俳句集団【itak】第26回句会評③
2016年7月9日
橋本喜夫(雪華、銀化)
白日傘くるくる来ると君を待つ 辻村 幹子
結構人気があつまった。甘い内容ではあるが、中七の「くるくる来る」の措辞がみなに受けたのだろうと思う。畳みかけの三つ目を漢字の「来る」にしたのが成功している。個人的な好みでは「君」が甘~いので「ひと」とか「だれか」とかぼやかしてもいいようにも思う。
熱帯夜カバの尻尾を甘噛みす 田島 ハル
寝苦しい熱帯夜にさっそくガバーと寝入ってしまったカバのような男が小憎らしいので、そのからだの一部を甘噛みしたともとれるし、寝苦しい中にみた夢が中七以下であったとか、想像の余白がある。「甘噛みす」の座五がこの句を締めていると思う。
ケロイドをあまねく浄土原爆忌 頑黒 和尚
「ケロイド・あまねく・原爆忌」のフレーズはとてもよいと感じた。不人気だったのはおそらく「浄土」この宗教的用語が原爆忌につきすぎであろうし、説教くさく響いたのであろう。ケロイドをあまねく浄土にしたいという願いはわかるが、観念でなくリアルな症状とか風景でいいのでは。たとえば 「ケロイドのあまねく痛む原爆忌」とか「ケロイドのあまねく赫き原爆忌」とか「ケロイドをあまなく照らす原爆忌」とか、いずれにしても一考を。とても良い句になると思う。
木下闇三毛猫以外全部親戚 高畠 霊人
全部親戚がたいへん成功している。高点句でもあった。木下闇に家族全員が休んでいる、家から連れてきた三毛だけは血のつながりがない。なんて景もありうるし、木下闇に暑さに弱い多くの猫が寝そべっている。そのうち三毛猫だけが血がつながっていないとか。どうでもいい内容を提示して詩になるのが俳句の真骨頂でもあるのだ。オスの三毛猫は三万匹に一匹ともいわれ遺伝学的にも面白い素材だ。
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