(1)村の井戸 ―石巻市大川で―
(2)迫撃砲

石巻のひとたち、東松島のひとたちはだいたいズーズー弁なんです。ズーズー弁というのは、「ひ」の発音が「し」に、「ち」の発音は「す」になるんです。例えば『はし』と言うと、渡る『橋』なのか食べるときに使う『箸』なのか区別がつきません(発音的には『はす』という方が音のイメージが近い)。そんなわけで、東京に行ってズーズー弁使うと皆笑うか、変な顔をするんです。私は東京行く前に標準語の勉強を一生懸命していったのですが、時々(ズーズー弁が)出るんです。そうなると相手から、「やっぱり東北の方ですか?」って言われるんですけどね。
仙台に住んでいた母が夏になると、僕の所に来るんです。そうすると、僕の子供達にズーズー弁で喋るんです。そうすると子供たちは『ハイ!ハイ!』て言うことは聞くんですけども、(ズーズー弁で)「何々しなさい」ていうのが通じないものですから、ハイ!って返事しても通じてない。言われた事をしないものですから、母は『ハイって返事はしてくれるけども、言うこと聞かない』って怒るんです。けど、そもそも通じてないんですよ。
ある時、子供たちが僕に『お父さんたち、恋愛するときや結婚するとき、どうやって申し込むの?』て聞くもんだから、こういう風に申し込むんだよって教えて、それを詩にしたのが『プロポーズ』という詩です。
子供らはこれを見て『本当かい、お父さん?』てゲラゲラ笑ったけど、だけどこういう風にして昔はプロポーズしたんですよ、農家だから。『あんだば好ぢだぞ』って、言ったと思うんですよね。『嫁こさなってけねべが』って。「私はあなたが好きです。愛してます。結婚して下さい」って標準語の世界ですけど、向こうのズーズー弁の世界ではそうじゃないんです。そう思って、この詩を書きました。
(4) 詩ではないかもしれないが、どうしても言っておきたいこと

彼女の父はユダヤ人です。かなり著名な哲学者でした。お母さんはウエールズの人で、クリスチャンでした。それで「もし両親が生きていてこの有様を目にしたら、ひどく悲しむだろう」と書いています。この詩を受けて、私もこの「詩ではないかもしれないが、どうしても言っておきたいこと」という詩を書いたのです。彼女の詩集には戦争と平和についての作品もかなり入っています。同名の私の詩集にも戦争と平和の作品がかなり入っています。
☆抄録:三品吏紀(みしな・りき) 北舟句会
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