2014年6月19日木曜日

『あまい!!!』より金子 敦を読む ~久才 透子~



 口開けしままの埴輪や鳥雲に       金子敦


私は、埴輪を見ると不安になる。
奥の見えない空洞って、それだけで苦手なのだが、 埴輪の目と口の空洞は、過去に繋がっているような、不思議な不安を感じるのだ。

鳥雲に、という季語には、古巣へ帰るようなイメージがある。 渡り鳥が、雲間に消えた時の寂しいような気持ち。
作者は何処こへ帰りたいのだろうか。


 陽炎の中に吾が影置いて来し              金子敦


実体はここにいて喋ったりしているけれど、自分を何処かに置いてきてしまったような時間
って、誰でもあるのではないか。


俯瞰している自分。この、幽体離脱感。とらえることのできない陽炎。そこに、自分の影が見えるような気がする…のではなく、自分自身で、影を置いてくる。


実体のないものに影を託す。
私は、なぜか逆に、強く生きていこうという気持ちを感じてしまうのである。深読みかもしれないけれど。


金子さんの句は、よく拝見しています。 普段はもっと、砂糖菓子を感じるsweetの甘さ。
優しい句が多く、読むとホッとします。
今回は、キラキラした砂糖菓子の甘さを、あまり感じませんでした。どちらかというと、ほんの少しの苦味や強さを含んでいるようです。

あまい、という言葉には、何種類か意味があります。 味があまい。考えがあまい。コースがあまい。甘い関係。など。
「あまい!」という題に、これらの句。なにか、深い意味があるような気がしました。



※『あまい!!!』より山田 耕司を読む ~青山 酔鳴~はこちら

☆久才透子(きゅうさい・とうこ 俳句集団【itak】幹事 北舟)




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