2014年7月1日火曜日

『葉子が読む』 ~第13回の句会から~ (最終回)


『 葉子が読む 』 (最終回

 ~第13回の句会から~

高畠 葉子
 
 
 補助輪の外れたる時夏に入る     増田 植歌
 
 
北に暮らす私達にとって、自転車もまた春の訪れを感じるアイテムだ。
初めて自転車にチャレンジするのもまた春が多いだろう。
子らにとって補助輪無しの自転車を乗りこなす事は、かなり誇らしいはずだ。親にとっても誇らしい事である。
私自身、子どもが補助輪なしで自転車を乗れる様になった日の喜びを良く覚えている。
その時、まさに夏に入る。である。
こうして感動を思い出し、作者と共有できる十七文字とは!
 
 
 春昼や茶房の隅に居眠れり      吉村 佳峰
 
 
居眠りの場所をかの茶房と決めた作者であろう。春昼の時間を味わうための場所をあれこれ考えるのも佳き時間だ。この句を読む時、茶房の椅子を、卓を、音を、匂いを、想像してみる。そこに好みの飲みものを加えて居眠りをする。幸せだ。私は青茶をオーダーしたい。
 
 
 脚頸の細さ目に入る初夏の路     佐藤 天啓
 
 
色は言っていないこの句で一番最初に見えたのは「白い脚頸」であった。
通勤の時、前を行く脚が目に入る。黒タイツの季節が長く続いたが、ぼちぼち白い脚頸が増えてくる。
脚頸の細さが目に入るという作者の視線がちょっと艶っぽいなあ。
私は細かろうが太かろうが、白い脚頸ヴラボォ!である。
 
 
 粽結ふ秘密の時間閉ぢ込めて      及川 澄
 
 
端午の節句の由来ともなった粽。結ぶ糸は五色で子どもが無事育つ様にとの魔除けの意味を持ち鯉幟の吹流しの色に反映されているという。
私も五月になると、粽を作りたくなる。この粽を美しく結ぶのはなかなか難儀する。
挙句、クッキングペーパーなど使ってこしらえた事もある。さすがにこれはよろしく無い出来となる。
今年、粽をこしらえていない。「粽はないの?」と子どもから言われた。「ああ、面倒でねえ。」などと応えていたが、この句を読んで納得したのだった。
閉じ込める「秘密の時間」が無くなったからなのだ。
 
 
 結論は貴様しだいだ五月病      酒井 英行
 
 
貴様とは!痛快だ。五月病とは全く離れた言い分に魅かれた。
結論を貴様しだいと言い切っている。貴様って作者自身なんだよなあ。
鏡の前で映った己れに向かって指を指しているかのようだ。
貴様へのエール! 
 

 

(了)


『葉子が読む』をご高覧頂きありがとうございました。コメントなどご遠慮なくお寄せください。


 

2 件のコメント:

  1. 鑑賞ありがとうございました!!酒井英行です。
    まだ句歴が浅い為に句意が伝わり安心しました。他人に言ったのではイヤミな上司の写生句ですもんね(笑)

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  2. 酒井さま。コメントありがとうございました。葉子です。
    酒井さまの句を読ませて頂いてから何度か鏡に映る自分へ「あんた次第よ」と声に出してみました。
    これはいいですね、力になりますね。改めて言の葉の力を思いました。
    また、【itak】へぜひお越し下さい!お待ちしております。

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