2015年12月31日木曜日

【本年の御礼と『新年詠』公開のお知らせ】


俳句集団【itak】です。

本年のイベントにもたくさんの方々にお越しいただき、また応援いただきましたことに深く感謝いたします。誠にありがとうございました。

来年も奇数月第二土曜日を定例として休まず会を重ねてまいりたいと思います。
みなさまは常に【itak】という何者かの目撃者・証人であります。
俳句を通じて喜びをともにできますよう、今後とも新しい挑戦をしていきたいと思います。

明日は元旦。
幹事一同、新たな気持ちで頑張ります。
18時より幹事による『新年詠』を公開予定です。
ご高覧、ご笑覧くださいませ。


新年のイベントは1/9(土)13時からとなっております。
お申込み受付中です。

第一部は北海道札幌琴似工業高等学校文芸部顧問
佐藤啓貢+文芸部生徒一同による
学校祭展示再現と高校の文芸部の活動紹介です。

多くの方に楽しんでいただきたいと思っています。

懇親会のお申し込みも引き続きお受けしております。
お申込みお問い合わせは itakhaiku@gmail.com まで。

それではみなさま良いお年をお迎えくださいませ。


俳句集団【itak】幹事一同


2015年12月30日水曜日

【itakスタッフ】野良猫リポート#15 パンダちゃんがいっぱい!の巻


11月14日・炬燵が欲しい季節だった猫ー

面白いから大人もついでにパンダちゃんズ

竈猫って季語だっていうじゃなぁ~ぃ?野良猫さんもそろそろお外が辛い季節になってましたよ。おこたのある部屋探してます。だいたいさ、竈ってなによ、朝ドラでしか見たことにゃいよ。


今年は雨も雪も降らなくてまあまあいい感じの晩秋のイベント。りっきー兄さんは大きいビジネスがあったので欠席。そうそう、お仕事最優先。久しぶりに代打・野良猫さんがリポート書きますにゃ


今回はいつもの琴似工業高校の生徒さん3名のほかに、小樽潮陵高校のみなさんが初めて参加してくれました!引率の先生もおふたりお出でになりましたにゃんよ。

【itak】の人間たちは夏の俳句甲子園のサポートをしていますが、潮陵高校は去年から北海道大会に参加している高校。これまで琴似工業と旭川東はなんどか来てくれていたけれど、やっとイベントに来てもらえました!高校生には小旅行かも知れないけれど、来てくれてとてもうれしいにゃん


潮陵の文芸部は夏の大会でもしっかりとしたディベートが印象的 。今季の作品の印象は3校とも互角と言っていい感じでしたが、やはりこの年代だと女子の方が少しばかり、語るに滑らかかもにゃ~なんて思いつつ。【itak】での句評もやはりしっかりしていて頼もしかったにゃん~。


琴似工業のいつもの面々も、夏以来の再会にやや緊張していたようにも見えたりして。それでもやっぱり【itak】経験が長いせいか、堂々とした句評を繰り出していました。

さて、気になる若人の作品ね。粗削りですが先が楽しみ。
残念ながら掲載不可もあったのだけれど、大丈夫なものだけあらためてまとめるにゃん


  淡恋と弾け飛びたる冬苺        銀の小望月

  一夜にて皆いっせいに落ち葉かな  高橋なつみ

  息吐けば雪の牧場はただ広く     角田   萌

  風が過ぐ華を刈る斬る冬が来る    獺    祭

  クリスマスツリーへ斧を振りかぶる   村上 海斗


さて、遠い区域の学生さんには簡単に来てくれって言いにくいところですが、札幌圏の生徒、学生のみなさん、顧問の先生方、どうぞ俳句集団【itak】のイベントに遊びに来てくださいにゃん。学校だけではできない経験が、みなさんを待ってますにゃん。それではまた1月のイベントで再会しましょうにゃん!次回は琴似工業高校の皆が頑張ってくれるからぜひぜひ来てみてほしいのにゃん!なんか噂じゃこれまで来ていなかった高校からも参加があるって聞いてるにゃん!こんなに年齢層の広い句会は【itak】だけにゃん
                                   △  △
以上野良猫が無責任にお送りしました。(=ΦωΦ=)


※高校生の句に対する句評や、高校生の選評に対するご意見などは、【itak】事務局で随時お受けしております。ご遠慮なくお知らせください。また、参加者のみなさんのその他の原稿をいつでもお待ちしております。よろしくお願いいたします!


