『ムッシュが読む』 ~第15回の句会から~ (その2)
『 ムッシュが読む 』 (その2)
~第15回の句会から~
恵本 俊文
土器出土して縄文の鰯雲 久保田哲子
掘り出した土器は縄文式土器だった。その模様はまるで鰯雲のよう。この土器が使われていたころにも今のような四季があったかわからないが、秋にあたるころにはきっと、空一面に鰯雲が広がっていたに違いない。心に、はるか昔の時代へのロマンが広がる。
去るときも戻るも秋や無人駅 福本東希子
ふだん乗り降りする客はほとんどいない無人駅。周りには何もないが、それでも大切な地だったりする。この秋の風景を目や心に焼き付け、そこから旅立った者は、いつかその風景を求め、同じ季節に戻ってくるのだろう。大切なことは、物の有無ではない。駅員がいない小さな駅にだって、何者にも勝る存在感がある。
秋深むフォードヰセキの青色に 鈴木 牛後
収穫の秋。トラクターなどの農機が活躍する季節だ。刈り取りを待つ作物が広がる田や畑に往来する青いフォードやヰセキの農機は映える。農業地帯ではありきたりの何気ない光景だろうが、それにしても目に鮮やかだ。秋らしい光景のひとつではないか。通りすがりの人にとってはなおさらのことだろう。
もっとも、個人的には、緑色のジョンディアの農機のほうが好みではあるが。
(その3に続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