2016年10月2日日曜日

俳句集団【itak】第27回句会評⑥ (橋本喜夫)


俳句集団【itak】第27回句会評⑥

  2016年9月10日
 
橋本喜夫(雪華、銀化)
 
 
 夕花野瓶になで肩いかり肩      松原 美幸

中七以下の措辞たいへんよくできているだけに、先行句はあるかもしれない。しかし、夕花野はたいへん嵌っていると思われる。ただ中七以下の措辞があまりに佳いので、季語が本当にこれがベストかは不安もある、時雨や小夜時雨なんかも合ってそうだし、水の秋とか澄む秋でも合っているようで、なんとも微妙である。


 コーヒーミルク一滴の秋思かな    大原 智也

コーヒーに一滴のミルクをかける、ひろがる白雲と漆黒の渦をみて、秋の物思いにふける作者がいるという景。それほど珍しい素材ではないし、すべて形よくできているのだが、いわゆる一句一章の作りになっている。ここは「一滴のコーヒーミルク秋思かな」と中七で切断して、作るのも一案と思う。


 三個目の具なしおにぎり秋の空    久才 秀樹

一読魅かれたのだが、読者にゆだねる空白の部分が多すぎる感じがした。景が読めそうで読めない。秋の空の下、行楽にでかけて、三個目の具なしおにぎりを食べているのであろうが、それで腹いっぱいなのか、おいしいのか、つつましやかな感じを言いたいのか、満足しているのか、はたまた楽しいのか、むなしいのか が読めないのだ。つまりすべては読者にゆだねる部分が大きすぎる感じ。私はこの時期で具なしおにぎりなので、台風被災地の炊き出しのおにぎりなども想像してしまった。それならば「五百個の具なしおにぎり」であろうし、判断がむずかしい。


 「在宅の仕事あります」かたつむり   金子真理子

中七までの措辞はおそらく新聞広告もしくは広告ポスターの文面なのであろうが、とてもキャッチ―な措辞だ。ここにつけたのが「かたつむり」。会場で、ひきこもり的な評をしていたが、そんな感じもする。おそらく在宅→行動範囲が狭い→かたつむり という流れであるのだろう。以前も述べたことがあるが、季語以外のキャッチ―な言葉が見つかった場合はつける季語は、その言葉に引っ張られずに、植物の季語をつけるか、風の季語をつけると意外に無難にまとまる。


 つぶやきを蹴散らすごとく流星群   辻村 幹子

この句のコアは蹴散らすという比喩と流星ではなく、流星群を使ったこと。これはこれでいいのだが、座六がしまりが悪い感じ。「つぶやきを流星群が蹴散らせる」 でもいいのではないだろうか。
 


 髪が爆発ゆうべ星が飛んだとか   瀬戸優理子

朝起きたら髪が爆発というのは毛髪が豊かな女性ならとくにあるあるである。私には経験がない。爆発させてみたいものだ。その髪を鏡で見て、「ゆうべ流星が降ったのかしら」と言っている。とても詩的だ。流星という言葉だと髪が爆発する感じがいまいちそぐわないので、「星飛ぶ」 を使った。この措辞もうまい。


 

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