第41回イベント『アート・クラフトからみた俳句』が1月19日に開かれ、箒職人の吉田慎司さん(34)に講演をしていただきました。
吉田さんは1984年、東京都練馬区出身。武蔵野美術大学彫刻学科卒。札幌市中央区南1西15にある〈ほうきのアトリエと本の店 がたんごとん〉にアトリエを構える。
大学4年のとき、箒の展示会で明治から昭和初期にかけて神奈川県北部の中津村(現愛川町)で生産された中津箒に出会い、その実用性と美しさにひかれました。
2003年に愛川町に設立された中津箒の会社〈まちづくり山上〉に入社し、職人に弟子入り。箒職人として腕を磨く一方、銀座のエルメスや青山の無印良品、安曇野の美術館などで展示をされ、中津箒の魅力を伝えて来られました。
講演会で、吉田さんは「(原料となる草の)栽培からやっている箒屋です」と自己紹介。「『箒木』という夏の季語もあり、高浜虚子の『箒木に影といふものありにけり』という句もある。箒木は学名コキアといって丸くて赤く紅葉する。でも東京の箒屋が使っているのはホウキモロコシという高さ2メートルぐらいになる草です」と説明しました。
「箒は草が良いかどうかが大事。悪い米をどんなに頑張って炊いても美味しくならないのと同じです」と原料の大切さを強調しました。
「現代アートが好き」だという吉田さん。なぜ箒職人の道に進んだかについて、「アートは世界を豊かにし、人を幸せにする。でもアート好きがアートを見に来る人のために回す狭い畑より、普通の暮らしや生き方に還元されてこそ本当のアートだと思って道具がいいなとなった」と話しました。
それからフランス生まれの美術家マルセル・デュシャンがレディメイド(既製品)の小便器に署名をしただけの作品「泉」(1917年)から始まる現代アート史を解説し、日本では大正時代に「民芸運動」が出てきたと紹介。「民芸運動は『民衆の生活の中に美しいものがあるんじゃないか』と柳宗悦や河井寛次郎らが取り組んだ。もっとカジュアルに普通の人の日常に近づけようということでクラフトというカテゴリーができた」と一連の流れを説明しました。「今は大量消費の時代で、ものがこれまでで一番捨てられている時代だが、言葉も一番捨てられている。質より量になっている」と批判。その上で、「手作りの道具など素朴なものの中にこそ、豊かさや季節感、美しさがあり、詩情が厚みを増す。いかに質を高め、結晶化していくか。そのために俳句や短歌や詩の本を置いたお店を始めた」と話しました。
◆ほうきのアトリエと本の店 がたんごとん
札幌市中央区南1西15の1の319 シャトールレェーヴ605号
http://gatan-goton-shop.com/ (←こちらをクリックするとお店のHPにジャンプします)
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