2013年10月1日火曜日

行ってみました「札幌マッハ」ルポ ~栗山麻衣~

 
行ってみました「札幌マッハ」ルポ
 
栗山麻衣
 
(銀化・北舟)
 
公開句会・東京マッハvol.8 「札幌マッハ 北北東に越境せよ」
 
2013.09.16
 
 



 観客参加型の公開句会&トークライブ「札幌マッハ」。いやあ行ってきました。開かれたのは9月16日、台風上陸で東京からの飛行機は全滅という凄まじい天気でしたが、200人ほどが集った琴似駅裏文化施設「コンカリーニョ」はものすごい熱気。その様子、拙い筆ではございますが、ご報告させていただきマス。
そもそもこのイベント、文芸評論家の千野帽子さんが呼びかけ、東京マッハと銘打って2011年に始まっています。五七五や季語、句会ってこんなに楽しいんだよーと広く知らしめるのが目的。固定メンバーは千野さん、小説家長嶋有さん、ゲーム作家(ぷよぷよ生みの親米光一成さん俳壇のプリンス堀本裕樹さんで、そこに毎回ゲストが加わります。今回は寝ても覚めても」で野間文芸新人賞受賞作家柴崎友香さんでした。
 このメンバー各自6句出し、観客選句で参加します。30記された選句用紙が配られ、そこから特選1、並選6、逆選1を選んで投票します。端正なものもあれば、こう来たかと驚くような作品も。選ぶのはハッキリ言って、なかなか難しいです。
 いよいよ句会。進め方自体はワレワレが日ごろ親しんでる句会と大き変わりません。前半は壇上に上がったメンバー人の句会トークったり泣いたり(?)しながら見守り、後半はそこに観客投票の結果発表や客席からの発言が加わります。
 人気句、注目句幾つか紹介します。

 野分後の少し古びて新都庁

 最高得点句。えーっと。新都庁。道民には馴染みねーよーと思いましたが、前回最高得点長嶋さんが出したお題が東京農水産物」だったんですって長嶋さんいわく「北海道の人は北海道が好き過ぎる。もっと広い世界に目を向けるべきだと思うので、あえてこういうお題にしました」とのこと。なるほど。
 特選にした柴崎さんは「台風一過さと、新都庁、よく見ると古びているというコントラストがいい」。同じく特選の米光さんも「漫画『AKIRAの世界観を思い出した。かっこいい」と講評。「新都庁という名前なのに古いというところに発見があるという評価のほか、台風にさらされたことで、台風一回分都庁が古くなったとも読めてしまう。それは説明的でつまらない」という意見もありました。作者は長嶋さん

 矢印に皆従う秋日和

 これは作者の長嶋さん以外、全員が入れた作品。「美術館を浮かた」(千野)「分かりやすくシンプル。秋晴と合う」(堀本)「矢印という記号が浮かんで、そこが面白かった」(柴崎)「葬儀を浮かべた」(米光)などなど短く凝縮され省略されている詩形だからこそ、それぞれ違う風景が浮かぶのも面白い(千野)という説明に共感。

 坐ろうとしてどけてみる晩夏光

 3番人気。「光を物質のようにとらえたのが良い」「坐るという日常的な動作から、実は大きなこと(世界)を言おうとしている」などと高評価。一方で「景が浮かびにくい」(堀本)という指摘も。米光さんの作品でした。
 ちなみに「坐ろうとして」の「て」や、先ほどの「古びて」の「て」について、トークではゆるふわ切り」と命名。「や・かな・けり」ほど強くなのことと認定されました。よし、使えそうな場面で使ってみよう。

 夜半過ぎ台風消滅決心鈍る

 客席の得点最も高かった句。千野さん「『台風消滅決心鈍る』は八七だけどリズムが良い」(←あらホントだ。ぜひ音読してみてください)長嶋さん「台風去ってではなく、消滅という報道用の言葉を持ってきた面白さがある」など「夜半過ぎの必然性があまり無いのでは」という辛口意見もありました。

 マイクロトマト鼻に入れてふんっ

 堀本さん逆選のみ。披講は朗々として素敵でしたが、しかし、ふんって! 作者米光さん「マイクロトマトの大きさも分かるし、何カ月かした時みんなが覚えているのは案外この句だったりするかもよ」という予言に戦慄。

 殊に愛込めて新蕎麦打つてくれし

 米光さん逆選のみ。「愛込めてとか、言わずに打てよ」。ごもっとも。ですが、実はこれ挨拶句だそうです。作者堀本さんによると「殊に」が「琴似」。会場名「コンカリーニョ」はスペイン語で、愛込めてという意味だからなんだってさ。

 おともだち爽やかにまた会う日まで
 
 これ柴崎さんに対する挨拶句お名前の「とも」「か」を読み込み、彼女の作品名「また会う日まで」入ってます。各地のマッハ全制覇中の書評家豊崎由美さんが客席から見抜き、こうした楽しみ方も分かりやすく提示。千野さんでした

 

 というわけで、選句時間を含め休憩挟みつつの4時間ほどはあっという間。くすみ書房さんの関連書籍販売コーナー(サインもらえます)メンバーの自選句にちなんだメニューのある軽食コーナー(お酒あります)もあり、どっぷり楽しめました。
 ひとり静かにジブンを突き詰めることもできれば、こうして、にぎやかに遊ぶこともできる俳句。江戸の昔から連綿と続く詩形の奥深さに、あらためて驚きと感動を覚えた次第でありマス。満足満足。





☆栗山麻衣(くりやま・まい 銀化同人)


※開会時に白ワインが売り切れていたのは事務局(J)が呑みつくしたためです。千野帽子さまには心よりお詫び申し上げます(笑)。

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栗山麻衣さんは初回から【itak】に来てくださっている俳人です。
今回は先日行われた俳句マッハについての雑感の原稿を快くお受けくださいました。
俳句集団【itak】では、皆さんが参加された面白いイベントについての雑感をいつでもお待ちしております。
【itak】参加者で俳句に限らず、なにか面白いイベントに参加された方は、いつなりとも原稿をお寄せくださいませ。書評・句評・映画評などジャンルに関わらず、お待ち申し上げます。


俳句集団【itak】一同


 

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