2015年12月29日火曜日

第23回イベント 『学校祭展示再現と高校の文芸部の活動紹介』 (再掲)



北海道札幌琴似工業高等学校文芸部
学校祭展示再現と高校の文芸部の活動紹介

 
2006年、30余年ぶりに部活動として復活した琴似工業高等学校文芸部。今年は活動を再開してから10年目に当たります。今回はその10年間を振り返るとともに、【itak】会場に文芸部の学校祭展示を再現し、部員が皆さんに高校の文芸部の全国的な活動内容を解説します。
 
 
 
学校祭での短冊・色紙・パネル・模造紙の展示を再現
30号まで発行した札幌琴似工業高校の文芸部誌の展示
・全国150校余の文芸部の文芸部誌の実物展示
・普段の活動と年間8種類の大会の内容を紹介

※部員生徒がそれぞれ解説し、みなさんには自由に
見学していただきます。ご質問なども遠慮なく、
自由に行ってください。

*とき 平成28年1月9日(土)午後1時~4時50分
*ところ 北海道立文学館講堂(札幌市中央区中島公園1-4)
*参加料 一般500円、高校生以下無料
 
●第1部 北海道札幌琴似工業高等学校文芸部
  『
学校祭展示再現と高校の文芸部の活動紹介
      文芸部顧問 佐藤啓貢+文芸部生徒一同
札琴工文芸部はこれまで、全国高等学校文芸コンクールの詩・俳句・文芸部誌部門において8年連続全国入賞を果たすなど、道内の文芸部の中でも活発な活動をしている一校です。俳句甲子園札幌会場にも毎年出場し、今年は【itak】でもおなじみの村上海斗君が最優秀作品賞受賞、細川大君が北海道代表で来年の「全国高等学校総合文化祭・俳句部門」に出場が決まるなど活躍著しいことは皆さんご存知の通りです。

●第2部 句会(当季雑詠2句出句・投句締切13時)
●懇親会のお申し込みもお受けします。

 
俳句集団【itak】イベントは新年も
毎奇数月第二土曜日13時から道立文学館にて開催!

2015年12月26日土曜日

第23回俳句集団【itak】イベントのご案内(再)


俳句集団【itak】事務局です。

クリスマスも過ぎ、いよいよお正月が目の前です。
第23回俳句集団【itak】イベントのご案内を再掲しますのでよろしくお願いします。
新年会を兼ねた懇親会もございます。
多くの方のご参加をお待ちしております。
下記内容にて【itak】の第23回イベント、展示と解説を開催いたします。
新年早々の企画になりますが、【itak】は奇数月第2土曜日を動かしません。
どなたでもご参加いただけます。
多くの方々のご参加をお待ちしております。
第一部のみ、句会の見学のみのご参加も歓迎です。
実費にて懇親会もご用意しております。お気軽にご参加ください。

◆日時:平成28年1月9日(土)13時00分~16時50分

◆場所:「北海道立文学館」 講堂
     札幌市中央区中島公園1番4号
     TEL:011-511-7655


■プログラム■

 第一部 展示と解説

 北海道札幌琴似工業高等学校文芸部
   『学校祭展示再現と高校の文芸部の活動紹介』
 

 展示と解説 文芸部顧問 佐藤啓貢+文芸部生徒一同

 第二部 句会(当季雑詠2句出句)

 <参加料>
 一   般  500円
 高校生以下  無  料

(但し引率の大人の方は500円を頂きます)

※出来る限り、釣り銭の無いようお願い致します。
※イベント後、懇親会を行います(実費別途)。


 会場手配の都合上、懇親会は事前のお申し込みが必要になります。
 会場および会費など、詳細は下記詳細をご覧ください。


■イベント参加についてのお願い■

会場準備の都合上、なるべく事前の参加申込みをお願いします。
イベントお申込みの締切は1月7日とさせて頂きますが、締切後に参加を決めてくださった方もどうぞ遠慮なく申し込み下さい。
なお文学館は会場に余裕がございますので当日の受付も行います。
申し込みをしていないご友人などもお連れいただけますのでどなたさまもご遠慮なくお越しくださいませ。



お申し込みには下記のいずれかを明記してくださいませ。
①展示と解説・句会ともに参加
②第一部展示と解説のみ参加
③第二部句会のみ参加(この場合は前日までにメール・FAXなど
で投句して頂きます。)
特にお申し出のない場合には①イベント・
句会の通し参加と判断さ
せていただきます。
なお、第一部からご参加の方の投句の締切は当日13:00です。

天候や交通状況で間に合わない場合等は、13:00までに
  itakhaiku@gmail.com まで投句ください。

◆イベント後・懇親会のご案内◆

会場:キリンビール園 本館 スペースクラフト
    中央区南10条西1丁目1-60
時刻:17:30~19:30
会費:4000円(飲み放題つき)


  ※イベント受付時にご精算をお済ませください。
  ※当日のキャンセルは後日会費を申し受けます。
  ※中高生、小学生はお問い合わせください。


準備の都合上、こちらは必ず事前のお申し込みをお願いします。
懇親会申し込みの締切は1月5日とさせて頂きます。
以降はお問い合わせください。

参加希望の方はイベントお申し込みのメールに ④懇親会参加 とお書き添えください。

ちょっとでも俳句に興味ある方、今まで句会などに行ったことのない方も、大歓迎です!
軽~い気持ちで、ぜひご参加ください♪
句会ご見学のみのお申込みもお受けします(参加料は頂戴します)。


