講演会詳報
『ベトナム季節感から生まれる季語』 グエン・ヴー・クイン・ニュー



 俳句集団【itak】の第37回のイベントが2018年5月12日、道立文学館(札幌市中央区中島公園)で開かれ、ベトナム人俳句研究者グエン・ヴー・クイン・ニューさんが講演しました。ニューさんは、ベトナムでの俳句の普及にも携わっており、国際日本文化研究センター(京都)で「国際化時代の新たな日本古典学―ベトナムにおける教育実践の研究―」というテーマで研究を行っています。講演では、ベトナムにおける俳句事情や季節感について解説。今はまだ発刊されていない「ベトナム歳時記」の可能性について探りました。
詳報を掲載します。

◆◆◆
きょうは「季節感」について話したいと思います。でも、うまく話せるのか、とても緊張しています。というのも、ベトナムと日本の気候は、だいぶ違うからです。私はベトナムの南部に生まれましたが、特に北海道とは、季節の違いはとても大きいです。日本は古くから和歌などで季節が詠まれ、歳時記もあります。ベトナムには歳時記もないですし、「季語」も分からない人が多いです。

●ベトナムの季節
始めに、ベトナムはどんな季節があるのかを説明します。ベトナムは南北に長い国です。大きく北部、南部、中部に分かれています。私は南部で生まれました。両親は北部です。北部と南部では少し季節が違います。北部には少し四季のイメージがあると思いますが、南部は一年中暑い。常夏です。平均気温も22度くらい。今日(5月)も、35度くらいあると思う。とても暑い。日本の四季のイメージはありません。中部は雨が多いけど、そんなに寒くない。南部出身の私が京都に行くときには、「とても寒いけど大丈夫?」と言われました。
ベトナムには基本的に乾期と雨期しかありません。11月から4月までが乾期、5~10月が雨期です。南部、中部では少しずれますが。ですから、ベトナムの俳句では、季語を軽視する傾向にある。季節を感じていないので、「なぜ、ベトナムで季語が俳句に必要なのか」という論議もあります。
ベトナムの俳句を一つ紹介します。

Tay cầm vô lăng (タイ・カム・ヴォー・ラン)
xoay vòng đời(ソアイ・ヴォン・ドイ)
sinh – tử(シン・トゥー)
ルウ・ドック・チュン作
「ハンドルや人生の輪を生きる死ぬ」(日本語訳)


 この俳句を見ても、季語はなさそうですね。
そもそも、ベトナムには、いつから「俳句」が広まってきたのか? ベトナムではもともと、漢字が使われていましたが、1945年にフランスから独立して、ローマ字が導入されました。日本の俳句は、主に北部に入ってきて、1986年ごろに高校の教科書に松尾芭蕉などが使われました。ただ、当時はあまり俳句は、普及しませんでした。2007年、ベトナムで初めて日越俳句コンテストが開催されました。そのとき私は日本総領事の広報文化班で仕事をしていました。このコンテストで、俳句がブームになってきました。昨年(2017年)は第6回を迎えました。はじめは日本語部門、ベトナム語部門がありましたが、第5回からベトナム語部門だけになっています。
コンテストでは、独自の(俳句の)ルールを作りました(3行で書き表し、各行の文字数=単語数=は5・7・5文字=単語=を超えない)。
また季語も問いませんでした。テーマや季語はありません。私は季語を導入したかったのですが、反対されました。もう10年もたって、慣れてしまっているので、このルールを変えるのは難しいかなと思います。
ベトナム語には、一つの字に一つの音があり、それぞれ六つの声調があります。北部が標準(発音)と言われ、中部、南部では発音も違います。日本でも方言がありますよね。六つの声調があるので、意味が分からなくても(ベトナムの俳句は)歌のように聞こえると言われます。日本の俳句よりもリズムがあると言われます。

Mộ bên đường モー・ベン・ドウン
Cơn mưa phùn ướt コン・ムア・フン・ウオット
Sân khấu dế non. サン・カウ・ゼー・ノン
「道の墓 霧雨の中 虫奏で」(日本語訳)
(チャン・ズイ・クオ作、第5回日越俳句コンテスト2015年、ベトナム語部門第一位)


ベトナムでは短い詩が好まれるので、俳句もすぐにブームとなりました。ただ、5・7・5にはならず、3・4・3のような形が多いです。日本のように季語ではなく、周りの生活のきれいなことを表現できたら、それを詩にする。

