葉子が読む(その5) 「男と女」
「男の目・女の目」
句会で披講前に「この句は女性だろうな」とか「これは男だよ」
などと勝手に思ったりしている。
ところが披講されると驚いたことに「これが貴方さまの句ですか?」
と言いたくなることが多かった。逆もしかり。
本当に面白いものだ。男だからとか女だからとかとばっさりと
分けてしまうつもりは毛頭ない。
しかし、微妙に違う男の目と女の目。
DNAに組みまれてでもいるかのような違い。
そこがまた面白いと思う。
男と女 その1
イヤリング片方失せし夏の恋 坂入隆人
これは女子でしょ!と思っていたら・・・・男性の句であった。
もし、これが女子の句であったなら失恋の句ということで
簡単に素通りしてしまうかもしれない。
が、男性の目だった。
この句のポイントは「夏の恋」と結んだところだろうか。
イヤリングを落とす程度のものさ。と。
夏に生れた恋は成就しないとかなんとやら。
悉く夏の恋というものは、堕ちやすく覚めやすい。
そこをイヤリングに例えて失せたという。これが男の目かも知れない。
もし、女ならきっぱり「恋失せし」とか言っちゃうのかもしれない。
現代の若者の恋はとんとわからないが。
男と女 その2
意気地なし背中が申すサングラス 松林槇子
意気地なしー!って思うことはよくある。自分にも。他者にも。
これは男を見る女の目だろうかと考えていたらやはり女の目だった。
「背中が申す」が面白い。この「もの申す」というのはどうやら
パートナーのように思えてならない。
或いは背中が「俺って意気地なしなんだよな・・・・」と言っているのかもしれない。
何れにせよ、「意気地なし」に情を感じる。サングラスという小道具は嵌っている。
これは、何方が意気地なしと申しているのか迷うところではあるが。
あたしは、男が背中で意気地なしと申していると思う。
ちょっと胸がキュンとする。
男と女 その3
鈴ひとつつけてをんなと山滴る 早川純子
掲句。あたしには大問題作だった。
鈴ひとつつけて。山滴る。
熊の季節でしょ?鈴ひとつで大丈夫?・・・・・・
ううむ。難しい。「をんなと」と言っているのだから
鈴をつけているのは「をとこか?」鈴は何かの象徴なのか?
あぁ・・・なに一つわからない。をんなと山滴る。だ。
「ただならぬ関係の二人」ではないだろう。
「をんなと」といっている。鈴をつけているのが男とはいっていない。
だが「ただならぬ男とをんな」でなければ鈴を一つにしないだろう。
滴る山へ何か覚悟を持って入って行くというのだろうか?
男と女 その4
夕暮れや砂利道急ぐ浴衣かな 川中伸哉
見事に情景が見える。よく「景」が見えるとか言うが
掲句の場合情景と言いたい。夕暮れや。と強い切れ。
暮れて来ると足元が見え難い。そこは砂利道。
急ぐと転ぶよ危ないよ。と作者は思う。
浴衣の裾のひらひらと動くさまや、両手でひょいひょいとバランスを
とりながら急ぐ少女(ここで確認。少女だよね!)の姿が生き生きと見える。
なぜ、句会で選ばれなかったか・・・・わからない。
さて、作者は男だ。句の中のには女性だ。
句の中には女性と、読み解けば案ずる男がいる。
作者に言いたい。おぬしなかなかやりますな。
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