北海道立文学館へのアクセス
※地下鉄南北線「中島公園」駅(出口3番)下車徒歩6分
※北海道立文学館最寄の「中島公園」駅3番出口をご利用の際には


①真駒内駅方面行き電車にお乗りの方は進行方向先頭部の車両
②麻生駅方面行き電車にお 乗りの方は進行方向最後尾の車両にお乗りいただくと便利です。

 

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2015年12月23日水曜日

『葉子が読む』~第22回の句会から~ (最終回)


『 葉子が読む 』 (最終回)
 
~第22回の句会から~

高 畠 葉 子
 

 零余子喰ふせめて憑きもの落ちるまで  高畠 霊人
 
 先日友人と楽しんだランチは季節限定メニューだった。その中に「零余子もち」の葛のあんかけがあり、もっちりとした触感を楽しんだ。そうか。あのもちもちに絡まって憑きものは落ちるのだ。せめてと言っているが大地の滋養たっぷりの零余子を喰えば、すみずみ清清しくなるに違いない。またその事を作者は承知のうえだろう。

 
 コーヒー一杯そして眺むる海の秋    藤森未千子
 
 海を眺めるためのコーヒーなのか、コーヒーを愉しむための海なのか。何れにしてもコーヒー好きな大人の一句。それぞれの季節の海に似合う飲物はあるがコーヒーであれば秋に間違いない。一杯のコーヒーを大切に過す時間として飲むのだ。もう一点記すべきが「海の秋」だ。海そのものの秋と海に纏わるすべての物の秋を感じるのだ。心も頭もその空気のままに任せて過す。そして一句が生れたら最高!もちろんコーヒーは濃いめのホットで。

 
 公園の遊ぶ子一人冬に入る     中田真知子
 
 冬を感じる瞬間はそれぞれだろう。作者は公園に一人遊ぶ子に冬を感じた。一人遊びの子は決して寂しいのではない。一人遊びを楽しんでいるはずだ。そして、冬が好きで、雪が好きで、そんな子だ。作者もまたそんな子を眺め冬になったのだなぁと感じる。「冬に入る」の季感は厳しい季節に入るのだという身構えもあるだろう。しかし長く冬を過ごしてきた私たちは冬を愉しむ事も、快適に過ごすための知恵も道具もある。これから存分に冬を感じ詩に残してゆきたいものだ。

 
 渡り鳥嵐を追つて海こえる      高畠町子
 
 今回の【itak】イベントの前日から、札幌では「嵐」のライブがあった。街は「嵐効果」もずいぶんと有ったようだ。アイドルグループ嵐の影響力恐るべし。で、この句。もしやあの嵐をも詠んでいるのか!とにんまりしている。文字通り、秋の台風後に海をこえてきた渡り鳥とも読めるが「嵐」のライブ当日に出された句だ。街には嵐ファンが溢れ、会場近くの主要道路は渋滞、地下鉄も満員状態であった事を思えばこの句の「嵐」はあの「嵐」であるに違いない。この姿勢は大いに学びたい。俳句もライブだ!

 
 寝そべって死ぬことできる蒲団かな     橋本喜夫
 
 死という字を使った句は難しい。なかなか成功しないと思う。何度かチャレンジはするものの失敗続きの私だ。動物や植物を死なせたりできても人を死なせる句を成功させるのはめちゃ難しい。この句が軽やかなのは「死ぬ」ことできる蒲団だからなのだろう。その蒲団に寝そべれば死ぬことができる。つまりその蒲団以外では生きるのだ。読んでみるとなんてことない様に思えるが、なかなか気付けない事じゃないかな。さすがです。
 
 
(了)

 

2015年12月21日月曜日

『葉子が読む』~第22回の句会から~ (その2)


『 葉子が読む 』 (その2)
 
~第22回の句会から~

高 畠 葉 子
 

 初霜やつひにその本読み終へず     高橋なつみ

 読み終わらなかったその本。読み終へなかった事をさらに「つひに」とまで言われると、作者は「ま、いいっか」と開き直り?かと思う。これは前向きかつ明るい開き直り。読み終えなかったからって何さ!みたいに。その本とはいかなる本かも考えてみる。ミステリーじゃあないな。恋愛小説でもないでしょ。とか。いやいや、本と言っている。小説とは限らないしね。ともかく今は読み終わらなかった本だけれどまた来年初霜の季節はやって来るって事だ。

 
 息吐けば雪の牧場はただ広く      角田 萌

 たかだか人間の発するものはちっぽけだ。目に見えるものはちっぽけだが見えないものは無限大だ。息は白く吐き出され、雪の牧場へほんのちょっとの体温を伝えた。そこには「想い」もあったはず。たとえば志とか夢とか。ただ広くの後にある作者の想いを感じる句だ。

 
 むっつりと歩く人多き神無月      和田 由美

 むっつりと歩く人。がとても良かった。たいていの大人は一人歩く時「素」になっている。その怒っているでもない。哀しがっているでもない。へらへら笑っているでもない。むっつりなのだ。顔の表情だけではなく「むっつりと歩く」その姿だ。そして神無月である意味も納得だ。深刻に季節の厳しさを思う11月でもない、暮らしの忙しさに追われる12月でもない。そんな神無月であるからこそ素の表情が「むっつり」なのだ。通勤時間帯、多くのおとなはむっつり歩いているのだ。音の字余りもまたむっつりを表現している。おとなの句だ。

