2016年11月20日日曜日

俳句集団【itak】第28回イベントを終えて


俳句集団【itak】第28回イベントを終えて 

講演会 『うちらには日本語がある』

 
「言語と文化」

五十嵐秀彦
 
 
 
 
 
早いもので今年最後となる第28回イベントでした。

私たちの活動のホームとなっている北海道立文学館は中島公園にあります。
札幌の歓楽街すすきのの南にほぼ隣接する位置にある公園ですが、これが都心にあるのかとあらためて驚くこともある広く美しい緑地。大きな池もあれば、キタラという札幌市自慢の巨大な音楽堂や豊平館という歴史的建造物などが点在する中に、文学館が静かに立っています。

地下鉄南北線の中島公園駅をおりて、銀杏並木の道をぶらぶらと文学館に向かいます。四季折々の美しさを眺めながら【itak】イベントに向かうのがこの5年間の習慣となりました。
心地よい緊張感と期待に心を躍らせながらの道です。

 
今回の講演は、翻訳家・作家・通訳の山之内悦子さん。
山之内さんは松山生まれ。現在は一年の大半をカナダで暮らしているとのこと。今回、たまたまの帰国日程の中、わざわざ【itak】のために札幌まで足をのばしてくださいました。
演題は「うちらには日本語がある」です。

外国を活躍の場として翻訳や通訳の仕事をし、生活をしている中で、言語や母国語について考えさせられることが多いとおっしゃいます。
世界には多数派の言語と少数派の言語という関係が歴然とあり、少数派は差別されたり、ないがしろにされがち。これまで消滅した言語も多数あるわけです。
そんな話を聞くと、私たち北海道人はアイヌ語の存在を思わずにはいられません。
 

過去の長い和人による圧制によって滅亡寸前のところまで追いやられたアイヌ語を、いま多くの人がその存続のために努力していることはご存知のとおりです。
山之内さんは語ります。英語がいま世界の共通言語化しているけれど、そこには功罪があると。さまざまな民族が意志を伝えあえるという利便性がある反面、言語によって支えられている文化の多様性が失われる危険性も併せ持っているということを、様々な事例を挙げて語ってくださいました。
その説得力に満ちた語り口に参加者全員が引き込まれてしまいました。
言語と文化。その最たるもののひとつが私たちの俳句文芸なのでしょう。
教えられることの多い、豊かな講演会でした。
近日中にブログにアップされる抄録をご期待ください。
 
今回のイベントには、講演に55名、句会に53名、少し早い忘年会となった懇親会にも25名が参加くださって、またまた大盛会となりました。ご参加の皆様に感謝申し上げます。
 
 
さて、次回第29回イベントは2017最初の企画として、久しぶりに私・五十嵐秀彦が登場いたします。演題は「寺山修司俳句の解剖学」
私にとって寺山修司は2003年に彼を題材にした評論で現代俳句評論賞をいただくこととなった思い出の作家です。
思えば不思議なことに、これまで寺山に関する講演をしたことがありませんでした。
ぜひこの機会に謎と仕掛けに満ちた寺山ワールドを俳句を通して探ってみたいと考えています。

平成29年1月14日(土)13時から、道立文学館地下講堂で開催です。
ご参加を心からお待ちしております。



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