2014年7月27日日曜日

『りっきーが読む』 ~第14回の句会から~ (その2)


『 りっきーが読む 』 (その2)

 ~第14回の句会から~

三品 吏紀
 

 アイスコーヒー水滴いっぱい長話し   江崎 幸枝


喫茶店に入りアイスコーヒーを二つ注文する。
でもそれはアイスコーヒーが飲みたいというよりも、ただただ気の置けない友人とお喋りがしたいが為のツールであるだけなのだ。
話に興じているうちにアイスコーヒーのグラスには水滴がいっぱい、氷も融けてコーヒーは薄くなっている。 それでも気付かずに延々と長話をしている二人の様子が目に浮かんでくる。
男性は酒の席でもない限り、そうクドクド長話を好むものではない。おそらく女性の視点から詠んだ句なのだろう。女性の特徴というか習性というか、そんなものが現れている。
アイスコーヒーに女性の長話というのも、夏の風景の一つと言えるのではないだろうか。


 夏花摘む言葉は死者のためにある   橋本 喜夫


宗教的な論議は抜きにして、葬儀とは死者を安らかに送るものではなく、実際は我々生者のための儀式だと私個人は思う。 故人の死を受け入れ、遺されたもの達だけで生きていくという周知のセレモニーだ。
死者に対してどんなに美しい花を添えても、大好物だったものを捧げても、死者はもう愛でることも食べることもできない。ただただそこにあって、朽ちていくだけだ。 我々生者の勝手なエゴなのだ。
だったらせめて、言葉を捧げよう。
言葉は言霊、想いを載せた言葉はきっと故人へと届くはずだから。

                                かわの
 真昼間のシャンパンワイン夏料理   河野美奈子


んまぁ。昼間っから豪勢ねぇ~~!!なんて思ったりしたけど、考えてみれば自分もオフの時は朝酒昼酒お構いなしだったわん(笑)中七のシャンパンワインの単語の並びが、上手く音のリズムが取れてるように思う。
これがワインシャンパンだとちょっと座りが悪いかな?
昼間に飲むお酒っていうのは、ちょっとした優越感を感じられるのが楽しい。
周りは限られた時間で昼飯をかっ込みながらの忙しい昼休みだけど、そんな人たちを差し置いて自分はワインシャンパンをゆるゆる傾けながら、ゆっくりした時間を過ごす。
これって堪らない至福の時間なんである。
この一瞬の至福を味わう為なら、日々の激務なんてなんてこと無いのさっ。


 無人駅ちよこんと置かる夏野菜    深澤 春代


地方の無人駅やバス停なんかではよく見る光景。近所の農家さんがわざわざ自分の畑で採れた野菜を、机の上に無造作に積んでいる。その横には一応つり銭箱らしきものは有るわけだけど、大抵がお菓子の箱をひっくり返したような呑気な作りのつり銭箱だ。防犯もヘチマも無いけど、不思議とみんな律儀にお金を払って、野菜を持っていく。むき出しのつり銭とかも盗ろうとしない。
失われつつある日本人の美しい原風景が、そこにまだ残っている。今の殺伐とした世の中で生きている分、温かみを感じるものだ。
 

(その3に続く)


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