俳句集団【itak】第30回句会評②
2017年3月11日
橋本喜夫(雪華、銀化)
句会のときも議論されていたが、ここの告知は恋愛告知とはふつう、思わない。やはり癌の宣告などの病気の告知または深刻な事態をお知らせする場面であろう。そこですこし緩い感じの「缶珈琲」が逆に存在感が出てくると思う。また亀鳴くという諧謔の季語を使用したことが、こういう場面に使われるのは逆に新しいと思うのだ。
夕張の空き家の太き氷柱かな 安田豆作
夕張という過疎の代表的な街が固有名詞として利いている。空き家なので、氷柱を落とすひともいないのだろうと理解できるし、納得できる。住居建築の専門家に言わせると、空き家にはそれほど氷柱はできないという、これも後から聞けば納得できる情報だ。
半島に青き点描流氷期 籬 朱子
これはヘリコプターやドローンで知床半島を俯瞰したときの景として理解できるだろう。今はむかしにくらべると小型化した流氷の塊を点描と比喩している。惜しむらくは流氷期とすると「時期」を示すのでここは景としては「流氷野」とすべきだと思うが・・・。
漢気の軸のぶれなき卒業歌 三品吏紀
卒業の句として珍しい素材。おそらく男子校もしくは水産高校、工業高校などの校歌であろうか。おそらく時代錯誤といえるような男気にあふれた校歌の「詞」なのだと思う。中七の「軸のぶれなき」がなかなか骨のある措辞で、ほほえましい。
み仏も趺坐くづしませ春の闇 草刈勢以子
中七の「くづしませ」が非常によい。そしてそれに「春の闇」という季語の選択がもっとよい。春の柔らかい闇の中だからこそ、「仏さま、どうぞ胡坐をゆるめて楽にしてください」という作者のこころもちも温かく伝わるのだ。
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