2015年4月1日水曜日

『やぶくすしハッシーが読む』 ~第18回の句会から~ (その3)



『 やぶくすしハッシーが読む 』 (その3)


 ~第18回の句会から~

橋本 喜夫 


 手袋を花のごとくに振る別れ      熊川 陽子
 
手袋をふる動作を「花のごとく」という意外な直喩を使用。これが意外に成功していると私は思う。白い手袋ならばなおさら感じが出ると思われる。しかも全体に比喩を用いて冬から春への転換時期、いわゆる季節感も出ている。しかもこの季節の別れのシーンも詠めているし、冬の別れでもある。
 
 猫の家出海が明くやら晴れるやら   藤原 文珍

猫の家出=恋猫なのかもしれぬ。季語としては「海が明く」を採用しているのも秀逸。いずれも春のこの時期の季節感が出ているし、猫も家を出て、流氷も陸を離れ、「外に出よう」といううきうき感覚もある。とってつけたような「晴れるやら」が意味ももたないのが、なおさらいいと思う。

 輪唱のごとくに蝶のまつはれり     鈴木 牛後

初蝶は一羽、二羽と時間差で現れて舞い始め、ランデブーのような実景を、「輪唱のごとく」という時間差のある意の比喩を使用した。比喩はこのようにぴたーとくるものでなくて、7割くらいは違和感のある方が成功すると思う。(つまり3割くらいに相同性があればそれでいい)これもある意味視覚の景を聴覚の比喩で変換している。「まつはれり」でうまく着地した。

 春疾風タリーズカフェに駆け込んで  田口三千代

まさに実景であろうか。いずれにしろ一時的な風を避ける意味で「タリーズ」に入りゆっくりと珈琲をいただく。中七の固有名詞も効いていると思うし、春の季語を選択したのも正解であると思う。

(その4につづく)
 
 

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