 
 風が過ぐ華を刈る斬る冬が来る     瀨祭
 
 リズムの調子の良い句。おまけに動詞が四つ!以前友人達と「動詞をたくさん入れる句を作ろう!」というテーマを持った事があった。作ろうとするとなかなか作れないものだ。これでもかと畳み込まれるといっそ気持ちがよい。子音がU音で揃っているせいか。

 
 カフェラテの渦巻き白し日向ぼこ    渉  千佐子
 
 例えば赤い屋根のオープンカフェ。日向ぼこをしいながらのカフェ、佳い時間だ。カフェラテの渦巻きはラテアートか。最近私もラテアートに挑戦している。もちろん難しい。ハートを描いたつもりが誰のハートだい?と言いたくなるようなシロモノだ。ラテの渦巻きってもしかしたらラテアートの失敗作??とか失礼ながらわが身に置き換えて読んでいる。

 
(最終回につづく)

 

2015年12月19日土曜日

『葉子が読む』~第22回の句会から~ (その1)


『 葉子が読む 』 (その1)
 
~第22回の句会から~

高 畠 葉 子
 

今回「読む」企画を書かせて!と名乗りをあげた。
本当に久しぶりで、文体をどうしたものか?から始まっている。と気負ったところでクオリティが高くなる訳でもないので普段のままにありのままに(あぁ、最早古い言い回し)書くことにしよう。今回のイベントには私の自宅ご近所である小樽潮陵高校からも参加があったと聞いている。どの句が高校生のものなのか分からないのも、また楽しいものだった。一読これは高校生?とはならなかったという事は、大人っぽい高校生、若々しい大人って事らしい。俳句ってなりたい自分になれるのね。



 敷きつめた銀杏黄葉や去り難し    綾

 近所に高校がある。校門へ向かう坂道には桜・銀杏・萩が揃っている。季節をたっぷり味わえる。秋の色で敷つめられた道を眺め踏みしめ歩くのは晩秋の楽しみだ。さて。作者は去り難しと言う。そうなのだ。365日のうちせいぜい5日程の秋の名劇場だ。どんなに去り難くともやがて朽ちてしまう。美しい景色を感じた時その時間を惜しむと同時にその時に持つ心だとか、物だとか、人だとか、取り巻くすべてを愛しむ事を再認識し去り難くなるのかも知れない。



 山白く喪中のはがきちらほらと    平田 麗子


 11月に入るとまさにちらほらと届く喪中のはがき。年年、枚数が増えて来ている様に感じる。また、喪中はがきを用意する事も増えてきた。この句の後半からの平仮名の表記がはらはらと降る雪も見えるようで効いている。喪中の葉書。喪中のはがき。表記で作者と送り主との距離感も伺える。喪中はがきを手にして思う季語が「山白く」視線が遠くに飛んでいる所がいいな。

 

 淡恋と弾け飛びたる冬苺       銀の小望月
 
 読みは「あわこい」としたい。いや、それ以外ないでしょ!という声もありそうだけど・・・。「たんれん」はないよね。淡恋と冬苺。まして弾け飛ぶという。淡い恋と言ってるけどさぁ、本音の所では別の想いがあるのよね??なんて読んでみる。確かに冬苺の粒粒ってぱんぱんに張って今にも弾けそうだし。そんな思わせぶりな?作者にまんまとハマり花言葉まで調べてしまった。冬苺の花言葉は「未来の予想」「尊重と愛情」「誘惑」とあった。ほう!と唸った。
淡い恋は弾けてどうなったのか気になるよ!
 

 木の葉散り山の地蔵も眠りけり    山納 秀俊

 季節ごとの地蔵菩薩を思うと秋に眠るというのはとてもよく似合う。ひと仕事終えたようにいったん眠るのだろう。しかし世の苦悩を包み込む地蔵は冬に目覚め人々の苦悩を包むのだ。笠地蔵のプレストーリーの様だ。
 

 凩や声を涸らして歌ひ切る      山鹿 浩子

 木枯しではなく「凩」が相応しい。歌い切ったという作者の一途さを思う。声を涸らしてとは言っているが、心の内の叫びとも読める。声を涸らし、心を涸らしやり切ったという作者は凩の先にある新たなスタートを見つめているに違いない。
 
 
(その2につづく)

 

『葉子が読む』は今夜から!


