2019年7月21日日曜日

第44回イベント抄録 『俳句の中に出てくるカエルの生態』




「古池や蛙とび込む水のおと」の「おと」は
「ドボン!ドボン!ドボン!」だった!

第44回イベントは、高井孝太郎さんに『俳句の中に出てくるカエルの生態』という題名で講演をしていただきました。高井さんは北海道大学北方生物圏フィールド科学センターや「北海道爬虫両生類研究会」でカエルの研究に打ち込んでおられます。

◆略歴
1979年、帯広市生まれ。北海道大学北方生物圏フィールド科学センター学術研究員。水田など身近な環境にいる生き物に興味を持ち、その中でも代表的なカエルの生態を研究して15年になる。

◆講演詳報
カエルは世界におよそ6700種、日本に48種いるそうです。
不思議な生態を持つカエルも多く、例えば、寒冷地に住んでいるアカガエルの仲間はかちんこちんに凍っていて解凍して息を吹き返します。オーストラリアの乾燥地帯にいるカエルは蟻塚でシロアリを食べながら生きています。さらに空跳ぶカエルもいて、モモンガのようにひれのところを発達させて滑空します。
北海道のカエルですが、在来種は春先に見かけるエゾアカガエルと、田んぼや草原で見かけるニホンアマガエルの2種です。エゾアカガエルのオタマジャクシは、外敵に食べられないよう頭を膨らませる。世界でも例のないカエルです。
さらに北海道の外来種のトノサマガエルのDNAを調べると、兵庫県や島根県から来ている個体が石狩平野に広がっていることが分かります。トノサマガエルにそっくりなトウキョウダルマガエルは東京・町田市が由来です。

俳句の本題に入ります。春の季語の時期に繁殖するカエルは、ヤマアカガエル、ニホンアカガエル、ニホンヒキガエル、アズマヒキガエルがあり、北海道だとエゾアカガエルになります。夏はモリアオガエル、シュレーゲルアオガエル、北海道ではニホンアマガエルなどが該当します。
渓流などきれいな流れのところに住むカジカガエルは、かなり澄んだ声で鳴きます。昔、俳句を作った方々が聞いたのはカジカガエルが多いのではないでしょうか。
有名な句に、松尾芭蕉の「古池や蛙とび込む水のおと」があります。このカエルがどのカエルなのか、僕なりに分析してみました。

「蛙」なので春の季語。文献を読むと、詠まれた場所は深川(今の東京都江東区深川)の芭蕉庵。この時期に池の周りをたむろしているカエルは、ニホンアカガエル、トウキョウダルマガエル、アズマヒキガエルです。繁殖の準備でニホンアマガエルも出てきているかもしれません。
この中で跳び込むという動作を行うのは、主にトウキョウダルマガエルになります。
じゃあ跳び込む音はどんな音だろうかと。
僕も最初は「ポチャン」という音を連想しました。でも芭蕉が生きた時代は環境が良くて、たくさんのカエルがいたことと思います。そうしたら「ドボン!ドボン!ドボン!」という音になります(会場笑)。芭蕉が見たのは複数のカエルだと思います。
それから小林一茶の「やせ蛙まけるな一茶これにあり」。これも諸説あるんでしょうけど、武蔵国で「蛙合戦」を見たときの句だというのを読みました。蛙合戦というと今も昔もヒキガエルです。一茶は、ヒキガエルが繁殖のために大集団になっている景色を見たのだと思います。押しくらまんじゅうのようにわんさかいて、一つのつがいが池に入ると、5、6匹のオスが集まってきてメスを巡って争います。

◆代表五十嵐秀彦さんとの質疑応答
(五十嵐さん)「古池や」の句の蛙は複数だったということですか。この句の蛙が単数なのか複数なのか結構前から議論になっているんです。この句を英語に翻訳するときに、「S」を付けるか付けないかで問題になったんです。結論の出る話ではないんですが、「ポチャン」という印象でみんな思っていたようですが、今はたぶん複数なんじゃないかという説が強くなってきています。ですので「カエル複数説」の重要な発言がありました(会場笑)。これは夜だったんでしょうか、昼だったんでしょうか。

