この生傷荒星として輝かす
掲句は「結婚指輪」の表題で発表された20句の最後の句。自分の場合、連作の末尾には特に思い入れのある句、あるいはそのときの心境を最も強く反映した句を持ってくることが多い。作者の場合はどうかわからない。しかし、生傷を荒星(=凍てついた冬の空に鋭く輝く星)にするというのだからただ事ではない。その悲壮な決意の前には何がしかの大きな出来事があったのだろう。
中北海道現代俳句賞の受賞理由は「一つの物語のような読後感」だった。同感である。全編を通じ て結婚生活を送る男女のなまめかしさ、それと同時に、やりきれなさ、虚ろさがにじむ。家族という名の他者との生活は、距離が近すぎるだけに傷を負いやすい。しかし、それさえも乗り越えていこうとするひたむきな強さが心地よい。
☆安藤由起(あんどう・ゆき 俳句集団【itak】幹事 群青同人)
0 件のコメント:
コメントを投稿