俳句集団【itak】事務局です。

風台風に見舞われた北海道、自然とはなかなか厳しいものです。

おなじみの『読む』シリーズです。
明日の夜から『葉子が読む』をアップします。

第22回俳句集団【itak】の句会には64名が参加、128句が投句されました
その中から高畠葉子が毎回心の赴くままに選んだ句を読んで参ります。

前回同様、ネット掲載の許可を頂いたもののみを対象といたします。
掲載句に対して、あるいは評に対してのコメントもお待ちしております。
公開は今夜12月19日(土)18時からです。ご高覧下さい。

☆高畠葉子(たかばたけ・ようこ 俳句集団【itak】幹事・現代俳句協会会員)


2015年12月17日木曜日

俳句集団【itak】第22回イベント抄録


俳句集団【itak】第22回イベント抄録


『いま、狸小路があたらしい!
 

 2015年11月14日 札幌・道立文学館
 


 


●自己紹介


 漢字でもひらがなでも4文字の和田由美です。亜璃西社という出版社を営んでいます。ルイスキャロルの不思議の国のアリスから付けました。樹木図鑑やキャンプ場ガイドを発行しています。40年近く、ずっとオフィスが狸小路の近くにあります。狸小路の回し者ではないですが、今回は狸小路の魅力を語らせてもらえればと思っています。

①まずは、その歴史からひも解く。
 1丁目から10丁目までを狸小路と呼んでいます。道内は新京極通りや五条新町など本州の地名が多い中、オリジナルで札幌で名前が付いたのは狸小路ぐらい。
開拓使が明治2年(1869年)に置かれ、大通公園を堺に北は官地、南が民地として発展しました。南側の西5、6、7丁目は開拓使の住居となり、味噌醤油を買う場所が必要で商店ができました。さらに駅前通りから西の方、1~3丁目に飲食店が多くできました。寄席や芝居小屋もできて、勧工場(かんこうば)というデパートのようなもの、小さな店が並ぶ横丁のような場所もできてきます。
そういう場で飲食店でおしろい付けた女性たちが酔客を騙したと…。そのあたりが名前の由来です。札幌は民間の人が作った町ではなく、ロシア、北方警備のために意識的に作った町。ブラタモリを御覧になった方もいると思いますが、札幌は和人2戸7人だったという記録が残っています。それが今は194万人。最初は男性ばかり来ていたが、(本州の家に戻らず)男性に残って仕事をしてもらうためにススキノ遊郭ができました。
狸小路とネーミングされたのは明治6年(1873年)です。

②雨露しのぐアーケード
 昭和3年に鈴蘭灯が完成(鈴蘭の形のあかりがあるアーチ型の門)。商店街の人たちは言いたくない過去かもしれないが、酒、春を売るというのもありました。でも、どの都市の繁華街もそうです。狸小路がそこからさらに発展したのは、映画館ができたのが大きいのではないでしょうか。松竹遊楽館や第一神田館など。サクラビヤホールというビヤホールもあったんですよ。
 昭和35年に第1次アーケードが完成。雨露がしのげて画期的でした。全道各地からいろんな人が買い物に来ました。羊蹄山麓の俱知安町の小学生だった私も、1丁目から7丁目までのアーケード、なんてすごいことだ!と感激。キクヤレコードは、田舎ではシングル盤を買うのさえ大変だったのに、そこには視聴室がありました。現金つかみどりとかもビックリしました。

③黄金回路と衰退

 <黄金回路>
市電は12月にループ化されますが、当時はループでした。駅前から狸小路まで来て、まず金市館で下着を買い、丸井デパートで上のおしゃれなものを買い、買うかどうかは別として三越やサンデパートを回るのが黄金回路と言われていました。
 さらに大きく変貌したのが1972年の札幌オリオンピック冬季大会です。
(写真を見ながら)金市舘や山福さん。山福さんはものすごい老舗で、開拓使の蕎麦職人として渡道したというぐらい古いんです。母の買い物待って、山福か鍋焼きうどんで有名な百留屋さんでお昼、その後のクリームソーダが楽しみでした。
 今年1月に閉まった狸小路の中川ライター店もものすごい古かった。跡地は札幌ドラッグストアになりました。札幌の町は展開が早い。五番舘も無くなって、拓銀も地下の金庫の一部だけ残したけれども他は無くなって…。喪失感があります。建物の一部を開拓の村に移すというのも難しいようです。
アジア、台湾から来て札幌らしいところ歩いてみたいという人に、今の駅前ゾーンはどこの町とも同じような風景なので、わたしは昔から狸小路を案内しています。だいぶ変わってしまいましたが、はじとはじが面白い。真ん中の老舗はどんどん無くなっていて。

 <横丁の衰退>
狸小路が衰退した理由の一つは、横丁がなくなったことと言われてます。狸小路は昔は南二条通と三条通に通り抜けができる横丁がいっぱいあったんですね。勧工場の名残、面影の横丁です。樺太の引き揚げ者3人で作った三京食堂のあった2丁目の共栄館とか。
ところが、札幌オリンピックに向けて、昭和40年代(1960、70年代)にコスモ(現・札幌ナナイロ)とエイト(現・アルシュ)という二つのビルが角にできたために、人の流れをせきとめてしまった。また、駅前通りを広げることで、路面店をビルの上の階に収容してしまって、人の流れが変わってしまったんです。
三越十字街に富貴堂という、すばらしい本屋さんがあったのですが、そこもパルコになった。富貴堂も勧工場出身でした。金市舘も小さなモスリン店やって大きくなったが、これも3丁目の勧工場出身。勧工場にはいろんな物語があるんですね。
 札幌146年の歴史の中で狸小路は140年の歴史がある。狸小路の中に札幌の歴史が詰まっている。狸小路が元気になれば、函館の駅前商店街の人とかも元気になるのではと言われています。

