俳句集団【itak】第30回句会評③
2017年3月11日
橋本喜夫(雪華、銀化)
鯛焼の雄(国産)を箱で購ふ 青山酔鳴
タイ焼きの雄で国産を箱ごと買ったというまさに嘘っぱちであるが、一種の発見かもしれない。タイ焼きを買いつつ、おそらくスーパーで並んでいる魚貝類に思いを馳せたのだろうと想定する。
蕗味噌の苦み嬉しや生きてをり 高畠霊人
蕗味噌を食べたときの、ことしも春を迎えられたという喜びを句にした。たしかにはずんだ心持が表白されているが、やはり「嬉しや」が問題と言えば問題なのかもしれない。「嬉しや」がなくても、苦みを味わい、「生きてをり」の措辞があれば理解できるので。
草間彌生似の犬通る春の闇 高畠町子
三年に一度くらい句会に登場して高点句になる草間氏である。笑える句であるが、草間フアンには見せられないかも。「春の闇」がゆるめる、深刻さがないという意味ではいいのだが、闇の中で顔が似ていることが本当にわかるかしら?なんて思う。「春の昼」とか「蝶の昼」で十分面白いのではと思う。ちなみに私むかし「ビクターの犬に似たひと山笑ふ」という句をだして、うけたことことがある。
僕を俺と言ひなほすひと春の闇 横江泰子
この句もある意味現代の若者それも男の子の現状をよく見ている句だと思う。草食系と思われたくない草食系男子が、見栄をはって言いなれない「俺」を連発している姿がほほえましい。春の闇の季語がどうなのかという、恨みは残るのであるが・・・
ぽちっとなのぼりのボタン押して春 平野絹葉
句会でもみなさんがコメントしていたが、この句の面白味は「ぽちっとな」の措辞であろう。一青窈の作詞みたいな、おもしろい魅力的な措辞だ。春への展開もかろやかである。エレベータのボタン押すたびに「ぽちっとな」と言ってしまいそうだ。
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