「Hey! 大洗サンビーチ」
空を知る空を知る空を知る いま
千代に八千代に春の代に 君の公魚舟よ
冬の雷さくらホテルで脱いでくれ
夕焼ける三六食堂のしょうゆラーメン
海が鳴る三六食堂のみそラーメンに
寒月や海から橋を削り出す
圏外の二文字か俺は船の夜
伴侶とは巨き船なり寒暁の
冬鷗船はあなたの父でなく
冬の虹ひとり蒸発モエレ山
雪煙に光の一句書き付けよ
冬の月六角晶に来て眠れ
祝おうや氷柱に生まれ軒を知る
判決を待っております中の雪
寒鴉 金子みすゞの片頬、窓ガラス
ギターは裸足の男や雪が降る
ゆきふるやゆきふりつむや人形寺
人形の髪伸びている氷点下
ストーブよ人は扉と如是我聞
メープル茶今となってはヲルゴール
骨壺の重み抱き締め、雪をふむ
俺の貌 ホワイトアウトす骨が鳴る
どこでもないどこでもないさ屋根のゆき
女たち五右衛門風呂をよろしく
鷲の爪の如き髪留め買ってやる
雪の夜誰のエコーか口ずさむ
湯豆腐よ憲法なんぞ歌ってやるぜ
除雪機の上にも雪のふり積もる
寝酒でも五十嵐という男たち
吹雪から彩を織りなす女の手
師を憎み骨を憎まず尿する
冬の灯で不可触民の話聞く
熊送りあばよと言って男も髪を結う
アイヌ語とアイヌ犬と形見のギター
人よりも悲しき指もて氷柱折る
この猫にきみの名前をラフマニノフと
草原につづく本棚を護る冬
死の床に届けられたり雪だるま
肩の雪払ってもらふや人の手に
次の曲は二月の匂ひがします
苫小牧テント工業よ宿業の
冬の海乗船名簿に架空の名
渡り漁夫小指じゃみったくないべと言う
船揺れる月から月へと雪しまく
圏外の船圏外の朝をゆく
下船する手紙の封を開けるように
マフラーがきみのあしたを翔けてゆく
ほそ道はホテルセブンシーズのフロントへ
松籟に雪だるまや大洗サンビーチ
常澄という駅あり寒九かな
アイロンは母のかたちの角度して
左利き父に直されいまを行く
雪は匂ふよ 青よりも 白よりも
晴眼者 海鼠をそっと握りしめ
除雪車を追い越す赤毛のアンに逢いに
いなむら一志さんの霊前に捧ぐ(「二月の匂い」は、稲村一志さんの代表曲)
「Hey! 大洗サンビーチ」50句+5句 2014年1月16日寄稿
☆渡辺とうふ(わたなべ・とうふ 新世紀俳人 東京都青梅市)
※作者の指定により横書きにて掲載しました(事務局)。
とうふさん、お疲れ様でした!
返信削除とうふさんが来てくれてとてもうれしかったです。
力作ありがとうございます。
言いたいことがある、それがなければならないのです。
とうふさんにはそれがあります。大事なことです。
特に共鳴した句を挙げますね。
○寒月や海から橋を削り出す
○冬鷗船はあなたの父でなく
○雪煙に光の一句書き付けよ
○鷲の爪の如き髪留め買ってやる
○船揺れる月から月へと雪しまく
○圏外の船圏外の朝をゆく
○アイロンは母のかたちの角度して
○晴眼者 海鼠をそっと握りしめ
五十嵐秀彦
秀彦さん☆
返信削除まだまだ、北海道にくらいついていきますからね!☆
渡辺とうふ