(高井さん)たぶん日中だと思います(会場笑)。

(五十嵐さん)それはこの句に対する先入観を裏切る話なんです。

(高井さん)実は単数か複数かいうことにはかなり思い込みが強いんです。昔の芭蕉がいた時代なら、おそらく自然がすごく残っていると。そんな中でそんな池があったらカエルの数が一匹じゃすまないだろうという先入観から複数です。なおかつ自分の調査の体験から、「ドボン!ドボン!ドボン!」となったんじゃないかなと思いました。実は、夜はカエルはあんまり動かないんです。僕もトノサマガエルやトウキョウダルマガエルを捕まえるときは、夜にライトを照らして近づくんです。そうすると、よっぽどカエルの横に足を入れたりしない限り、動かないんです。ですので芭蕉が池の周りをぐるっと回って、カエルを捕まえてやるぞという勢いで回ってるのなら、もしかしたらカエルを踏みそうになって、池に跳び込んで「ポチャン」と鳴ったかもしれないですけど。ただ、もし池に近づいたというだけなら、カエルが跳ぶというのは日中じゃないと見られないと思います。

(五十嵐さん)ものすごい指摘だと思いますが、近づいたから跳び込んだんでしょうか。

(高井さん)多分そうだと思います。ただ、何もしなくても跳ぶこともあるんです。でももし何か一匹が跳び込んだら、その音に驚いて他のカエルも跳び込むことがあるので、近づいて跳び込んだかどうかは分からないですね。

(五十嵐さん)ほとんどの人は、この句は夜で、しかも芭蕉は庵の中にいて聞いたと思っています。もちろんはっきりしたことは分からないけど、昼間で、芭蕉は外を歩いていて、カエルは複数で「ドボン!ドボン!ドボン!」と落ちた。これはすごい新説です。おもしろいです。

(高井さん)確かに僕も初めてこの句を詠んだときに抱いたイメージは、家の中で聞いていて、夜など静かなとき、なおかつ一匹ポチャンと行ったのかもと思ったんですが、実際に夜と朝、繁殖期と非繁殖期とカエルを追いかけて、改めてこの句と向かい合うと、そっちじゃないかなと思ったんです。

(了)


2019年7月14日日曜日

第44回俳句集団【itak】イベントは無事終了しました

昨日は俳句集団【itak】の第44回イベントにお越しいただきまして誠にありがとうございました。
講演会『俳句の中に出てくるカエルの生態』はいかがでしたでしょうか。
漫才あり唄あり踊りありと楽しい時間を過ごしました。どうぞご感想などをお寄せ下さいませ。
今回は64名のみなさんにご参加いただき、投句総数も124句となりました。
久しぶりに高校生が参加、今来てくれている大学生の数年前のことを懐かしく思い出しました。
当日ご参加下さった方も多く、心より感謝いたします。抄録は後日公開いたします。

次回は年が明けまして9月14日(土)13:00から、北海道立文学館・地下講堂にて開催の予定となっております。
NPO法人「楽知ん研究所」・樋栄邦直さんによる<大道仮設実験講座>『見えないものが見えてくる』を行います。
科学実験ってなんだかワクワクしたでしょう?子供の心に戻って楽しみましょう。
みなさまお誘いあわせのうえご参加くださいませ。

詳細はメール・ブログ・Facebook・ツイッターなどで改めてご案内させていただきます。
以下のメールアドレスに随時お問合せくださいませ。 
 



ひとまずは取り急ぎの御礼まで。
今後とも俳句集団【itak】をどうぞよろしくお願いいたします。
 

俳句集団【itak】幹事一同


 

2019年7月11日木曜日

第44回俳句集団【itak】イベントはいよいよ明日です! 懇親会は満席です!