Trái đất luôn quay tròn   チャイ・ドァット・ルオン・クアイ・チョン
Bình minh nơi bạn sớm hơn tôi ビン・ミン・ノイ・バン・ソム・ホン・トイ
Gọi tôi dậy, bạn ơi  ゴイ・トイ・ザイ・バン・オイ
「地球はぐるぐる回る あなたの所はもう朝ね  私を起こして」(日本語訳)
(ニン・クイン・ニュー作= 女子 13歳、第14回世界こどもハイクコンテスト"朝" 大賞作品)

JALの世界こども俳句コンテストベトナム大会の作品です。これは5・7・5となっています。子供のほうが5・7・5となることが多いようです。子供コンテストには「題」があります。これは「朝」という題。子どもから俳句を始めるなら、季題があったほうがいいと思います。

●季節感はあるのか?
ベトナムの雨期と乾期があると言いましたが、俳句でも雨期と乾期を詠んだ作品が多いです。「雨」とか「干ばつ」とか。「雨」のほうが多いかな。干ばつはあまりイメージがわかないので、雨がよく俳句になっています。
では、ベトナムの季語は本当に必要なのか? 私はこの問題を一度論文に書いたことがあります。今は少しお休みしていますが、研究はしています。ベトナムでは季節が把握できないので、自分の俳句の中に季語を入れることは難しい。季語は軽視されがちです。あっても偶然の場合が多い。季語のイメージがないことが問題です。でも実は、伝統的な詩には、自然を表すものが多い。なのに、俳句にどうして季語を導入できないのか。残念だなと思っています。

Nhumg co hang xen rang den  ニュン・コー・ハン・ソム・ラン・デン
Cuoi nhu mua thu toa nang...  クォイ・ニュー・ムア・トゥ・トア・ナン
「小間物屋のお歯黒の娘、その笑顔は秋光の如し…」(日本語訳)


伝統的な詩人ホアン・カムの詩です。「秋光」(mua thu toa nang)という言葉があります。ベトナムでも詩の中に自然や季節を表すことはあります。
私は、ベトナムでも季語が導入できると思っています。形式よりは季語が大事と思っています。「お歯黒」の詩を見ても分かるように、伝統的な文化の中に自然を表せることはできます。雨期、乾期だけでも俳句で表せると思っています。

Nước đè  ヌオック・デー
ngói nâu ngụp lặn ゴイ・ナウ・グップ・ラン
cây dang tay đón người カイ・ザン・タイ・ドン・グオイ
「水溢れ タイル浸漬 木が迎え」(日本語訳)
(チャン・ティ・フェ、第5回日越俳句コンテスト)

台風、浸水、洪水はよくあるので、このような句ができます。「水溢れ(Nước đè)」「浸漬(ngụp lặn)」などは、季語としても使えると思います。

●歳時記の可能性
季語をルールとして導入するためには、「歳時記」をつくることが必要だと思っています。私が今、日文研(国際日本文化研究センター)で勉強しているのは、いつかわからないけど、目標としてベトナムの歳時記できたらいいと思っているからです。私が勝手に考えている季語のことを紹介したいと思います。
ベトナムにも、時候、天文、自然観、年中行事などがあり、季語は十分集められます。例えば、メコンデルタには「取水期」というのがあります。6~9月。これも季語として導入できるかなと考えています。
季節によって花も違います。ベトナムには旧正月の花があります。1月末から2月中旬くらい。梅のような花ですが、北部は赤く、南は黄色です。同じ国なので、同じ旧正月なのに違う花です。3月のカーペー。コーヒーの花です。5月には「火炎樹」という花があります。学生にとって大きな意味のある花です。高校生活、試験シーズンが終わる時期で、この花を見ると学生時代を思い出します。この花から押し花を作って、学生時代の記念にします。6月はハスです。ハノイの花です。南部はハスは8月となります。日本人の人たちと8月に初吟行を行いましたが、南部ではハスを見ました。10月は北部で菊があります。12月にも、いろんな花があります。

果物もあります。6月はライチのシーズン。2月はスイカやマンゴー。日本で2月に俳句を作ったときに、「スイカ」を使ったら、だめだと言われました。だったらマンゴーにしたら、それもダメと。日本は両方とも、夏だから。ベトナムではスイカは2月なのですが…。6月にベトナムに来られたら、バイクのカゴにはライチが山積みになっていると思います。ライチは北部ハノイしかありません。北のほうだけれど、トラックに詰んで中南部に運んできます。道にいるとトラックやバイクのかごにいっぱいのライチを見ることができます。
生活の中にも、季語になれる言葉があると考えています。
アオザイのすそひるがえる通り雨
(グエン・ホアン・ヴー、2009年第2回日越俳句コンテスト、日本語俳句部入賞2位)
ベトナムは9月が入学の時期です。お母さんが、娘のためのアオザイを用意する。学生のときには白いアオザイあります。
農業の生活の中にも季語を表せるものがあります。ベトナムの俳人にも季語を反対する人がいますが、私は季語がないのはもったいないと思っています。乾期・雨期しかないと言われるけど、季語はつくれると思います。
ベトナムでは、雨期に傘ではなく、カッパ、レインコートを着ます。バイクを運転するので傘は使わない。みんなカッパを着てバイクを運転します。レインコート、カッパも季語になれると考えます。