<さらに新しい動き>
今はアジアの人達が爆買いに来ている。10~15年ほど前には、果物店で台湾の人がリンゴをじーっと見ていた。台湾の方はスイーツがものすごい好きなんです。ささやかな買い物を楽しんでいた。今は中国のお金持ちは薬や化粧品、おむつなどを買っている。6丁目にバスで来てとめる。ドラッグストア回る。
 また、狸小路は今は3代目、4代目の時代になってきて、少しずつ変わってきています。今は静内で使われているらしいですが、鈴蘭灯もなくなって…。たくさんあった横丁が全部無くなって、回遊できない。たた一つ残っているのが狸小路市場。いなりという居酒屋やキムチという名の焼き肉店、札幌バルなんかがあります。

④狸小路の魅力

 もう一つの狸小路の魅力は路面店であること。木造家屋に昭和の雰囲気が色濃く残っています。今の若い人は昭和の物が好き。上手に使っている。7丁目は第二次アーケード(昭和57年にできた)を作る時に離脱したので、古いアーケードが残っています。この古いアーケードのおかげで、無国籍アクションというか不思議な雰囲気になった。ここにはイタリア料理店やらスペイン料理や日本の居酒屋もあって。夏は外で飲めるようになっていて、非常に面白い通りになってます。
4、5、6丁目は割と老舗。今は7丁目から外れが面白い。若い人がいろんなお店作り始めた。7丁目には「たぬきスクエア」というのができて、いろんな小さなお店が入っている。8丁目には「タヌハチ」という小さな雑居ビルができました。そこにも小さな店がいっぱい入っている。歩いてみると、古い建物を上手にリフォームして使っている。ユニークで個性的で面白い。10丁目まで歩いてもらうと楽しいと思います。

市内にはなかなか古い商店街がありません。朝日新聞でレトロ建物グラフィティーという連載をしているので、本郷商店街とか発寒のほうとか探したけど残っていないんです。破壊と創造を繰り返して都市は進んでいくと言った人がいますが、札幌はその代表的な都市なんじゃないでしょうか。私は1972年の札幌オリンピックでどう町が変わって、何が無くなったかに興味がある。写真やスケッチしてないと残っていないんですね。

⑤狸小路テーマソングの変遷(会場で実際の曲を流しながら)

 狸小路にはすごいコマーシャルソングがあります。

 •「ぽんぽこサンバ」 これは昭和50年、小林亜星さんが作りました。
 •「狸小路のうた」 昭和37年にできました。野坂昭如作詞、いずみたくさん作曲。歌っているのはボニー・ジャックスと朝丘雪路さん。どんなに狸小路にお金、勢いがあったか分かります。
 •「狸小路ばやし」「狸小路の歌」 いかにも昭和の歌謡曲って感じです。(六甲颪や東京五輪のオリンピックマーチなどを手がけた作曲家)古関裕而さんが作っています。

 1975年(昭和50年以降)は新しい歌はできていません。また、狸小路らしい歌がほしいですね。新しい歌を作ろう運動でもやりましょうか。

●最後に…
 こういうサブカルのことを「グラフィティー」シリーズとして、ずっと書いてきました。「喫茶店」「酒場」「狸小路」とやってきて、今は道新で「老舗」を連載させてもらってます。前に朝日新聞で連載した映画館の話をまとめた「ほっかいどう映画館グラフィティー」も出ました。ご興味がございましたら読んでいただければ幸いです。
 

☆抄録 栗山麻衣(くりやま・まい、俳句集団【itak】幹事・銀化、群青)
 
 





2015年12月14日月曜日

第23回イベント 『学校祭展示再現と高校の文芸部の活動紹介』



北海道札幌琴似工業高等学校文芸部
学校祭展示再現と高校の文芸部の活動紹介

 
2006年、30余年ぶりに部活動として復活した琴似工業高等学校文芸部。今年は活動を再開してから10年目に当たります。今回はその10年間を振り返るとともに、【itak】会場に文芸部の学校祭展示を再現し、部員が皆さんに高校の文芸部の全国的な活動内容を解説します。
 
 
 
学校祭での短冊・色紙・パネル・模造紙の展示を再現
30号まで発行した札幌琴似工業高校の文芸部誌の展示
・全国150校余の文芸部の文芸部誌の実物展示
・普段の活動と年間8種類の大会の内容を紹介