俳句集団【itak】事務局です。

北海道らしいからりとした晴天が続くようになりました。
第44回俳句集団【itak】イベントはいよいよ明後日となりました。
ご予約なしでもどうぞお越しください。

※懇親会のお席は満席となりました。























  と き    2019年7月13日(土)13時~16時50分
  ところ   北海道立文学館講堂(札幌市中央区中島公園1-4)

◆第一部 講演会 『俳句の中に出てくるカエルの生態』

 
        講 演  高井 孝太郎(北海道爬虫両生類研究会)
◆第二部 句 会 当季雑詠(2句出句・3句選)
◆参加料 一般500円 高校生以下無料

受付開始12時半。投句締切13時。欠席投句はお受けしておりません。

ちょっとでも俳句に興味ある方、今まで句会などに行ったことのない方も、大歓迎です! 軽~い気持ちで、ぜひご参加ください♪句会ご見学のみのお申込みもお受けします(参加料は頂戴します)。  
北海道立文学館へのアクセス
※地下鉄南北線「中島公園」駅(出口3番)下車徒歩6分
※北海道立文学館最寄の「中島公園」駅3番出口をご利用の際には

①真駒内駅方面行き電車にお乗りの方は進行方向先頭部の車両
②麻生駅方面行き電車にお 乗りの方は進行方向最後尾の車両にお乗りいただくと便利です。

 

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2019年7月4日木曜日

◆各種イベントのお知らせ◆

俳句集団【itak】事務局です。蝦夷梅雨っぽいですね。
今週末からの俳句・文学イベントをおしらせします。  
 
7/7(日)第4回文学フリマ札幌 入場無料

場所:札幌テレビ塔2階(札幌市中央区大通西1丁目)
時刻:11時から16時
俳句集団【itak】のブース位置:お-8(南側窓際)
※参加者のみなさまの句集・結社誌の有料・無料頒布、
  句会案内チラシ等配布物をいたします。


・五十嵐秀彦句集「無量」
・鈴木牛後句集「根雪と記す」「暖色」
・新出朝子句集「光滴々」
・シークレット句集がお目見えです!
・たんぽぽ特製幸せを呼ぶチャーム
・小樽潮陵高校部誌
・結社誌、雪華・雪嶺バックナンバー
・ポストカード各種、自由帳
・その他いろいろ取り揃えています。

https://eventmesh.net/bunfree-sapporo04/?id=t__お_08

【itak】関係者も随所でうろうろしております!
お気軽にお声掛けくださいね!委託品は事務局までお問合せを。

前日まで回収に伺います。




②第16回帯広原爆忌俳句展作品募集・7/10投句締切

 

ただいま投句募集中です。投句無料。
葉書に二句書いてご投句下さい。住所・氏名俳号をお忘れなく。


 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
7/13(土)俳句集団【itak】第44回イベント 参加料500円・高校生以下無料

場所:北海道立文学館大講堂(中央区中島公園1-4)TEL:090-3398-3457
時刻:13時から16時50分
第一部 講演会:俳句の中に出てくるカエルの生態』
      講 演 高井 孝太郎(北海道爬虫両生類研究会)

第二部句会:2句出し3句選

※お申込受付中ですが当日の参加もお待ちしております。
※懇親会のお席に少々の空きがございます。


④大とかち俳句賞全国大会・7/20投句締切


 新選者を迎えて、ますます充実の俳句大会です。
選者特選は十勝の野菜詰め合わせが頂けちゃう(はず)。
以下から投句用紙のダウンロードができます。

https://www.tokachi.co.jp/tcf/tp_detail.php?id=129

【itak】からは五十嵐秀彦・橋本喜夫両氏が選者として参加しています。
当日十勝プラザにも参りますので、札幌からも冷やかしに参りましょう。



⑤第56回現代俳句全国大会・7/30投句締切


現代俳句全国大会は、年に一度、現代俳句協会が主催して行う伝統のある大会です。協会員に限らずどなたでも参加できますから、例年にも増してたくさんのご応募をお待ちしております。
詳細は以下のページでご確認ください。投句用紙のダウンロードもできます。
https://gendaihaiku.gr.jp/news/news-1924/