2014年7月31日木曜日

『りっきーが読む』 ~第14回の句会から~ (最終回)


『 りっきーが読む 』 (最終回)

 ~第14回の句会から~

三品 吏紀
 

 夏風邪の傷跡残す細き腕       田中  枢


私もまだ学生の頃に、酷い夏風邪を引いたことがある。
当時は一人暮らしで生活費の一部をバイトで賄っていたから、バイトは絶対に休めない。そんな思いで文字通り這うようにして近所の医者の所に行った覚えがある。
半袖から覗く注射や点滴の痕(実際には消毒綿で覆っているが)、思わず同情してしまう。夏の貴重な日々を風邪で潰すほど悔しい事はない。
句について気になったのは、上五からずっと一本調子の流れで説明的なのが勿体無いかなと思った。 その辺りをうまく工夫すれば、もっと目の立ち止まる句になるのではないかと思う。



 青葉闇二つの影を馴染ませて    増田 植歌


真昼の突き刺すような太陽を遮る、鬱蒼とした青葉の影の連なり。
そこには外界の灼熱地獄から逃れるように様々なコロニーが形成されている。散歩途中の幼子と母親、若いカップル、飼い主にピッタリと付き添う秀犬・・・。
大小様々な影が対をなして青葉の影の下でひととき息をつく。青葉闇の下、影と影が寄り重なり馴染む程に、お互いの結びつきは強くある。
夏の炎天を元気よく駆け回るのも良いが、こうやって青葉の陰で涼を取り、風を感じながら静かに時を過ごすのもまた、夏を味わうこの上ないシチュエーションだろう。



 水着など持たぬ熟女の脱毛よ    青山 酔鳴


水着、熟女、脱毛・・・・・・。
なぜだろう、この心揺さぶられる単語たちは。ホンッとバカね、男って(笑)。
幾つになっても女性は女性。別に水着になる事などもう無くても、常に美しくありたいという願望と努力。 世の女性みんなそうだろう。
でも男達はそんな姿を一歩引いた所から眺めている。男はある程度年を経ると「もう今更いいんじゃない?」なんてあまり身なりに細かい気を使わなくなる(基本自分のw)。だから醒めた視線で熟女たちを眺めるのだ。若い娘にはセクハラギリギリの視線を送るが(笑)。
そんな女性の必死さと男性の醒めた視線が相混じるような句だと思う。
・・・案外この句の作者は男性だったりして(笑)。
 
 
 成功のルールブックに蝿遊ぶ     高畠 葉子


「成功」とは。何をもって成功と呼ぶのかは人それぞれだ。ビジネス・学業・恋愛etc・・・。
私は自営業という立場であるが、毎日が思考・実践・反省の繰り返しだ。そして毎日条件・状況の変りやすい仕事でもある。「成功のルールブック」なんて物があったとしても、それにすがっていては何事もいつまで経っても上手くいかない。 そこには己の思考と責任が無いからだ。
己自身でリスクを背負い、考え乗り越えてこそ、初めて成功への道筋が見えてくる。
成功へのルールブック、そんなものが在ったとしても、蝿に遊ばせておけばいいのだ。
 

  (了)



 『りっきーが読む』をご高覧頂きありがとうございました。
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