※部員生徒がそれぞれ解説し、みなさんには自由に
見学していただきます。ご質問なども遠慮なく、
自由に行ってください。

*とき 平成28年1月9日(土)午後1時~4時50分
*ところ 北海道立文学館講堂(札幌市中央区中島公園1-4)
*参加料 一般500円、高校生以下無料
 
●第1部 北海道札幌琴似工業高等学校文芸部
  『
学校祭展示再現と高校の文芸部の活動紹介
      文芸部顧問 佐藤啓貢+文芸部生徒一同
札琴工文芸部はこれまで、全国高等学校文芸コンクールの詩・俳句・文芸部誌部門において8年連続全国入賞を果たすなど、道内の文芸部の中でも活発な活動をしている一校です。俳句甲子園札幌会場にも毎年出場し、今年は【itak】でもおなじみの村上海斗君が最優秀作品賞受賞、細川大君が北海道代表で来年の「全国高等学校総合文化祭・俳句部門」に出場が決まるなど活躍著しいことは皆さんご存知の通りです。

●第2部 句会(当季雑詠2句出句・投句締切13時)
●懇親会のお申し込みもお受けします。

 
俳句集団【itak】イベントは新年も
毎奇数月第二土曜日13時から道立文学館にて開催!

2015年12月12日土曜日

第23回俳句集団【itak】イベントのご案内


俳句集団【itak】事務局です。
冬至まであとわずか。街はクリスマスムードとなっております。
第22回イベントには70名ものご参加をいただき、
ありがとうございました。

トークショー『いま、狸小路がおもしろい!』はいかがでしたでしょうか。
ご感想などお寄せいただければ幸甚です。

抄録は【itak】ブログにて近日公開予定です。
またブログでは皆さんの各種ご寄稿・情報もお待ちしております。
下記内容にて【itak】の第23回イベント、展示と解説を開催いたします。
新年早々の企画になりますが、【itak】は奇数月第2土曜日を動かしません。
どなたでもご参加いただけます。
多くの方々のご参加をお待ちしております。
第一部のみ、句会の見学のみのご参加も歓迎です。
実費にて懇親会もご用意しております。お気軽にご参加ください。

◆日時:平成28年1月9日(土)13時00分~16時50分

◆場所:「北海道立文学館」 講堂
     札幌市中央区中島公園1番4号
     TEL:011-511-7655


■プログラム■

 第一部 展示と解説

 北海道札幌琴似工業高等学校文芸部
   『学校祭展示再現と高校の文芸部の活動紹介』
 

 展示と解説 文芸部顧問 佐藤啓貢+文芸部生徒一同

 第二部 句会(当季雑詠2句出句)

 <参加料>
 一   般  500円
 高校生以下  無  料

(但し引率の大人の方は500円を頂きます)

※出来る限り、釣り銭の無いようお願い致します。
※イベント後、懇親会を行います(実費別途)。


 会場手配の都合上、懇親会は事前のお申し込みが必要になります。
 会場および会費など、詳細は下記詳細をご覧ください。


■イベント参加についてのお願い■

会場準備の都合上、なるべく事前の参加申込みをお願いします。
イベントお申込みの締切は1月7日とさせて頂きますが、締切後に参加を決めてくださった方もどうぞ遠慮なく申し込み下さい。
なお文学館は会場に余裕がございますので当日の受付も行います。
申し込みをしていないご友人などもお連れいただけますのでどなたさまもご遠慮なくお越しくださいませ。



お申し込みには下記のいずれかを明記してくださいませ。
①展示と解説・句会ともに参加
②第一部展示と解説のみ参加
③第二部句会のみ参加(この場合は前日までにメール・FAXなど
で投句して頂きます。)
特にお申し出のない場合には①イベント・
句会の通し参加と判断さ
せていただきます。
なお、第一部からご参加の方の投句の締切は当日13:00です。

天候や交通状況で間に合わない場合等は、13:00までに
  itakhaiku@gmail.com まで投句ください。

◆イベント後・懇親会のご案内◆

会場:キリンビール園 本館 スペースクラフト
    中央区南10条西1丁目1-60
時刻:17:30~19:30
会費:4000円(飲み放題つき)


  ※イベント受付時にご精算をお済ませください。
  ※当日のキャンセルは後日会費を申し受けます。
  ※中高生、小学生はお問い合わせください。


準備の都合上、こちらは必ず事前のお申し込みをお願いします。
懇親会申し込みの締切は1月5日とさせて頂きます。
以降はお問い合わせください。

参加希望の方はイベントお申し込みのメールに ④懇親会参加 とお書き添えください。
ちょっとでも俳句に興味ある方、今まで句会などに行ったことのない方も、大歓迎です!
軽~い気持ちで、ぜひご参加ください♪
句会ご見学のみのお申込みもお受けします(参加料は頂戴します)。


北海道立文学館へのアクセス
※地下鉄南北線「中島公園」駅(出口3番)下車徒歩6分
※北海道立文学館最寄の「中島公園」駅3番出口をご利用の際には


①真駒内駅方面行き電車にお乗りの方は進行方向先頭部の車両
②麻生駅方面行き電車にお 乗りの方は進行方向最後尾の車両にお乗りいただくと便利です。

 

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2015年12月4日金曜日

俳句集団【itak】第22回句会評⑥ (橋本喜夫)


