2014年4月6日(日)午後6時
大きな花束をかかえた瀬戸優理子さんとコーヒーを飲んでいた。優理子さんはよく笑う。コロコロとよく転がる声で笑う。よく転がる声は雪まろげのように周りを巻き込み大きくなっていくものだ・・・。そんな事を思いながら。
この日私たちは第23回中北海道現代俳句大会に参加していた。優理子さんは14回中北海道現代俳句賞を受賞された。
受賞作品は「結婚指環」。このタイトルからある人は「あこがれ」を読むかも知れない。ある人は「新しい門出」を読むかも知れない。またある人は「出逢いから別れ」の物語を編むかも知れない。そして優理子さんの「結婚指環」は予想を裏切らない優理子さんワールドだった。
20句で構成されているこの作品から数句選びましょう。
二句目
芹噛んで透きとおる声賢治読む
芹の清清しさで賢治を読むという。季節のキンとした緊張感ある空気も伝わる。賢治を詠む人は少なくないはずだが、賢治を詠むには色といい香りといい芹はベストチョイスと思う。
五句目
朧夜の背中のファスナーひっかかる
朧夜と背中という艶かしさも優理子さんテイストで、程よい抜け感がある。「え。ひっかかってどうするの!」と思わずにいられない。艶と笑み。ラブコメディのような朧夜。
七句目
夏の浜すとんと脱げる服を着て
すとんと脱げる服の質感とその後のなぞかけも味わえる。優理子さんの句には度々なぞかけの様な句が登場する(多分すとんと脱いだ後は水着だろうけどね!息子君たちを追いかける姿が想像できる)。
この後秋へと移るが、全体を通してとにかく明るい。眩しいほどだ。これから優理子さんの陰も鑑賞してみたいと思うのだった。
とは言え、私もこの俳句賞に応募している訳で。最終選考にすら残らなかった訳で。優理子さんの受賞はちょっと高めのゴム飛びを軽い足さばきですっと駆け出し飛んでいる女の子みたいな印象だ(「ゴム飛び」が通じる事を願っているが)。しかし、この女の子は仲間だ。私にだって飛べるはずだ!と思わせてくれるし、何よりも語り合える仲間であることが嬉しい。
同時にこの日の俳句大会の第三席である札幌市長賞は深川市の高校生、荒井愛永さんだったことも特筆すべきだろう。娘の様な年齢の荒井愛永さん。友である瀬戸優理子さん。このお二人の受賞。そして90歳代で元気に参加され「この若い作者が誇らしい、それを選んだ私たちが誇らしい」と述べた大先輩俳人。この言葉には胸が熱くなった。あらゆる世代が俳句でつながっているという事を実感できた一日だった。
☆高畠 葉子(たかばたけ・ようこ 俳句集団【itak】幹事 弦同人)
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