『 ゆっきーが読む 』 (その2)
~第21回の句会から~
安 藤 由 起
柿くってぼんやりしている一日中 トモヤックス
ある意味、一番衝撃を受けた句。確信犯的な投げやりさ加減が20~30代男性の作品かと思ったら、最年少参加の小学生のものだった。柿食へば鐘が鳴るなり・・・の現代版とでも言うべきか。柿のおいしさにスポットを当てつつも虚無感を漂わせ、おまけに時間経過まで表現するのだからすごい。
桃すする血は濃淡をくりかへす 橋本 喜夫
「あなたは半年前に食べたものでできている」という書籍が売れているとか。たっぷりの水分をたたえた桃が体内に吸収され、やがて血となり体内をめぐる。医療従事者らしい視点が面白く、「すする」という表現にも勢いがあって好きだ。アレルギーで桃が食べられなくなって久しい自分としては、恨めしい限りだが。
蓑虫の蓑言の葉を紡ぐごと 栗山 麻衣
今年の夏、実家の車庫に蜘蛛が大量発生した。ぐるぐる巻きの糸の中に、オレンジ色が透けて見える直径5mmほどの卵塊を割りばしで何個も取った。中身のことを考えると、気持ち悪い。しかし、子を成すために懸命につくったものだ。掲句もそんな愛の形を写しとったのかもしれない。
(最終回につづく)
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