俳句集団【itak】第22回句会評⑥

  
2015年11月14日


橋本喜夫(雪華、銀化)
 
 
 育メンの厚きマフラー伊達メガネ   山鹿 浩子

 育メンという新しい措辞。やはり俳句に仕立てずらいのだが、掲句は育メンというひとつの文化に表現型を与えた。こんなタイプが多いですよという ひとつの断定である。惜しむらくは句が三段切れになっている感じなので、「育メンのマフラー厚く伊達メガネ」とした方がよいかもしれない。あくまでも一案だが。


 ちくたくと枯葉の積もる性周期    ふじもりよしと

 この句も面白い。ふたつの面白みがあり、ひとつは「ちくたくと」というオノマトペの措辞と座五の「性周期」いままで性周期を俳句にしたものはあっただろうか。ちくたくとの措辞と性周期が遠く響き合うのであるが、離して置いたのが成功している。「性周期は枯葉が積もりゆくようなもの」というメタファーが斬新である。


 成仏に少し間のある十三夜      五十嵐秀彦

 「十三夜」という季語は秋の暮と同じようになかなか難しい。一見何でもついて俳句としてなりたつのだが、季語として強すぎて浮いてしまう俳人泣かせの季語なのだ。さて掲句であるは、成仏までに少し間のある初老期の作者がおそらくは、仏間にひとり座っている。そこに十三夜の月が照らしているという景だ。一見よさげだが、これがこの季語のブラックホール的な深淵さと難しさである。十三夜をつけたことで どんな措辞も空疎に嘘くさく響いてしまう。そして十三夜の使用が好きな作者である。


 散銀杏シャンソンひとつ残りけり    平  倫子

 イブモンタンの枯葉があるので、どうしてもそこに引っ張られる恨みはあるのだが、上五で銀杏散る とか 枯葉散る で納めないで「散銀杏」と少しひねりを加えたこと。もう風で吹き飛んだが、掃き清められていちまいしか残っていない銀杏の葉を「シャンソンがひとつ残る」とメタファーしたことに工夫が感じられる。

 



以上です。俳人はすこしばかりくさされても、取りあげられた方が黙認されるより嬉しいと個人的に最近つよく思うので、今日は多めに取り上げてみました。誤読、誤解、失礼はご寛恕ください。


(了)


※人気企画の橋本句会評の継続を直訴してくださった方に深く御礼申し上げます。よしをさん、また来年もよろしくお願いいたします!(事務局 J)

2015年12月2日水曜日

俳句集団【itak】第22回句会評⑤ (橋本喜夫)


俳句集団【itak】第22回句会評

  
2015年11月14日


橋本喜夫(雪華、銀化)
 
 
 マシュマロに歯並び刺さる雪夜かな   今井  心

 わたしも最後まで選句候補に残った句だが、最後に落とした。なぜか?「マシュマロに歯並び刺さる」までとても面白い。真白いやわらかいマシュマロに歯茎が刺さった景がありありと想像できてシュールである。最後の「雪夜かな」の落とし込みが、なんとなく白だけのアナロジーで予定調和かなと思ったから。どうせシュールで面白い句なのだから、「マシュマロに歯並びささる雪をんな」と完全に虚構に走るという手もあるだろう。


 割りきれぬ数字の憂さや青蜜柑     瀬戸優理子

 家族3人なら3で割り切れぬ数の果物があり、それを家族で不均等に分配する。そんなときは作者は日常でほんのすこしだけ憂鬱を感じたというのだ。どうでもいいことを「憂さ」と言ったことで句になった。食べ物を切り分けるとき「数が合わない」とか「割り切れぬ数がある」という句は他にもあるが、この句のコアは「憂さ」とまで言い切ったことである。
 「青蜜柑」の青が「憂さ」と共鳴している。この「憂さ」という感情や精神状態をあらわに表現しない方が俳句は上質と教える結社もあるが、そんな方にとってはこの「憂さ」が邪魔に感じられるかもしれないね。


 クリスマスツリーへ斧をふりかぶる    村上 海斗

 この句は佳い。「十三日の金曜日」のような景だ。きらきらした倖せともいえる、クリスマスツリーを凝視して、振り返れば「斧をふりかぶるジェイソン」がいるのだ。怖い句になってゆく。そんなつもりで作ったわけでないかもしれないが、「斧をふりかぶる」という非日常性がとてもリアルである。


 梟のひと鳴き星を巡らせて         栗山 麻衣

 この句も大きい。星を詠うのは大きすぎて空疎になりがちというのは、前にも述べたが、この句は梟の鳴き声が地球を一回りするという句意。これもさっきのおかわり氏のときに述べた後者のパターンに属する。地球や星という巨大なものとの取り合わせという観点でいうと、「ふくろう」の選択は新しい。梟のひと鳴き でかるく切れて、そのつぎの「星を巡らせて」の措辞がとても秀逸で詩的。天文上回るという大きさもあるが、年月が巡るという時間のひろがりもある。


(つづく)