●ベトナムの行事
年中行事もいっぱいあります。毎月いろいろあります。日本もそうですが、中国から入り込んでいる行事があります。年中行事の中に季節の変化が現れるものもあります。

日本にはないものとして、ベトナムには11月20日に「先生の日」があります。また、3月8日、10月20日と女性の日が、年に2回あります。女性への感謝の気持ちがあります。でも、逆に男性の日はありません。女性の日には男性が薔薇の花を渡します。これも季語になれると思います。バレンタインデーは、ベトナムでは男性から女性に贈ります。花とか薔薇とかチョコとか。3月14日の「ホワイトデー」はベトナムにはありません。9月が入学です。
旧正月のときには、お餅を食べます。お菓子もあります。これも季語になれます。月ごとに言葉を集めればベトナムでも歳時記ができるのかなと思います。
日本の人が、ベトナムについて詠んだ俳句があります。
玉を守る戦士の墓やハンモック(西野徹)
ベトナム吟行にいった際にハンモックについて読んだものです。感動しました。
4月30日には大きな行事があります。解放記念日です。南部とアメリカの戦争が終わった日です。暑い時期ですから海や公園に行きます。涼しいところに行きます。ハンモックについてどういうイメージがありますか? 暑いから公園にいってハンモックをかけて過ごす。日本人がハンモックを詠んでくれて感動しました。
目標としては、ベトナムでも300の言葉を集めれば、季語を作れると思います。今回紹介したものを集めても、100くらいの言葉は季語になるのではないかと考えている。ほかにも生活、文化の中に、季語を表す言葉があると思います。
ベトナムに、「母の日記 / Nhật Ký Của Mẹ」(ハイ・チュウ)という有名な歌があります。(→https://www.youtube.com/watch?v=yRTntSSjnc4)
とても有名で人気があります。日本語にも訳されています(よしもとかよ訳)。
歌詞の中に、季語としての言葉がたくさんあります。「登校」「夏の終わり」「太陽の光」「試験(ベトナムでは7月)」「雨の後」など。一つの歌だけでも、生活の中にたくさん季語がある。だから、ベトナム語の歳時記を作りたい。ベトナム俳人の中に、歳時記をつくるという考え方は、今は私しかいないと思います。
こんなことがありました。
けあらしのパトカー早朝出動す(太田惇子)
「現代俳句歳時記」に「けあらし」という季語の句がありました。そこで私もけあらしの句を作りました。
けあらしに水際知らぬ声を出す(グエン・ヴー・クイン・ニュー)。
京都の句会に出したら、みんな、「けあらし」が分からなかった。違う句に変えてみたらとも言われました。歳時記にある季語なのに…。「けあらし」は東京の人にも分からない。2年前に「itak」に参加してみたら、さすがにみんな知っていました。同じ国の中でも分からないことがあります。ましてや国が違ったら、文化も違う、気候も違う。
新しいこと、新しいルールを入れることは難しいことですが、頑張っています。一人は無理なので、日本で勉強して、みなさんに協力していただければ、将来的には歳時記はできると思います。意見などいただければありがたいと思っております。
(了)

2019年1月26日土曜日

第37回イベント抄録アップのお知らせ

こんばんは。俳句集団【itak】事務局です。
2019年が始まり新年のご挨拶もすっかり遅くなってしまいましたが、本年もどうぞよろしくお願い致します。
本年最初のイベントは去る1月19日に道立文学館で「第41回イベント『アート・クラフトからみた俳句』」が行われました。
1月で足元の悪い時期にもかかわらず、多くの方にご来場いただけた事、この場をお借りして心よりお礼申し上げます。
次回イベントは3月9日(土)に予定しております。こちらのイベント案内についても後日改めて告知しますので、しばしお待ちいただきたく思います。

本日の案内は1月27日(日)の18:00に当ブログ上にて、昨年5月に行われた第37回イベント「ベトナム季節感から生まれる季語」の抄録をアップする予定です。(大分時間が経ってしまい、関係各位の皆様本当にゴメンなさい!)
今回の抄録も非常に興味深い内容となっておりますので、お時間のある時に是非ご一読いただければと思います。


どうぞよろしくお願い致します。