2016年8月9日火曜日

俳句集団【itak】第26回句会評⑥ (橋本喜夫)

俳句集団【itak】第26回句会評⑥

  2016年7月9日
 
橋本喜夫(雪華、銀化)


 猫の絵に暑中見舞いを語らせて   河原 小寒
 
一読切れのないつくりであるが、それも味がある。暑中見舞いに描かれていた猫の絵が「おあつうございます」と語っているのである。おそらくは文字が書かれていなくて、猫の絵だけが描かれている暑中見舞いが届いたのであろう。「猫の絵が描かれて暑中見舞いかな」といった内容なのだと推察する。
 
 
 一日をはじめたくないげぢげぢ    田島 ハル
 
これが「一日をはじめたくない毛虫かな」 だとつまらないのかもしれぬ。「げぢげぢ」の座五の4音が不安定感のある無重力俳句を実現している。ケムンパスのような漫画を思い出して、ヒトコマ漫画のような俳句である。
 
 
 山車去りて骸背負いし蟻の列     高畠 町子
 
お祭りの山車がさったあとで、地面を見ると蟻も同じようにエサを必死に運んでいるという、マクロからミクロへの転換の句。俳人を長くやっているとこの「て」が気になるのであるが、これをどうすべきがいい代案が浮かばない。しいてあげれば「山車のあと」と時間経過だけを示してもいいのかも。ちなみに「て」についてもう少し触れておくと、「て」が入ると説明くさくなりませんか ということなのです。
 
 
 噴水はフォルテ告白するは今     松原 美幸
 
スピード感のある恋の句でよくできているし、高点句にもなった。噴水の前でのべたな告白なのであろうか。噴水の強さはフォルテなので、告白するなら今だよ、しかもフォルテシモで告白しないと聞こえないぞ  なんていう句意。私ならピアニシモで告白したいな。私のことなんかどうでもいいか。 

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