俳句集団【itak】第10回イベントを終えて
橋 本 喜 夫
今回、矢口氏には「アメリカの詩と私の詩」と題して、詩の解説と朗読会を生で見せて頂いた。矢口氏は1932年、宮城県石巻市生まれで、現在札幌市在住。1996年から北星学園大学勤務で、現在同大学名誉教授。私は詩人の講演をお聞きするのははじめてであったが、大変興味深いものであった。まず、アメリカの20世紀の詩人たち5人を選び、それらの作品を解説し、代表的一編を、英語と氏による和訳で朗読していただいた。私が感心したのは(私はもちろん英語ネイテイブではないが)、氏の英語の原文の流麗な朗読であり、たいへん感激した。それこそが、詩が韻文であることの神髄なのかもしれない。つまり意味がよくわからなくても、音として心に入り込み、癒された気持ちになるのである。
これらアメリカの詩は基本的にキリスト教がバックボーンとしてあるため、世の終わり(終末思想)という考えがある。このことが日本の詩との違いなのかもしれないと矢口氏は語っていた。英語の詩は基本的に韻を踏んでいて「弱強弱強弱強」と読んでゆくこともはじめて知った。氏は反戦詩人としても有名であるが、石巻市出身でもあり、今回の震災以降さらにその思索を深めていったことは、想像に難くない。
矢口氏自身の詩では時間の都合の中、四篇の朗読を聞くことができた。特にズーズー弁による「プロポーズ」の朗読のあとは会場に集まった中高年の女性たちから思わず拍手が沸いて、たいへん微笑ましい、印象深い朗読であった。「村の井戸ー石巻市大川でー」はあの有名な甚大な被害をうけた地であり、感慨深く聴かせてもらった。「迫撃砲」は矢口氏が高校時代アルバイトで掃除をしたアメリカ軍の迫撃砲がほどなく、朝鮮戦争が始まって、なんと自分が丹念に拭いたあの迫撃砲が朝鮮兵の殺戮に使われたことをなまなましく語ったものである。「詩ではないかもしれないが、どうしても言っておきたいこと」は著書のタイトルにもなった詩であり、みな真剣にその朗読に聞き入っていた。
矢口氏は長く教壇に立たれていただけに、話も流暢でかつ、落ち着いた口調でとても説得力がある講演であった。その後の、句会までの休み時間で、矢口氏が持参した著書はすべて完売したことは言うまでもない。
イタックは「俳句集団」でありながら、そのイベントは俳句プロパーにこだわらず、他の分野や、関連のある短詩型の話など広い視野でイベントを組んでゆくスタンスだ。このことも他の俳句集団と一線を画しているのではないだろうか、と自画自賛しておく。また来年も、イベント、句会と企画がありますので、いつも参加してくれる俳人、歌人のみなさま、来年もよろしくお願いします。
~俳句集団【itak】事務局より~
俳句集団【itak】のイベントは隔月(奇数月)の第2土曜日の開催です。いつもは中島公園の北海道立文学館で行っていますが、年明けの第11回イベントは館のメンテナンスのために札幌資料館(大通西13丁目)に会場を移しての開催となります。
第一部の企画は札幌出身の作曲家・久保田翠さんによる音楽の企画を予定しております。どなたでも参加できますので、このブログ等を読んで興味をお持ちになったなら、ぜひ気軽にいらしてください。
第一部の企画は札幌出身の作曲家・久保田翠さんによる音楽の企画を予定しております。どなたでも参加できますので、このブログ等を読んで興味をお持ちになったなら、ぜひ気軽にいらしてください。
オープンな雰囲気の中で、音楽と気楽な句会を楽しみましょう。そして「俳諧自由」をみんなで体験してみましょう!
企画詳細については改めてご案内いたします。お問い合わせなど、随時承っておりますのでよろしくお願いいたします。
itakhaiku@gmail.com
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詩が音を伴うことのすばらしさ、あらためて強く感じたイベントでした。読んだ時の音としての面白さや、字面の見た目の面白さ…。詩も俳句もさまざまな楽しみ方、心への届き方があるのだなあと思った次第です。矢口先生に感謝するとともに、幹事のみなさま、ありがとうございました(麻衣)
返信削除ほんとうに矢口先生のお声とことばが響いて、すばらしかったですね。
削除いい一日になりました。橋本先生、会のレポートどうもありがとうございました(ひらりん)