俳句集団【itak】第6回イベントを終えて 五十嵐 秀彦
「少し胸を張りたい」
これは参加者が少ないかもしれない、との予感。
あれ? 幹事は来られるのか?
幹事が来なくちゃ事務用品やらお金のことやらなんにも揃わないので、イベントそのものが不成立になるかも!
いや、ホントに焦りましたよ。
けれど集合時間の12時に道立文学館に入ると、大丈夫、幹事が数名既に到着していた。
その幹事たちと一緒に、今回のメインゲストである佐々木美智子さんがオシャレな鍔広の帽子をかぶって坐っていらっしゃる。
そのことを確認して、まずはホッとした。
「おみっちゃん」こと佐々木美智子さんにご挨拶。
おみっちゃんはこのイベントのためにわざわざ伊豆大島から参加してくださったのだ。
ん?
そんな名前の俳人がいたっけ?
とお思いの方々もいらっしゃることだろう。
彼女は俳人ではない。
俳句集団【itak】第6回イベントの第1部企画。
そのタイトルは『酒場と写真と全共闘一代記』!!
〔↑amazonストア 『新宿、わたしの解放区』のページ〕
この本をおみっちゃんからの聞き書きでまとめあげた岩本茂之(碇)さんがitak幹事であったことから、この本にまつわる話をしてもらおうというのが最初の企画だったが、それがなんとおみっちゃんご本人も参加するという展開になったのである。
彼女は根室生まれ。上京後、新宿ゴールデン街でバーを経営したり写真家として当時ピークであった学生運動を撮り続けたり映画制作に参加したりと多方面にわたって60年代新宿という嵐の中を走り続けた人である。
その、あたかも語り部のような人を、現在お住まいの伊豆大島からお迎えしてのイベントなのだった。
あいにくの吹雪ながら、開始時間が近づくとどんどん人がやってくる。
またたくまに席が埋まって、50名の参加者となった。
岩本さんがパワーポイントで彼女の来し方を紹介し、また著書での彼の役割そのままにおみっちゃんに質問し話を引き出したりした後、彼女の自主制作短編映画「アリバイ」等の上映が行われた。
映画に記録されているあの時代の人々の顔顔顔。つぎつぎと「時代の顔」が映し出されていくのを見て、私には思わずこみあげてくるものがあった。
若松孝二、田中小実昌、たこ八郎、浅川マキ、原田芳雄・・・。
トークと映画を合わせて1時間のイベント。
短い時間ではあったが、刺激的であったしその場に居合わせた人たちの心の中に感動が広がっていく様子さえ感じられた。
会場には、おみっちゃんのブラジル時代の写真展示もあり、ここはいったい何のイベントなのかと不思議に思われるような雰囲気があった。
俳句のイベントでなぜこういうことをするのか、と思われた人もいたかもしれない。
しかし、俳句は俳句の中からだけ生まれるものではない。
俳句はさまざまな状況の中で、心が揺れ騒ぐところから、言葉の化学変化のごとく生まれてくるものではないだろうか。
であれば、【itak】の企画は俳句に限る必要などないと確信している。
これからも文芸をテーマとした企画を中心としつつもその間に、こうしたジャンルの異なる企画もドンドンと打っていこうと思っている。
その意味で今回の企画は有意義であったと思うし、私たちは少し胸を張りたい思いも持つのであった。
そして第2部はいつもどおりの句会である。その様子は別稿にお任せする。
今回も40名を超える規模の句会になった。
句会をやるには少々多すぎる人数だということは、言われなくとも分かっている。
しかし、メンバーを固定して新しい人を受け入れないようなことは少なくとも【itak】のやり方ではない。
何度も言っているように、2句と500円玉ひとつ持ってブラリと参加できる句座、それが【itak】だ。
私たちはこれからもその姿勢を崩したくない。
これ以上人数が多くなったらまた知恵を出して工夫をすればよい。
誰にでも開放されている句座。初心者もベテランも、無所属も結社人も、分けへだてなく参加できる句座。
それが【itak】だからだ。
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