『 ムッシュが読む 』 (最終回)
~第15回の句会から~
恵本 俊文
覆水は盆に返らず星月夜 田湯 岬
星が月のように明るく輝いて見える夜だ。ちょっとした取り替えのつかないことをやらかしてしまったけれど、こんな夜なら諦められそうだ。月がとっても青い夜には遠回りして帰りたくなるのと同じように、なんだか何でも許されてしまいそうな、明るく穏やかな夜なのだ。
眠草仏わらひの稚児の夢 長谷川忠臣
遊び疲れた幼子が、うとうとしている。どんな夢を見ているのだろう。遊んでいる夢? もしかしたら、夢の中でも、疲れて眠っているのかもしれない。そんな想像をするだけで、なんだか嬉しくなってくる。ぼくに子どもがいたなら、こんな楽しい毎日を送ることができたのだなあ。ちょっと残念。
天高くみなそれぞれの旅鞄 三品 吏紀
澄み渡った大空の下にいると、旅行鞄を手に、気の向く方へ歩を進めたくなる。ただ、それは本当の旅でなくてもいい。数々の思い出が詰まった鞄を持ったぼくらは、生きているだけで、それぞれの旅路を歩んでいる。一歩を踏み出すなら、天高きこんな日なのかもしれない。
(了)
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